2017年07月

『現代東欧幻想小説』(白水社)

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こんばんは、皆様、三頌亭です。暑いですね~。今日は少しマイナーなアンソロジーを紹介いたします。2つとも絶版で申し訳ないです。幻想文学という言葉が言われだしたのはフランスで1970年代の初めぐらいだったようですね。ツヴェタン トドロフの「幻想文学論序説」やルイ・ヴァックスの「幻想の美学」が翻訳されたのもこのころだったと記憶しています。構造主義だとかポストモダンだとか小難しいことはさておきw、この2冊のアンソロジーはリアルでない描写を多く含む作品を集めたものです。

東欧圏の作品のアンソロジーというものが少ないので、この種のものは写真に示す2冊ぐらいしかありません。収録作にについてはリンクを張っておきましたので、興味の方はご覧ください。知らない作家がほとんどなのでありますが特に印象が深かったものを2作品取り上げます。ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ「帆船バンベリ号上の出来事」は大変強烈な読後感を残します。ゴンブローヴィッチは東欧圏の作家では比較的有名なものですから、ほかの作品も少しは読んだことがありました。「帆船バンベリ号上の出来事」は無意味な擬人化の氾濫でもう訳が分かりませんww。カフカなんかに似たところもあって面白いです。

もう一人の作家はステファン・グラビンスキで「シャモタ氏の恋人(発見された日記より)」が「東欧怪談集」に収録されています。アッシュ・ツリー社から英訳が出たときにいくつか読みましたが、集中の作家のなかでは英米の怪奇小説にもっとも近い作品を書く人です。近頃、国書刊行会から「ポーランドのラヴクラフト」という売り文句で2冊の短編集が邦訳されています(「動きの悪魔」、「狂気の巡礼」)。ご興味の方はお読みになってみてもよいでしょう。


アンソロジー収録作品
『現代東欧幻想小説』
http://ameqlist.com/japan_ya/yoshigam.htm#hakua01
『東欧怪談集』
http://ameqlist.com/japan_na/numano.htm

松崎實「伴天連見聞録殺生関白行状記」

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こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は急に思い出したので読んでみたという本です(笑)。松崎實「伴天連見聞録殺生関白行状記」です。写真でご覧いただきます通りなかなか刺激的な装丁の本なので買ってみようかとも思いましたが、国立国会図書館デジタルコレクションのなかにあるので読むだけならということと、もう蔵書スペースがないため涙を呑んで中止に・・・。

さてこの本の内容ですが、「殺生関白」といわれた豊臣秀次の一代記であります。当時、日本へやってきたポルトガルのカトリック司祭・ルイス・フロイスが書き手という設定になったフィクションですね。松崎實という方は「考註切支丹鮮血遺書」や「日本廿六聖人殉教記」などの著作のあるキリシタン文献の研究家らしく、「殺生関白行状記」の文章にもその成果がいかんなく発揮されているように思います。

豊臣秀次に関しては同じ題材を扱った谷崎潤一郎の「聞書抄」(中公文庫)もありますので併せて読まれるとより一層興味の湧くことがあるかもしれません。  
http://www.aozora.gr.jp/cards/001383/files/56945_58757.html
現在の歴史研究では豊臣秀次は必ずしも後世伝えられるような暴君ではなかったのかもしれないという意見になっております。ともあれ松崎實「伴天連見聞録殺生関白行状記」はこれらの史実を扱ったフィクションのひとつであり、そのユニークな点は書き手にフロイスを選んで2重のエキゾチズムを添えようとするところではなかろうかと三頌亭は考えます。
ご興味の方は下記にてお読みになってみてください。


国立国会図書館デジタルコレクション - 伴天連見聞録殺生関白行状記 松崎実
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1192117

皆川博子「辺境図書館」

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こんばんは、皆様、三頌亭です。皆川博子さんの「辺境図書館」。いままでいろんなところに掲載された書評をまとめたものです。作家の好みがよく表れていて面白いものになっています。三頌亭は「ああ。あの時はこの本が出て話題になったんだった」とか「あの時この本を読んだなあ」とかしばし思い出にふけるのでありました(^^;)。

ご参考までに目次をアップしておきます。様々な作風の作家が話題になってますが、3人だけ三頌亭が選んでみました。シェーアバルト、シュオブそれに郡虎彦です。パウル・シェーアバルト 『小遊星物語』とマルセル・シュオブ 『黄金仮面の王』については以前記事にしたことあるので少し置きます。異能の白樺派・郡虎彦については名前を出したことはありましたが、今まで記事にしたことはありませんでしたね。わたしも皆川博子さん同様、1980年ごろ出た飯塚書房の復刻版でこの作家のあ作品を読みました。由良君美『みみずく偏書記』(ちくま文庫)に「白樺の玩具箱を蹴かえした小男-郡虎彦讃美」という文章があってこれに刺激されて読んだと記憶しています。「松山一家」や「鉄輪」といった当時の日本としては珍しい世紀末美学たっぷりの作品群に大変感心したものでした。ご興味の節には上記の由良君美氏のエッセイを読まれるとよろしいと思います。蛇足ですが、『郡虎彦全集』創元社、1936年(復刻版・飯塚書房、1981年)の目次をお示ししておきます。

『郡虎彦全集』
第1巻 邦文編 1936.6.25
 
小説・小品・対話
ペスト‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3
獏の日記‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥11
小品二つ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥19
頭蓋骨‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥19
三人の車‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥21
松山一家‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥26
お玉坊‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥45
幻想曲‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥54
海草の影に‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥63
戯曲
腐敗すべからざる狂人‥‥‥‥‥‥‥‥‥75
清姫‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥84
父と母‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥97
タマルの死‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 115
夜潮のどよみ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 127
道成寺‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 142
一人の死‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 166
プロローグ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 202
鉄輪‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 207
王争曲‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 217

緞帳芝居‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 289
緞帳芝居‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 289
蜘蛛の糸‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 292
小曲‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 292
幸福‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 295
婦徳‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 298
窮り無くよき者に‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 301
窮り無くよき者に‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 303
さゞめ雪‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 306
懐胎‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 308
懐胎‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 308
躍れ、女よ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 313
春‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 317
恋慕‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 317
讃歌‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 320
昇天祭‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 325
成熟‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 328
論説・紹介
ヱレクトラ梗概‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 335
歌劇としてのヱレクトラ‥‥‥‥‥‥‥ 353
ロダン‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 360
製作について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 370
舞台の教理‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 379
近代の劇場に於ける悪傾向‥‥‥‥‥‥ 385
サラ・ベルナールの自叙伝より‥‥‥‥ 396
『夏の夜の夢』を観て‥‥‥‥‥‥‥‥ 421
チエホフの戯曲‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 429
ルナンの耶蘇伝より‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 437
近代の戯曲に‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 439
伯林通信‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 446
戯曲論議‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 463
戯曲隻語‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 491
『義朝記』倫敦上場について‥‥‥‥‥ 494
芸術覚書‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 504
芸術覚書続稿(遺稿)‥‥‥‥‥‥‥‥ 559
芸術覚書補足・断片(遺稿)‥‥‥‥‥ 592
翻訳戯曲
『デイアダア』(イエーツ)‥‥‥‥‥ 607
『白鳥姫』(ストリンドベルヒ)‥‥‥ 644
 


第2巻 英文編 1936.6.25
 
FOREWORD‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1
PLAYS
KANAWA‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥11
SAUL AND DAVID‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥27
ABSALOM ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 101
THE SHAM HERO ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 165
PROLOGUE TO AN UNWRITTEN DRAMA‥‥‥ 191
THE TOILS OF YOSHITOMO‥‥‥‥‥‥‥ 199
POEMS
Whispering Snow ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 261
Palm Sunday ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 262
Ripening‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 264
To the Infinitely Good One‥‥‥‥‥ 266
Song of Praise‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 268
Womanly Virtue‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 271
Love‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 273
Fruition‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 275
JAPANESE DRAMA(Essay) ‥‥‥‥ 277
WARRIORS OF ANCIENT JAPAN(Translation)
How the Fierce Kumagae Turned Monk‥ 301
The Flight of Tsunemasa ‥‥‥‥‥‥ 304
The Flight of Tadanori‥‥‥‥‥‥‥ 307
 


別冊 1936.6.25
 
略伝‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1
追憶‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1
郡虎彦(武者小路実篤)‥‥‥‥‥‥‥ 1
郡虎彦君のこと(小山内薫)‥‥‥‥‥ 6
思ひ出(長与善郎)‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 9
郡虎彦君の追憶(井野英一)‥‥‥‥‥13
追憶(三浦直介)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥19
萱野君の思ひ出(市川左団次)‥‥‥‥24
郡君を憶ふ(田中雨村)‥‥‥‥‥‥‥26
倫敦時代の郡虎彦君(水上滝太郎)‥‥29
郡虎彦の事(園池公致)‥‥‥‥‥‥‥44
郡さんのこと(西脇順三郎)‥‥‥‥‥49
郡君の再認識(有島生馬)‥‥‥‥‥‥52
郡虎彦の英詩文(百華塢主人)‥‥‥‥55
郡と私(柳宗悦)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥61
郡虎彦君(長田秀雄)‥‥‥‥‥‥‥‥65
追憶(児島喜久雄)‥‥‥‥‥‥‥‥‥68
郡虎彦君を憶ふ(和辻哲郎)‥‥‥‥‥72
郡虎彦君(木下杢太郎)‥‥‥‥‥‥‥75
鴻ノ巣と麦とろ(里見 )‥‥‥‥‥‥79
懐かしき友郡(木下正雄)‥‥‥‥‥‥83
亡友録より(小杉未醒)‥‥‥‥‥‥ 105
郡虎彦君の追憶(大沢章)‥‥‥‥‥ 107
故郡虎彦君(藤田嗣治)‥‥‥‥‥‥ 127
郡のおもひで(志賀直哉)‥‥‥‥‥ 130
*年譜‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1
*書後‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥17
感謝の言葉(徳田敬二郎)‥‥‥‥‥ 1
編輯余記‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2
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