2017年08月

小林照幸「完本・毒蛇」

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こんばんは、皆様、三頌亭です。今回は少し前に読んだノンフィクション作品を紹介いたします。以前から少し興味のあった蛇毒の抗毒素(血清)の開発史です。ハブ毒の研究家として有名な澤井芳男を描くノンフィクション作品が小林輝幸「毒蛇」です。
この作品はまだ沖縄がアメリカから返還されていなかったころの奄美大島のハブ毒の被害を描くことから始まります。当時、奄美大島においてはハブ毒は大変被害が多く、かなり深刻な問題だったようです。10年間で30人にひとりがハブの被害に合う計算になるというのですから驚きですね。

この作品の前半はハブ毒の被害の実態と抗毒素作製のためのハブ毒の採取について記述されます。ここが作品全体のキモかもしれません。ハブ取り名人のエピソードやハブ毒の被害の恐ろしさが極めて具体的かつ臨場感を持って描かれていて興味深いです。これに比べれば肝心の抗毒素の作製の苦心談は至極あっさりとしていまして、少し物足りない感じがしますが、本当にそうだったのなら仕方がないでしょうか?。個人的には本当に「抗体をウマからとるんだ!! すげぇ!!」というのが驚きで、興味津々の記述部分でございました(笑)。

少し難を言えば出版から25年以上がたってしまい、現在、ハブ毒に関して知られていることからはだいぶ隔たりができてしまったということでしょうか?。現在ではハブ毒の本体は細かく分析されて4種のプロテアーゼと数種のホスホリパーゼであることが分かっており、それらの立体構造やアミノ酸配列まで特定されております。(個人的にはホスホリパーゼA2も用量によっては毒性をあらわすというのが、当たり前なのですが意外でした(笑))


出版社紹介
「昭和30年代、奄美大島や沖縄ではハブによる咬症被害が続出していた。現地を訪れ被害の深刻さを目撃した医師・沢井芳男は、半生を血清改良や予防ワクチンの開発に捧げる。やがて沢井は台湾、そして世界へ、その活動の場を広げていく。被害撲滅の情熱に燃えた男の軌跡を追った医学史発掘ノンフィクション。」

清瀬一郎「秘録 東京裁判」& 瀧川政次郎「東京裁判をさばく」

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こんばんは、皆様、三頌亭です。これもまた昔読んだノンフィクションです。「東京裁判」の弁護を担当した人たちによる「東京裁判書かでもの記」といえば当を得ているのかもしれません。この二つの本は1980年前後にちょうど再版されて、三頌亭はそのころ読みました。
これらの作品ではじめて知ったことがありました。日本は条件降伏であったことや、この裁判は事後法であってそれ自他が近代法の大きな原則に反するものであること等々であります。
わかりやすさの点では瀧川政次郎「東京裁判をさばく」のほうがよくて、三頌亭も先に読んだのはこちらでした。現在読まれているかどうかは知らないのですが、非常に臨場感のある、説得力に富んだ記述のノンフィクションであったと記憶しています。ネットで少し書評を調べてみますと案外有名な人のものがありました。
http://yoshiko-sakurai.jp/2005/06/16/391

もう一方の清瀬一郎「秘録 東京裁判」は記述は理路整然として簡潔ですばらしいノンフィクション作品です。清瀬一郎は弁護団の中心的人物で東條英機の弁護を担当したひとであります。読んだ当時は英米法に精通した連合国側の弁護人のプロ意識というか日本人弁護団を上回る訴追側への厳しい追及の様に唖然としたものでした。こういったいかにも深刻な内容であるにもかかわらず清瀬一郎の筆はどこかとぼけた味わいがあって、人柄をしのばせます(笑)。また彼の弁護中のシーンは記録フィルムで見ることができます。70年代に入ってアメリカ国防総省の50万フィートにも及ぶ長大なフィルムが公開になり、それを編集した小林正樹監督の「東京裁判」が公開になったのもその頃でした。

当事者による記録は案外と少ないトピックなのでいつも扱っているジャンルではないのですが一応お勧めしておきます。ちなみに再版当時は閣僚が靖国神社を参拝しても隣国(2か国w)が問題しなかったころで、政治的カードとして使われていなかったころであることを申し添えておきます。

クレイグ・トーマス「ファイアフォックス」

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こんばんは、皆様、三頌亭です。昔のサスペンス小説を一つ紹介いたします。映画のほうが結構当たったのでご存知の方も多いと思います。クレイグ・トーマス「ファイアフォックス」です。出版のほうがたしか40年位前になりますので、ミグ31といっても写真のような戦闘機ではありません(笑)。この作品のストーリーはシンプルで最高速度マッハ6、ステルス機能と思考誘導装置の付いたミサイルシステムを持ったソ連の新型戦闘機を盗み出しに行くというものです。

作品発表の前年に起こった「ベレンコ中尉亡命事件」に想を得て一気に書かれた作品で冒険小説の傑作だと思います。当時、自衛隊のレーダー網をかいくぐってMiG-25・フォックスバットが函館空港に強行着陸するという、亡命事件がありました。
http://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009030142_00000
ソ連の最新鋭戦闘機が案外古い時代遅れな技術で作られていることに驚いたものでした。

クリント・イーストウッド監督の映画に比べて原作では研究所への潜入過程が綿密に描かれ、ラストの脱出劇に向けてよりサスペンスを盛り上げてあります。ただし、映画での名セリフ「ロシア語で考えろ!」は原作にはございません(笑)。この作品は現在、早川ノベルズ文庫の収められており、その続編「ファイアフォックス・ダウン」も同文庫に収められています。
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