本&読書関連

橘外男「青白き裸女群像」

「実はあなたこういうものが好きなんでしょ?(笑)。正直に答えなさい!」というわけではないのですが・・・。大変面白かったのです(笑)。

読書欲の減退した時には無類の治療薬かもしれません(んなことないって(爆))。今回は橘外男の巻です。かつては桃源社のゾッキ本にずいぶんとお世話になりました。どれも大変面白く安く手に入れることが出来たからです。橘外男については大変詳しいサイトもありまして、私のいいかげんな記憶に頼らなくともそちらを参照いただければなどと思ってます。桃源社からは「青白き裸女群像」と「伝奇耽美館」の二冊が出版されておりました。

一番初めに読んだのは「青白き裸女群像」ですがまあびっくりいたしました(笑)。よくもまあこんな荒唐無稽な物語を組み立てたものだと・・。ロマネスクに対する意志の強さに天晴れというほかなかったです。文体面ではやや紋切り型であまり褒められたものではないのですが、妙にリズムがあって読ませます。これは「講談調」だと気づくのに少し時間がかかりました。物語自体は救いようのないお話が多いのですが、登場人物の名前にラディゲだとかアポリネールとかフランス本国でもちょっとお目にかかれないような名前をつけていて人をくった感じがなんともユーモラスです。内容については写真の腰巻をご覧ください。とりわけ表題作「青白き裸女群像」と「陰獣トリステサ」が凄いです。また「青白き裸女群像」には収録されてはおりませんが、血も凍る傑作怪談「蒲団」も一読の価値があります。

橘外男は戦前に「ナリン殿下への回想」で直木賞を受賞した大衆作家なのですが、その方面の著作は教養文庫版の傑作選を参照していただければと思います。波乱に富んだ人生を送った作家ですが晩年は穏やかで子煩悩な人であったといわれております。桃源社版「青白き裸女群像」は橘外男の面白さを知るうえではずせない刊本ではありますが、差別表現等の問題で今後再版されるかどうかは怪しいです(古書での入手は容易)。現在、中央書院版傑作選(山下武責任編集:写真参照)と中公文庫の数冊によりこの作家の凡その像を知ることは容易です。

最後に、どなたもご指摘はなさっておりませんが、橘外男はグラフィックなイメージを想起させるのがたいへん巧みな作家であることを追記しておきましょう。「われと思わん方はその書を手に取りたまえ!」

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板谷菊男「天狗童子」

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は板谷菊男氏の「天狗童子」を紹介いたします。板谷菊男氏唯一の短篇集で全く無名の人です。この著作を知ったのは翻訳家の南條竹則氏の著作からです。板谷菊男は陶芸家として有名な板谷波山の長男で開成学園の古文の先生でした。その教え子には南條竹則氏や故吉村昭氏がいます。この短篇集は自身が親しんだ古今著聞集にインスパイアされて出来た幻想短篇集です。雑誌「幽」の創刊号にこの短篇集から「竹生島」が再録されましたが、他はほとんどとりあげられたことがありません。独特の雰囲気をたたえた著聞集風の怪異譚が15編ほど収録されています。おそらく今このようなものを書けといわれても書くことのできる方はいないでしょう。残念なことに70年代に出版されたこの本はもうほとんど眼にしない本になってしまっています。古書価が高いわけではないので余計始末が悪いですね(笑)。心ある出版社に再版をお願いしたいほんのひとつです。

古今著聞集に惹かれる理由を板谷菊男氏は次の様に説明しています。三頌亭も最近になってなんとなくよくわかることが多くなりました。

「わたくしは、生来古典が好きであった。また古典に結びついているものは、何でも好きであった。それが老年になるとともに、源氏物語とか枕草子とかの本流的な作品よりも、今昔物語以下の傍系的な説話物の方が、好ましくなってきた。その理由はよくわからないが、たとえば、精巧華麗な工芸品を博物館の飾り棚で見るより、下手物の皿を身辺に置く方が気軽で楽しいといったようなことになるのかもしれない。
さらに、年齢が加わってきたら、結局説話物は、古今著聞集に絞られてしまった。その理由は、今昔物語や宇治拾遺物語の著者は、文才に恵まれているから、書かれたものには文学的意図がひらめき、精緻な描写が盛り上がっている。読者は、ただそれに引かれる。
著聞集の著者は、それとは異なり、古今にわたる多数の資料を集積し分類して、単純素朴な報道的記述で、あの膨大な一部にまとめ上げた。つまり主観を最小限度にとどめて、専ら第三者の批判と利用にまかせている。その淡々とした態度が好ましい。わたくしたちは、朝の食膳で新聞記事に眼を通すように、馬芸とか相撲とか博奕とか怪異とかの興味の多い項目の変化を追って、気分を慰めることができるのである。」

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大坪砂男「私刑」(自註:岩谷選書)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は少し前から文庫版全集の刊行が始まっている大坪砂男の初単行本をお持ちいたしました。多分全集には収録されると思いますが、岩谷選書版「私刑」の後書(自註)の全文を掲載いたします。すでに読んだ人には興味のあるところでしょう。だいぶ古いうえに紙質が悪いのでよ見づらいとは思いますが、ご勘弁を(笑)。tubo01
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