2016年10月

C・デイリー・キング「空のオベリスト」&「タラント氏の事件簿」

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こんばんは,皆様,三頌亭です。今日は過去読んだ残りのデイリー・キングから2冊「空のオベリスト」と「タラント氏の事件簿」です。まずはオベリスト3部作の最後「空のオベリスト」から行ってみましょう。

題からも分るとおり飛行機の中での不可能状況&ストーリーとなっております。以前、オベリスト3部作の中では一番出来栄えがいいと申しましたが、正確に言うと怪作(笑)でございます。物語が始まって約半分くらいのところで思いっきりなネタバレが1発入っております。ちょっと「おいおい、ソレはないだろう(^^;)」的な代物です。トリック自体は理路整然非常にシンプルなものです。そのほか、ラストのエピローグが裏話満載で、「ヘナヘナ」(^^;)になってしまいます。まあいろいろあるのですが妙なユーモアがつっぱしっていて全体的には面白い作品でした。

次は短編集「タラント氏の事件簿」です。収録内容は次の八篇です。ちなみにデイリー・キングの作品は戦前の新青年などにかなり翻訳が掲載されておりまして、本邦初訳のものは2篇だけとなっております。
「古写本の呪い」
「現われる幽霊」
「釘と鎮魂曲」
「第四の拷問」
「首無しの恐怖」
「消えた竪琴」
「三つ眼が通る」
「最後の取引」
本格推理の短編集とすればかなりトンデモなものが多くて変わってます。三頌亭のお気に入りは「第四の拷問」(旧訳:『憂愁』四号艇)と「首無しの恐怖」です。「第四の拷問」は初めは本格推理、ラストはホラーというかなりのバカ作(^^;)で面白いです。「首無しの恐怖」はこのプロットでキングあたりに書かせれば面白いものが書けるんじゃないかと思わせるサイコホラー作品。舞台もアメリカらしくてデイリー・キングがアメリカ出身の作家だとよくわかる作品です。以上、2点興味がありましたらいかがでしょうか?

追記:「鉄路のオベリスト」を探しておりましたら、パット・マガ―の写真が載っておりましたのでアップしておきます。案外珍しいのじゃないかと思います。

ピエール ボアロー&トーマ ナルスジャック「大密室―幻の探偵小説コレクション」

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こんにちは,皆様,三頌亭です。「鉄路のオベリスト」の記事のために久しぶりに雑誌EQを見ていたら、これも意外に面白かったというのを思い出して書いております。ボアロー&ナルスジャックのコンビがまだソロでかつやくしていたころの作品です。それぞれ雑誌EQに掲載されましたが、後に晶文社から単行本としてまとまって出版されました。単行本には
『三つの消失』 ピエール・ボアロー
『死者は旅行中』 トーマ・ナルスジャック
の2編が収録されています。短めの長編3つといったところでした。ボアロー『三つの消失』割と綺麗に決まった密室というよりは不可能犯罪もの。結論があんまりハッピーじゃないのがお国柄でしょうか?。第1と第2の消失がちょっと心理的盲点でしょうか?(笑)。
トーマ・ナルスジャック『死者は旅行中』は単行本の解説にも書いてあるので言ってしまいますがクリスティ『オリエント急行の殺人』の変種であります。ただなかなか素敵なアイディアが盛り込まれて面白い作品になっています。結末がいかにもフランス・ミステリーらしくて笑ってしまいました。

以上、いかにもマニアな刊行本だったと思います。因みに単行本は絶版ですが入手は廉価で容易かと思います。

C・デイリー・キング「鉄路のオベリスト」

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こんばんは,皆様,三頌亭です。たまには古書ブログらしい話題をひとつ。C・デイリー・キング「鉄路のオベリスト」です。その昔、雑誌EQ(1981年1,3,5,7月)に4回にわたって鮎川哲也の翻訳が掲載されたことがありました。その後、カッパブックスに収められましたが、雑誌掲載時には完訳であったものを冗長なところを削って抄訳の形になってしまいました。記事にするので再度読み直してみましたが、昔読んだ通り鮎川訳はなかなか快調で淀みがありません。以前から埋もれるにはおしいと思ってきたのですが、今年に入って論創社から復刊されることが決まったようです。

さてこの「鉄路のオベリスト」ですが、解説等は写真の戸川安宣さんのものを読んでいただくとしましょう。狂乱の20年代、アール・デコの時代を彷彿とさせる鉄道の描写が記憶に残っております。ミステリーとしては少し無理なところがないではないのですが、まずまずの出来だとは思います。しかしオベリストもの3部作として一番の出来栄えはやはり「空のオベリスト」ではないかと思います。因みにオベリスト3部作は前の作品の軽いネタばれがあるので気になる方は「海のオベリスト」からお読みください。

写真の本は当時の掲載誌です。駅前の古書店で1冊100円くらいだつたでしょうか?。何もすることがないのでこうして下宿でよく読んだこと思い出します。お金がなくてあんまり高い本は買えなかったころでしたが、読書が至福だった時の思い出の本です。

追記:以前紹介したフリーマン「オシリスの眼」がちくま文庫に入るそうです。どんどん復刊されて話題がなくなってゆきますね~(笑)。

フィリップ・マクドナルド「生ける死者に眠りを」他

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こんばんは,皆様,三頌亭です。今日は珍しく新刊です。フィリップ・マクドナルド「生ける死者に眠りを」なんですが、原題を「R.I.P」といいます。ペンギンブックスのリストを見ていたとき中Rどういう意味なのだろうと思ってましたが、ラテン語で「Requiescat in Pace」で「安らかに眠れ」といった意味なのだそうです。というわけで期待して読んでみたのですが、これは・・・はずれでしょうか(^^;)。なんか登場人物のキャラが頭にいらなくて何がどうというのがまったくよくわからないです。よく読むと趣向を凝らしてあるのかもしれませんが、とりあえず読んだということになってしまいました。法月さんの力の入った解説のほうがおもしろかったという体たらく・・・。関係ないですが映画「肉弾鬼中隊」の原作を翻訳してほしいです。ペンギンブックスでまあまあの値段のが出ていたのですが、買いそびれて読んでおりません。

下の写真はペンギン版のアントニー・ギルバート「The Black Stage」です。あんまり邦訳の数はないのでこれからの作家なのかもしれません。何冊か集めてみようと思ってます。ちなみにkindleでよければ1冊500円でわんさか出ています。英文でかまわないという方はこちらでどうぞ(笑)。

「大伴昌司〈未刊行〉作品集 大伴昌司エッセンシャル」&綾辻行人「Another」

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こんばんは,皆様,三頌亭です。今日は大伴昌司の作品集と大分前に読んだ綾辻行人さんの「Another」の感想文です。大伴昌司といってもご存じない方が多いと思いますので下記をご覧ください。一般には「怪獣図解図鑑」 等の生みの親として記憶される人です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E6%98%8C%E5%8F%B8
実はこの作品集の編集をやっている紀田順一郎氏や荒俣宏氏なんかのエッセイで記憶していた人なのですが、どんな人か知りたくもあって読んでみました。とういうのは当時ニッチなジャンルだった海外の怪奇幻想作品を紀田順一郎氏といっしょに紹介し、また「恐怖文学セミナー」や同人誌「ホラー」などをつくった人の中にこの人の名前があったからです。後の少年マガジン等の掲載された「怪獣図解」などと、その人物のイメージが合わなかったためというのも大きいかもしれません。準に読んでいくとわかるのですが編集者としての才能が素晴らしいのかもしれないなと勝手に思うことで納得でしました。この方面興味のある方は一読するのもよろしいでしょう。

次は周回遅れの感想文、綾辻行人さんの「Another」です。もうだいぶたったので言ってもいいだろうと思いますが、三頌亭は「叙述トリック」が苦手であります。小林秀雄ではないのですが、あれはいつも「詐欺」だと思っております(笑)。なのでもちろんそればっかりではないのもわかるのですが、『十角館の殺人』以来どうも足が遠のきがちでこの方の作品で読んだのは右手で十分な数なのであります。さて、この作品「Another」ですが、ホラー風味が7割で本格3割といったところです。お話としては非常に楽しく読めました。架空の小都市でおこる不思議なお話が面白いです。本格部分では「叙述トリック」だといってもそう簡単にわかるようには書かれていませんのでご安心を(笑)。後でできたアニメ版はこの点苦労してあります。(余談ですが装丁がお気に入りなのでこのように保存してあります。)
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