2016年12月

蒼社廉三「ミステリ珍本全集11 殺人交響曲」

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こんばんは,皆様,三頌亭です。いつも楽しみにしているミステリ珍本全集です。今回は以前紹介した『戦艦金剛』の蒼社廉三の巻です。この人の作品として、今まで読んだものは『戦艦金剛』だけであります。この回の復刻には長編2作品「殺人交響曲」と「紅の殺意」が収められています。特に「紅の殺意」のほうはかなり意外な犯人のフーダニットで古い作品とはいえ十分楽しめる内容になっています。さらに雑誌・宝石に掲載された中篇版の「戦艦金剛」が収められています。これは長編版とはまた違ってスリムになった「戦艦金剛」が楽しめます。描写の迫力などの点では長編版に一歩譲るところがあり、三頌亭は長編版を押します。現在の作家ではこのあたりの描写は時代性もあってもう不可能な描写なので三頌亭は非常に珍重しております。ご興味の方は少し値段が張りますがいかがでしょうか?

出版社紹介:
戦記ミステリからサスペンス横溢の現代ものまで「宝石賞」受賞の実力派作家が堅牢な筆致で描く懐かしいミステリの世界!。代表作『戦艦金剛』の原型中編のほか、SF短篇も収録!。楽団員のひき逃げ事件に端を発して次々と起こる死の連鎖! 楽譜の暗号に隠された意外な真相とは?

【目次】
PART1 殺人交響曲
 第一楽章 Adagio Leggiero 
  ゆるやかに、そして軽く、悲劇の幕はひらく……
 第二楽章 Vivace Brillante 
  活発に、そして華やかに、それぞれの人々が舞う……
 第三楽章 Allegro Con Fuoco
  速く、そして火のように、或る者は殺し、或る者は死す……
 間奏曲としての葬送曲
 第四楽章 Presto Appassionato
  非常に速く、そして熱情的に破局は訪れる…… 

PART2 紅の殺意
 第一章 紅い部屋 
 第二章 容疑者たち 
 第三章 追 跡
 第四章 迷 路 
 第五章 白いオーバーと口紅

PART3 単行本未収録作品集
 戦艦金剛
 地球が冷える
 大氷河時代
 地球よ停まれ
 宇宙人の失敗 
編者解題 日下三蔵

F・W・クロフツ「英仏海峡の謎」

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こんばんは,皆様,三頌亭です。今回も過去読んだものからクロフツ作品中のお薦めです。33作品あるクロフツの長編作品でどれがベスト5だろうと考えた場合、かなりの方がこの作品を選ぶのではないかと三頌亭は考えます。ドーヴァー海峡の真ん中で射殺死体を載せた漂流中のボートが発見されるという、クロフツ作品の中ではこれ以上ない派手(笑)なオープニングとなる作品です。英仏海峡を股にかけたフレンチ警部の活躍が見もので、このあたりの地理にも詳しくなれるというオマケつきですね(笑)。

写真は創元推理文庫の「英仏海峡の謎」と秋田書店のジュブナイル版「ドーバー海峡の怪奇」です。案外の優れ物でモノクロームがカラーに変わったような分りやすさがあります。

出版社紹介:
『ドーヴァー海峡のただ中を漂流するヨットの中には、この日、倒産した証券会社の社長と副社長の死体がころがっていた。いっぽう、会社からは百五十万ポンドの現金が紛失し、社の重役は悉く行方不明。犯人は証拠の示すところによれば、ヨットから大海へ忽然と姿を消したままだった。さすがのフレンチ警部の顔にも焦燥の色が浮かぶが……。』

T.S. ストリブリング「カリブ諸島の手がかり」&クライド・B. クレイスン「チベットから来た男」

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こんばんは,皆様,三頌亭です。今回も過去読んだものからです。エキゾチック系・2作品ですね。

まずはストリブリング「カリブ諸島の手がかり」です。「クイーンの定員」にも紹介され、かなり前から知られてはいたのですが、短編集としてのまとまった紹介はこれが初めてでしょう。翻訳は倉阪さん・・・微妙に頑張ってます(笑)。飄々としたポジオリ教授が三頌亭は好きであります。集中の有名作は「ベナレスへの道」ですが個人的には「クリケット」なんかが好きです。ホワイトの怪奇小説とはまた異なるカリブ諸島を舞台にした短編群です。

さて次に、クレイスン「チベットから来た男」ですが、チベット蘊蓄系・密室ものでございます。まあ無理の少ない密室ものですが、前置きの割には真相のおどろきがすくないというか、まあそんなところです(笑)。まずまずといいましょうか?どうでもよろしいですがこの時期にすでに河口慧海の『チベット旅行記』が英訳されているのに驚きを禁じ得ません。ちなみにチベットが秘境だった理由には入国しづらい事情もあったと思われます。

以上2点ご興味の向きにはどうぞお読みください。

久生十蘭「新西遊記」
http://www.aozora.gr.jp/cards/001224/files/46087_45574.html
河口慧海「チベット旅行記」
http://www.aozora.gr.jp/cards/001404/card49966.html
(面白いので推薦しておきます。)
追記
http://www.sankei.com/photo/story/news/160926/sty1609260019-n1.html

四方田犬彦「月島物語」&G・K・チェスタトン「詩人と狂人たち」他

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こんばんは,皆様,三頌亭です。今日も過去読んだものの中からいくつか紹介いたします。まず、四方田犬彦「月島物語」ですが、本人も郷土史ともエッセイともつかない面妖なものと評している通り、荷風の「日和下駄」もどきであります(笑)。それでもやはりお得意の映画に絡んだ部分は面白く、「酔いどれ天使」のモデルを探していくところなどは面目躍如といったところでしょう。あまり陽の当らないエッセイ作品ですが興味のある方はいかがでしょうか?

次はG・K・チェスタトン「詩人と狂人たち」。新訳が出て少し読みやすくなったというお話。三頌亭とこの作品との出会いは翻訳の南條竹則氏と全く同じで国書刊行会の幻想文学大系に収録されたものを読んだことでした。ミステリというには少し当たらない作品かもしれませんが、逆説に満ちたチェスタトンらしい作品です。チェスタトンの作品にはこのほかにも「ポンド氏の逆説」や「新ナポレオン奇譚」など非常にユニークな作品がありますので、ブラウン神父だけではなく他の作品もお読みになってみてはいかがでしょうか?

最後はクロフツ「列車の死」です。クロフツ作品中の異色作。鉄っちゃん御用達のみならすイギリスお得意のスパイ物です。戦後すぐに書かれ、ドイツのスパイ一味を暴いて逮捕するという異例の活躍をするフレンチ警部です。スパイを特定していく手段や過程は正しく本格ミステリでクロフツらしさがあります。以前はハヤカワ文庫に入っていたのですが現在はebookのみで読むことができるようです。

以上3冊ご興味がありましたらいかがでしょうか?

ヘレン・ユースティス「地平線の男」

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こんばんは,皆様,三頌亭です。今日は以前記事を書いた本についての追加情報です。たまたま、最寄りの古書店にいきますと置いてあったので買ってきて読んでみました。
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/64178856.html
現在邦訳には2種がございまして、別冊宝石119号に掲載されたものと創元推理文庫に収められたものがあります。入手値段の関係でPB版を入手して読んだのですが、邦訳の方も確認(何のw)の意味で読んでみました。久里瀬いと氏の翻訳ですが、これはなかなか快調で悪くないのではないのでしょうか?。原作の発表が1946年ですので別冊宝石119号の翻訳は原作発表後17年の翻訳となります。現在、新訳も検討されていると聞きますが、その時代の雰囲気などは再現は難しいので同時代のすぐれた翻訳として復刻して欲しいと思ってしまいました。
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