こんばんは皆様、三頌亭です。今日はブログを始めたころ一度紹介したことのある作家・椿實の本です。立風書房で出た「椿實全作品」以降の未収録作品と遺構を収録した未完作品集です。以前こんな記事を書きました。
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/31711988.html
中井英夫に曰く
『ところでメーゾン・ベルビウの素晴しさはどうだ。きらきらした色硝子のかけらをいちめんにまきちらし、その中でくねくねのたうつ肉体は満身傷だらけだが、その代りどんなかすり傷にも金砂子の様な光彩がきらめいてゐる。読んでゐるこちらの膚にべたべた花粉がついてくる様な、じよろでヰスキーをふりまいてゐる様な香ひ高さ。しなしな柔い草の中にねころんで三角のプリズムをぎゆつと目に押しつけたらこんな風に世界が輝き出すだらう。青春は何処へ行つたと、その叫びさへ出ないでゐる僕たちのうしろから、もうこんな風になまめかしく白粉をぬりたて陽気な道化服をきこんで、日の当るまつぴるまの街にろまんの旗をふる若者たち。己らはかうして生きぬいて来たと、何の飾り気もなくズバリと云つてのける大胆さ。今更道端に落ちてゐる吸殻さへ、いちいちふみ消さずにはゐられない育ちの僕らが、この上もなくみじめに見えてくるのだ。』
私どもの世代には澁澤龍彦のアンソロジー「暗黒のメルヘン」に収録された「人魚紀聞」のおかげで残ることができた・・と言ったら言い過ぎでしょうか?。ともあれ三頌亭が同世代の作家には感じることのできなかった「眼の眩むような文才」を見せてくれた数少ない作家でありました。ご興味のおりはいかがでしょうか?
ところで復刻版ですが樺島勝一のデザイン・装丁になる2作品を紹介いたしましょう。かつて、講談社少年倶楽部文庫というのがありましたが、それの愛蔵版です。芸術新潮の記事で見たオリジナル版の装丁が気に入っていたので以前買ったものです。
出版社紹介
「『椿實全作品』(82年)以降、本人が構想していた拾遺集に未発表の遺稿を増補した中短篇作品集。日本幻想文学の水脈の異貌。焼け跡を生きる、博物学的精神とエロス。中井英夫・吉行淳之介の盟友であり、稲垣足穂・三島由紀夫・澁澤龍彦らの激賞を受けた幻の天才が、『椿實全作品』以降編んだ未収録の秀作群に、未発表の遺稿他を増補した中短篇作品集。没15年記念出版、初版1000部限定ナンバー入。
(立風書房『椿実全作品』紹介:椿實は大正14年の神田生まれ。昭和21年、吉行淳之介らと「葦」を創刊し、翌22年「新思潮」に「メーゾン・ベルビウ地帯」を発表し、柴田錬三郎、三島由紀夫の激賞を受ける。 その後、新進作家として活躍したが、そのペンは新しすぎ、あまりに鋭く、かつ脆かった。結局、職業作家ではなく、教師としての人生を歩んだようだ)」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/31711988.html
中井英夫に曰く
『ところでメーゾン・ベルビウの素晴しさはどうだ。きらきらした色硝子のかけらをいちめんにまきちらし、その中でくねくねのたうつ肉体は満身傷だらけだが、その代りどんなかすり傷にも金砂子の様な光彩がきらめいてゐる。読んでゐるこちらの膚にべたべた花粉がついてくる様な、じよろでヰスキーをふりまいてゐる様な香ひ高さ。しなしな柔い草の中にねころんで三角のプリズムをぎゆつと目に押しつけたらこんな風に世界が輝き出すだらう。青春は何処へ行つたと、その叫びさへ出ないでゐる僕たちのうしろから、もうこんな風になまめかしく白粉をぬりたて陽気な道化服をきこんで、日の当るまつぴるまの街にろまんの旗をふる若者たち。己らはかうして生きぬいて来たと、何の飾り気もなくズバリと云つてのける大胆さ。今更道端に落ちてゐる吸殻さへ、いちいちふみ消さずにはゐられない育ちの僕らが、この上もなくみじめに見えてくるのだ。』
私どもの世代には澁澤龍彦のアンソロジー「暗黒のメルヘン」に収録された「人魚紀聞」のおかげで残ることができた・・と言ったら言い過ぎでしょうか?。ともあれ三頌亭が同世代の作家には感じることのできなかった「眼の眩むような文才」を見せてくれた数少ない作家でありました。ご興味のおりはいかがでしょうか?
ところで復刻版ですが樺島勝一のデザイン・装丁になる2作品を紹介いたしましょう。かつて、講談社少年倶楽部文庫というのがありましたが、それの愛蔵版です。芸術新潮の記事で見たオリジナル版の装丁が気に入っていたので以前買ったものです。
出版社紹介
「『椿實全作品』(82年)以降、本人が構想していた拾遺集に未発表の遺稿を増補した中短篇作品集。日本幻想文学の水脈の異貌。焼け跡を生きる、博物学的精神とエロス。中井英夫・吉行淳之介の盟友であり、稲垣足穂・三島由紀夫・澁澤龍彦らの激賞を受けた幻の天才が、『椿實全作品』以降編んだ未収録の秀作群に、未発表の遺稿他を増補した中短篇作品集。没15年記念出版、初版1000部限定ナンバー入。
(立風書房『椿実全作品』紹介:椿實は大正14年の神田生まれ。昭和21年、吉行淳之介らと「葦」を創刊し、翌22年「新思潮」に「メーゾン・ベルビウ地帯」を発表し、柴田錬三郎、三島由紀夫の激賞を受ける。 その後、新進作家として活躍したが、そのペンは新しすぎ、あまりに鋭く、かつ脆かった。結局、職業作家ではなく、教師としての人生を歩んだようだ)」