三頌亭アンフェール

コリン・ウィルソン「殺人百科」

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「アウトサイダー」で一世を風靡した感のあるコリン・ウィルソンも最近では読まれてないのかもしれません。旧角川文庫にはいっていた「殺人の哲学」を読んだのはもうずいぶんと昔の話ですが、大変インパクトのある著作でイギリスで出版されたときはセンセーショナルなものだったそうです。「殺人の実存主義的考察」とでもいえばその内容にぴったりくるものがありましょう。それよりなにより、歴史的に並べられたソニー・ビーンやジャック・ザ・リッパーの詳細な記述には大変驚かされました。

これらの著述をなす上で著名な殺人者の概略を一堂に会した「殺人者名鑑」のようなものがあれば大変便利であっただろうということで、資料を世界的に網羅した「殺人百科」が彼とピットマン夫人によって編集されました。世界的に網羅するというのは当時として最初の企画であり、今日、類書を枚挙するのはいとまがなくなってしまいました。J.H.H. ゴートのより充実した犯罪学書のコレクションを元に記述をを充実させた J.H.H. ゴート&ロビン オーデルの「殺人紳士録」はその決定版といっても良いでしょう。特にこの「殺人紳士録」は盛り込まれた写真図版に特徴があり珍しいものを収録していてよりいっそう殺伐としたものになっています。ことさら人間の暗部を眺めて何になるのかという気がしないでもないのですが、これら「負の天才達」の一辺の記録として労作であろうよく思うのであります。

追記:スコットランドの食人鬼ソニー・ビーンに想を得た作品としてジャック・ケッチャム『オフシーズン』があります。最近、映画化されてるようですね。

ピエール・プチ「モリニエ、地獄の一生涯」

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現在、出版されている唯一のモリニエの評伝です。モリニエの実像とすればなかなか興味深いものがありました。ブルトンとの関係が詳しく語られていて、ブルトンのおっかなびっくりぶりが面白いです。意外なことにモリニエは女性に良くもてたというのがびっくりした所でした。それにしても壮絶な人生ですね~。偶々自分の所持している版画が自殺の前日に刷り師とサインしたものである、とか「アネル」読むものだと思っていた女性の名が「ハネル」だったりとか個人的に興味を引くところはたくさんあった評伝でした。決して一般向きではないのですが、モリニエに興味のある方は一読されると面白いと思います。

ペレ、アラゴン、マン・レイ「1929」

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たまにはこちらのフォルダも更新しましょう。といってもそろそろネタが尽きつつありますが・・(笑)。ネット上では日本語での紹介は全く無いようなので取り上げます。パンジャマン・ペレとルイ・アラゴン合作のエロティック詩集「1929」です。四季それぞれの詩がひとつづつにマン・レイの写真(フォトグラビュール)が1枚づつついています。この詩集は限定215部で地下出版されました。シュールレアリスム関連の本としては非常に稀少です。現在は写真のように復刻版が出ていてアマゾンでも買うことが出来ます。

この本の出版経緯はこんな感じです。アラゴンが普通のエロティックな詩を作って、マン・レイにイラストを考えてもらって出版しようとしていました。それを聞いたマン・レイが持ってきたのは当時愛人だったキキと自分の写真でした。それを載せて出版したのがこの詩集です。マン・レイや彼のモデルだった「モンパルナスのキキ」については下記を参照してください。
マン・レイ「アングルのヴァイオリン」
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/picture/f_040403.htm
アリス・プラン(モンパルナスのキキ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3

問題は実はマンレイの写真の方なのです。クリスティーズの解説によれば「悪名高きシュールレアリスム本」といわれているらしいです。私は単に有名人のエロ写真だと思いますが・・(笑)。キキとマン・レイがモデルを務めたということで話題性はありますが・・。アンフォールにはふさわしい話題かとは思います(笑)。

追記:さすがにアップしずらい画像なので下記にリンクを書いておきます。嫌な方はご覧にならないようにお願いいたします。
http://fotolios.blogspot.com/2007/08/man-ray-1929.html

クロード・アレクサンドル「闇の階梯(仮題)」

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三頌亭アンフォール久方ぶりの更新です。オペラ座のバレエダンサー・ピエトラガラを撮った女性カメラマン・クロード・アレクサンドルの出世作・「闇の階梯」(ドノエル社:1988)を紹介いたしましょう。「ピエトラガラ写真集」については下記をどうぞ。
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/32471654.html
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/32877233.html

ピエール・ブールジャド(Pierre Bourgeade)が紹介した写真家は大変特異な方ばかりでモリニエ、イオネスコ、マッケローニとどれも通常のアートの感覚からはかなりシフトした現代的な美意識に支えられたものばかりでした。そのなかで最も若い写真家がクロード・アレクサンドルでした。「闇の階梯」はブールジャドが文章を書き、アレクサンドルの写真に添えてある合作の写真集です。精神性の高い優れた内容だと私は思うのですが、世間的にはSM写真集のひとつという認識なのでしょう(^^;)。

日本でもアレクサンドルの写真をまとめた写真集がトレヴィルから出版されましたが、今は絶版です(古書ではまだよくあります)。この記事を見て興味が湧いた方はこの2冊をお薦めしておきます(いないって(笑))。「闇の階梯」はぜひブールジャドの文章を翻訳して出版して欲しい所ですが、日本では無理なプレートが2,3あって出版する所がないのでしょう。ショッキング度合いではトレヴィルの写真集のほうが強烈ですが・・。

追記:表紙だけをお示ししておきます。中の写真についてはまたトップから流れた時に追加しましょう。

ピエール・モリニエ「アネルのために」

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このところ、適当な本ばかりでろくでもない話題でお茶を濁しておりますのでたまにはこのようなものもアップしておきましょう(笑)。ピエール・モリニエは生涯に20点ほどの版画作品を残しましたが、そのひとつです。版面にモリニエと摺り師のサインがあります。入手したのはもう大分前になります。あまりその気がなかったのですが、持っておいて正解だったもののひとつです。これ以来、サイン入りのカラーの版画は見ることがありませんでした。モリニエのサインが特徴的です。「アネル」とはモリニエの姪の名前ですね。
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