2016年07月

小島政二郎「小説・永井荷風」(ちくま文庫)

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こんばんは,皆様,三頌亭です。今日は荷風の評伝を1冊ご紹介いたします。三頌亭の書棚には岩波の荷風全集が3セットもあります。一時期熱心に読んだ作家で、三頌亭が全集を隅から隅まで読んだ数少ない作家です。よく読んだ作家なのですがお友達になりたくない作家の最右翼というのがこの作家なのであります(笑)。

この 小島政二郎「小説・永井荷風」はそのあたりのことをよく説明してくれる作品です。さまざまなエピソードを取り交ぜて荷風の全体像をよく伝えてくれますね。まあ読んでると荷風というのはとんでもない漁色家(死語w)でたんなる偏屈のエロ爺のように思えてくるから不思議です。偏奇館でエロ写真の撮影に一生懸命になってみたり、疎開先で覗きに励んでみたりとまあ面白い逸話満載ですw。(どうでもいいのですが、暗めのところを撮影するためにわざわざ当時としては大変高価だったローライ・コードを購入したり、現像技術まで習得したというのはいつも感心します)

ただの凡百な偏屈エロ爺さんと荷風を峻別するものは何でありましょうか?。それは類まれなる文才だと考えるのであります。よく思うのですが、いくら作家のプライベートな周辺状況を調べても作家の文才の説明はつかないのではないかと?。まあといったことをよく考えさせてくれる著作ではあります。また本作は荷風の評伝であるとともに作者本人の文学的自叙伝となっていることが大変優れていると三頌亭は思います。ご興味の方はご一読ください。ちくま文庫に収録されてます。

ところで芥川は荷風をほとんど認めてなかったというのを初めて知りました。そういえば彼の作品に荷風作品への言及はほとんどありませんね。

出版社内容紹介:
『「十のうち九までは礼讃の誠を連ねた中に、ホンの一つ、荷風文学の病弊と見た点を指摘したこと」で終生の恨みを招いた。芸術家が人情に興味を持ってはおしまいだ、「新橋夜話」「すみだ川」は生命の旋律が響いてこない。鴎外、芥川、佐藤春夫との付き合い、ゴシップ、エピソードなど文壇裏話を交えて、人間永井荷風を活写する。幻と言われた傑作作品の文庫化。』

エドガー・ソールタス「太陽王女」他

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こんばんは,皆様,三頌亭です。今日はエドガー・ソールタスの紹介です。現在、ライムハウスから3冊の翻訳が出版されていてこれらが数少ない日本語として読めるソールタスの作品です。日本での紹介は雑誌「るさんちまん」に掲載された榊清一郎氏のものが三頌亭の知る唯一の紹介文です。全文を画像でアップしましたので、ご興味の方はお読みください(力みかえったところがなかなかいいですw)。

さて英文に目を移しますとスキャンデータをはじめ、この紹介文が書かれた時とは比較にならない情報が得られます。何十年もたっておりますので仕方がありませんね(笑)。プロジェクト・グーテンベルグやkindleでも大体の作品がフリーで読むことができます。ヘンリー・ミラーの「わが読書」で取り上げられて有名な歴史書「Imperial Purple(帝王紫)」と「The Imperial Orgy(皇帝の乱宴)」のテキストをお示しておきます。

エドガー・ソールタス
https://en.wikipedia.org/wiki/Edgar_Saltus
エドガー・ソールタス作品(「インクール氏の悲運」他14作品)
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/1417
「The Imperial Orgy(皇帝の乱宴)」スキャンデータ
https://archive.org/details/imperialorgyana00saltgoog

宮崎惇「21世紀失楽園 (ミステリ珍本全集10)」

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こんばんは,皆様,三頌亭です。今日は楽しみにしているミステリ珍本全集の第10巻・宮崎惇作品集です。ところでこのシリーズを出している戎光祥出版が小さい出版社なのか近くの高松市内の書店には置いてくれなくなってしまいました。まああんまり買われてるのを見たことがないです。いたしかたなくアマゾンで買ってます。置いてくれなくなってからだいぶたつなとは思っておりましたが、調べてみるとすでに12巻まで出版されている模様。因みに次は蒼社廉三の作品集です。

ところでこの作品集ですが、すべて短篇です。以前紹介した「時空の剣鬼」も連作短編でした。案外長編が苦手だったのかもしれません。集中でやはり面白いのは伝奇あるいは時代SF作品です。玉藻前ばりの「金毛九尾秘譚」は大変面白い作品でした。また、表題作の「21世紀失楽園」も星新一あたりが書きそうなロボットを題材にした作品でこれもユニークな短篇です。興味がおありの方は珍しい出版なので一読されるのもよろしいかもしれません。

出版社紹介
『昭和30~50年代にSF、ミステリ、時代小説の各分野で活躍した著者の貴重な私家版作品集『21世紀失楽園』『金毛九尾秘譚』を完全収録! 未刊行短篇やSF絵物語を一挙に収めました。ハイクォリティな宮崎作品をまとめた本書は、すべてのミステリファンにお勧め。
【目次】
PART1 21世紀失楽園
γ博士のロボット、愛、かわいそうな火星人、火星人になった男、3と2、理科の実験、お出迎え、バイオリンはお好き、声、動物園、顔、忍者、21世紀失楽園、どれい
PART2 金毛九尾秘譚
幻の八百八町、金毛九尾秘譚、役行者、忍者猿異聞、SF時代小説について
PART3 単行本未収録作品集
チンクルチンクル、珪素生物、もしもしどなた、お化けの行列、人を食う家
緑の霧、望郷、合成人間東京に死す、地球が喪服を着るとき、砂地獄悪魔教
幻花吸血境

巻末資料
「宮崎さん逝く」光瀬龍
「惇に」 今日泊亜蘭
編者解題
月報:加納一朗・ 大橋博之』

グザヴィエ フォルヌレ「失われた時」

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こんばんは,皆様,三頌亭です。昔、友人に『怪奇小説傑作集<フランス編>』のなかでどの作品が一番好きか?と聞いたことがありました。友人は言下にフォルヌレの「草叢のダイヤモンド」と答えたのをいまでもよく記憶しています。たしかに集中の名篇であること間違いないところですが、この短篇を素晴らしいと思うか思わないかで今日紹介する本への興味は異なるでしょう。

当時、フォルヌレの評伝めいたものと言えば澁澤龍彦の「悪魔のいる文学史」に「グザヴィエ フォルヌレ-黒いユーモア」という20頁ほどに良くまとめられたエッセイがある限りでした。ブルトンの黒いユーモア選書を経由した紹介だったのですが、このあたりがグザヴィエ フォルヌレ紹介の嚆矢だったと言ってもいいのでしょう。それから40年近くたってやっとまとまった作品集の翻訳が今回の「失われた時」です。

ところで本音を言いますと、フォルヌレの翻訳はいままでいくつか単発的にアンソロジーに採られておりまして、今回の作品集半分くらいはすでに読んだもので少し残念ではあります。ただ訳者の今日までの情報を総合した解説とフォルヌレの数少ない短編集の翻訳という意味はあるでしょう。ご興味の向きには珍しい出版なので一読をお薦めしておきましょう。

ウィリアム・ホープ・ホジスン「幽霊海賊 (ナイトランド叢書)」他

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こんばんは,皆様,三頌亭です。皆様いかがお過ごしでしょうか?暑いですね~本当に。というわけで涼しめのものを3冊用意いたしました(笑)

ホジスン「幽霊海賊」
「ボーダーランド3部作」の最後に当たる作品。海洋奇譚としては最もオーソドックスな作品です。船具関連の用語が満載なので後で数頁の解説が付いている安心設計となっております(笑)。思えばホジスンも70年代に「カーナッキ」と「異次元を覗く家」を読んで以来、すべての邦訳に目を通してきましたが、現在も作品集が出版されているのは大変幸運なことだと最近になって思うようになりました。

安曇潤平 山の霊異記 霧中の幻影」
「赤いヤッケの男」の著者の最新作。雑誌掲載時に読んだものもいくつかあるのですが、買ってしまいました。初作に比べると文章は上手くなって、山々の描写は大変美しいです。著者は本当に山へ行くのが好きなんだということが良くわかる作品集。実話怪談集としては少々食い足りないところがあるかもしれませんが、この方面、本が少ないので貴重な1冊かと思います。

木村盛武「慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件」
以前、ホラー小説のベストランキングを選んだときに吉村昭の「熊嵐」を選んだことがありました。あの作品のタネ本がこちら。執念のノンフィクションというか、唯一関係者にインタビューを試みた貴重な作品です。今年に入ってショッキングなクマの被害があったせいか、「熊嵐」と並べて書店に平積みにしてありました。商魂たくましいというかそちらのほうに少々感心してしまってます(苦笑)。

因みにざっと知りたい人はコチラ
http://www.dailymotion.com/video/x168360_%E4%B8%89%E6%AF%9B%E5%88%A5%E7%BE%86%E4%BA%8B%E4%BB%B6-%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%90%E3%83%9C%E3%83%BC_shortfilms
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