読書

スティーブン・キング「アウトサイダー」

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こんばんは、皆様、三頌亭です。この前の「心霊電流」に続きキングの「アウトサイダー」です。「アウトサイダー」というと三頌亭は「お~コリン・ウィルソンか!」と思ってしまうわけですが、果たせるかな、冒頭のエピグラムにはコリン・ウィルソンの一文が引用されております。

さて、一応ミステリー作品風で始まる本作であります。のっけから残虐な殺し方の少年殺害事件で幕を開けます。容疑者と目される人物はリトル・リーグのコーチで街の名士であります。指紋にDNAと物証が固められていく中、担当刑事のラルフ・アンダーソンの前に出てきたのはどうにも動かしようのない「不可能なアリバイ」であります。キングは作中でこのアリバイをポーの名作「ウィリアム・ウィルソン」に例えています。ここからはだんだんホラー作品らしくなっていくのでありますが、冒頭のコリン・ウィルソンはどこで関係があるのでしょうか?。と思っていたら後半に入って、ああなるほど確かにコリン・ウィルソンの「アウトサイダー」ではない別の作品に関係がありましたw。因みに作品の後半では「ミスター・メルセデス」のキャラクター・ホーリー・ギブニーが活躍いたします。


追記:コリン・ウィルソンのどの作品かを言ってもいいのですが・・・、ほぼ完全なネタバレになるのでご勘弁を・・・(^^;)。

スティーヴン・キング「心霊電流(REVIVAL)」

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こんばんは皆様、三頌亭です。久しぶりにキングを読んでみました。スティーヴン・キング「心霊電流」であります。この本には以下の作家への献辞がありまして。最後にラヴクラフト『クトゥルフの呼び声』からの一文が引用されてます(ウィアード・テイルズ系の作家が多いです)。。
Mary Shelley
Bram Stoker
H. P. Lovecraft
Clark Ashton Smith
Donald Wandrei
Fritz Leiber
August Derleth
Shirley Jackson
Robert Bloch
Peter Straub
Arthur Machen
ということで、キングには珍しく、クトゥルー神話系の作品となっております。「フランケンシュタイン」のメアリー・シェリーがどこに効いてくるのかと思えば、最後で「ああなるほど!」ということになってますねw。この作品の前半は主人公ジェイミーの青春グラフィティです。言って悪ければ、「ホテル・ニューハンプシャー」みたいな感じで、ジェイミーの家族がいろいろあっていなくなってしまう、なんとなく寂しいようなお話です。

後半から例の破戒牧師ジェイコブスの怪しげな電気治療のお話がウェイトを占めてきます。どこでクトゥルー神話になるのかと思えば、後半1/4ですね。主人公ジェイミーの昔の恋人に何十年かぶりに再会してこれが引き金になります。ということで、どうなるのかと思いながらよんだ作品でしたが、お約束は守ったうえでのキング流クトゥルー神話でした。因みに破戒牧師ジェイコブスの正体はエピローグで明らかになります。それにしても前半部分の、ノスタルジックな感じはキングの年齢によるものでしょうか?。三頌亭といえば主人公ジェイミーの美人でやさしい自慢のお姉ちゃんがかわいそうだとか、「バックシートで妊娠」というのが傑作だとかろくでもないことばかり気にかかってましたww。


出版社内容紹介
『途方もない悲しみが、若き牧師の心を引き裂いた―6歳の僕の前にあらわれたジェイコブス師。神を呪う説教を執り行ったのち、彼は町から出て行った。しかしその後も僕は、あの牧師と何度も再会することになる。かつては電気仕掛けのキリスト像を無邪気に製作していた牧師は、会うたびごとに名前を変え、「聖なる電気」なるものを操る教祖にのぼりつめる。少年小説であり青春小説である前半を経て、得体の知れぬ恐怖が徐々に滲み出す。忌まわしい予感が少しずつ高まる中、あなたは後戻りのきかない破滅と恐怖への坂道を走りはじめる。』


追記:現在キングの「アウトサイダー」を読んでます。ミステリー系のホラーのようです。

E・H・ヴィシャック「メドゥーサ」

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こんばんは、皆様、三頌亭です。今日はE・H・ヴィシャックの「メドゥーサ」です。「紫の雲」に続きゴランツ社の叢書の未訳作品ですね。実はこれ読みたいと思ったことがあって、適当な版を探してみたのですがペーパーバックとかになってないし、古書のほうは結構な値段だったので放置してました。そのうち限定版で復刻されたのですが、値段が・・・(^^;)。というわけで海外のスポイラー(ネタバレ)サイトを見るとご丁寧に一章づつ要約してくれてる方がいてこれを読んでしまいましたw。なので大筋はわかっていたのですが、やっぱり楽しみにしていた本です。

ところでコピーの「悪夢の『宝島』か、幻覚の『白鯨』か?」っていいですね~。私は幻覚の『白鯨』でしょうか?。とはいうものの、友人のリンゼイ(「アルクトゥールスへの旅」)の影響が強いです。コリン・ウィルソンの「不思議な天才 -デイヴィッド・リンゼイ論」にヴィシャックとウィルソンの会話が少し載せられていてこれも興味のある人には参考になると思いますのでお勧めしておきましょう。


出版社紹介
「孤独な少年は船出する――。怪異が潜む未知なる海へ!。悪夢の『宝島』か、幻覚の『白鯨』か?
コリン・ウィルソンを驚嘆させた謎と寓意に満ちた幻の海洋奇譚が、幻想文学史の深き淵より、ついに姿を現す!。父を亡くした少年ウィリアムは数々の苦難を越え、船主ハクスタブルと共に、その息子を捜す航海へ。 秘密を抱えた船主。そして目指す海域には、何が潜むのか?」

E・H・ヴィシャック E. H. Visiak
本名エドワード・ハロルド・フィジック。1878年、ロンドンに生まれる。電信会社に勤務しつつ詩作を続け、第一次大戦では良心的兵役拒否者として従軍せず、在野で教鞭を執る。詩集やミルトンやコンラッドについての評論のほか、友人デヴィッド・リンゼイの幻想小説『アークトゥルスへの旅』に触発され、本書『メデューサ』など、怪奇幻想の要素の濃い三篇の長篇小説を遺している。1972年歿。

ジョーン・リンジー「ピクニック・アット・ハンギングロック」

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こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は昔見た映画の原作小説です。映画ファンの人ってすごいですね~、こんな映画覚えてるんですから・・。と思っていたら今はカルト映画の仲間入りでディレクターズ・カット版まででているそうです。あと、当時はわからなかったのですがオーストラリアでは人気のあった映画らしく、いろんな賞を受賞しています。驚きですね。絵は結構いいんですけどね。一緒に見に行った友人は「ヒマと金かえせ!!」(爆)だったように記憶しています。

原作小説は「神隠し」のお話です。今回通読して思うことはオーストラリアン・ゴシック小説とでも言ったらいいのでしょうか?。少し暗い運命譚であります。それにしても超自然的な結末をあっさり削除してしまった編集者の腕は偶然かもしれませんが大したものだと思います(因みに映画では結末はありませんし、何も解明されません)。日本の作家でいえば恩田陸さんあたりがひょっとしたら好きかもしれませんねw。


出版社紹介
『山崎まどか氏推薦――「ピクニックの最中に消えてしまう少女たち。彼女たちの喪失をきっかけに、美しいものの全てが崩壊していく」
楽しいはずのピクニック。だが四人の少女と教師ひとりが消えてしまったのだ。その事件を契機にすべての歯車が狂いはじめる。カルト的人気を博した同名の映画原作、本邦初訳!」

M・P・シール「紫の雲 (ナイトランド叢書)」

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こんばんは、皆様、三頌亭です。最近出たものの中から紹介いたします。今まで何度かブログで取り上げてきましたが、M・P・シールの「紫の雲」の翻訳がやっと出ました。これはこれで感無量の三頌亭ですw。この本は「紫の雲」によって人類は死に絶え、地球最後の一人となった男の物語といえばいいでしょうか?。シール描くところのこの物語前半の「死の世界」の圧倒的描写は圧巻の一言に尽きます。もともとこの「紫の雲」をシールは「最後の奇跡」「海の王」に続く最後のエピソードとして考えていたため、このようなストーリーになったのではないかと三頌亭は考えています。つまりここがハイライトではないかと・・・w。ラヴクラフトじゃないですが後半の「アダムとイブ」風の結末は少し物語の密度を希薄化させているのではないでしょうか?。このあたりは意見の分かれるところでしょうね。ともあれ、残りのシール作品の翻訳を待ちましょう。因みに英文テキストはすべてネットで読むことが出来ますので、ご奇特な人はいかがでしょうか?

ところでM・P・シールやデイヴィッド・リンゼイの作品はロンドン・ゴランツ社の下記の叢書によって日本に知られるようになりました。もともとは「Connoisseur’s Library of Strange Fiction」(奇想の文学通・叢書?)といったもので始められていたようです。現在ではチャールズ・ウィリアムズやジェイムズ・ホッグなども邦訳がありますので、隔世の感があります。一言で言ってメインストリームの文学とエンターテイメントの境界に属するユニークな作品集成というところなのですが、シールとリンゼイは凄かったですねえ。



出版データ・参考
Rare Works of Imaginative Fiction (1963-1964, with reprints to 1971)
Victor Gollancz Ltd. (London, UK)

1. The Purple Cloud, by M.P. Shiel. Published 13 June 1963 at 18s.
2. A Voyage to Arcturus, by David Lindsay. Published 13 June 1963 at 18s.
3. Medusa, by E.H. Visiak. Published 13 June 1963 at 18s.
4. Wylder’s Hand, by J.S. Lefanu. Published 24 October 1963, presumably at 21s.
5. The Greater Trumps, by Charles Williams. Claimed as not published by
6. The Lord of the Sea, by M.P. Shiel. Published 24 October 1963, at 21s.
7. The Haunted Woman, by David Lindsay. Published 16 April 1964 at 21s.
8. The Isle of Lies, by M. P. Shiel. Published 16 April 1964 at 21s.
9. The Ghost Ship & Other Stories, by Richard Middleton. Published 16 April 1964 at 21s.

Connoisseur’s Library of Strange Fiction (1946-1947)
Victor Gollancz Ltd. (London, UK)
1. A Voyage to Arcturus, by David Lindsay. Published August 1946 at 8s 6d,
2. The Haunted Woman, by David Lindsay. Published in January 1947 at 7s 6d.
3. Medusa, by E.H. Visiak. Published January 1947 at 7s 6d.
4. The Confessions of a Justified Sinner, by James Hogg. Not published. Cresset Press published
an edition in September 1947 which may have discouraged Gollancz from publishing his edition.
5. The Place of the Lion, by Charles Williams. Published in February 1947 at 7s 6d.
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