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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。このあいだ宇能鴻一郎の短篇集を紹介いたしましたので、彼の出世作を紹介しておきましょう。大映で映画化されましたので特撮ファンの方には馴染みのある作品かもしれません。昭和36年に発表された「鯨神(くじらがみ)」です。芥川賞受賞作品でした。当時、彼が東大の大学院在学中に書いた作品です。70年代に入って官能小説家として有名になるまで純文学系の作品を沢山発表しているのですが、今調度スポットになってしまって新刊では読むことができないです。「鯨神」は中公文庫で復刻されましたが今はもう品切れでしょう。

さてこの作品ですが、和製「モビィデック」とでも言ったらいいのでしょうか?。魔神のような鯨と人間の死闘を迫力ある文体で描いた作品です。昔読んだのですが、個人的には好きな作品です。「モビィデック」よりはより鮮やかな描写に溢れていて、その部分がこの作品の独自性といえましょうか?。埋もれさすには惜しい作品だと思います。

追記:さすがにこの頃の芥川賞の審査員というのは錚々たるメンバーですね。井伏鱒二と佐藤春夫はこの作品を押してなかったようです。