2016年03月

伊藤正一「定本・黒部の山賊-アルプスの怪」

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こんばんは,皆様,三頌亭です。また空いてしまいました。このところお仕事用の本を読むのにかまけておりましてあんまりこれといった内容の本を読んでおりません。なので大したものも照会できないのですが、「山の本」ということでたまたま手にしたものを紹介いたします。

昭和20年代から30年代の黒部渓谷を舞台にした昔語り。まだ黒部ダムもできていない頃のお話です。もちろん小説ではありませんので実在の人物の話題なのですが、まるで小説にあるような個性的な山賊たち(黒部の山岳エキスパートたち)の描写が生き生きとしております。当時のスナップもふんだんに入れてあり、またその写真が意外と素晴らしいです。おそらくブロー二・サイズで撮られた写真と思われます。惜しむらくは印刷が悪いのが残念です。


出版社紹介
北アルプスの最奥部・黒部原流域のフロンティアとして、長く山小屋(三俣山荘、雲ノ平山荘、水晶小屋、湯俣山荘)の経営に携わってきた伊藤正一と、遠山富士弥、遠山林平、鬼窪善一郎、倉繁勝太郎ら「山賊」と称された仲間たちによる、 北アルプス登山黎明期、驚天動地の昔話。また、埋蔵金伝説、山のバケモノ、山岳遭難、山小屋暮らしのあれこれなど、幅の広い「山の話題」が盛り込まれていて、読む者をして、まるで黒部の奥地にいるような気持ちにさせてくれる山岳名著の一書です。

1964年に実業之日本社から初版が刊行されたときは、多くの読者からの好評を得ました。近年は、山小屋でのみ購入できたこの幻の名作が、『定本 黒部の山賊』として、 山と溪谷社から刊行されることになりました。新規原稿も一話加え、底本未掲載の貴重な写真も盛り込んでいます。巻末には、高桑信一氏と高橋庄太郎氏による『黒部の山賊』へのオマージュも掲載。

おもな内容
◎山賊たちとの出合い
山賊の舞台・黒部の源流/
そのころの世相/
山に山賊がいるという/
慎重にすすむ/
自分の小屋に宿料を払う/
山賊対策会議/
山賊たちの正体

◎山賊との奇妙な生活
山賊一味と暮らす/
山賊事件の真相/
山賊たちの熊狩り/
山賊と岩魚/
アルプスのキティ台風

◎埋蔵金に憑かれた男たち―別派の山賊
星勇九郎の大金鉱/
ほんとうにあるのか山中の埋蔵金

◎山のバケモノたち
道しるべになった水晶岳の白骨/
カベッケの不思議な呼び声/
バケモノに呼ばれた人たち/
人を呼ぶ白骨 /
神がくし?/
洞穴の怪/
巧みな狸の擬音/
三本指の足跡/
カッパの正体

◎山の遭難事件と登山者
薬師岳の遭難/
不思議な遭難/
疑われた同行者/
非情な同行者/
四晩つづいた遭難信号/
謎の手紙/
人事不省一週間の山上の病人

◎山小屋生活あれこれ
山ぼけ/
どうどうめぐり/
山小屋の費用/
アルプスへの空輸/
熊と登山者/
熊をならす/
山で育った犬

◎その後の山賊たち
黒四と山賊たち/
その後の山賊たち ほか、旧版未掲載原稿「遭難者のお礼参り」や、
貴重な写真も新たに加えて再編集。

著者より:思いがけない人たちとの出会い
考えられないような時代背景
さまざまな思い出は消えることはない。
黒部源流よ、山よ、永遠なれ。

伊藤正一

城平京「虚構推理 鋼人七瀬」

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こんばんは,皆様,三頌亭です。今日はゆきあやさんご紹介の本が面白そうなので買ってきました。城平京小説作品ははじめての三頌亭です。城平京さんというと「スパイラル〜推理の絆〜」と「絶園のテンペスト」の漫画原作者としてのほうが三頌亭にはなじみの深い人です。この作品、元の題を「虚構推理 鋼人七瀬」といいます。ミステリとしては設定そのものが異例でありまして、「ミステリ崩壊寸前」の面白さというかそんなものがこの作品のオリジナリティであります。都市伝説の「鋼人七瀬」が現実に存在する怪異であり、その存在理由をネット上にもとめ、追いつめて退治しようというところが特定のルールに従った「本格推理」ですね。一応ぎりぎりの線でフェアとなるよう用意されているところが作者の苦労で、この作品の「あぶなっかしい面白さ」ではないかと三頌亭は思います。因みにコミカライス作品のカバーをアップしておきます。「そうじゃないだろう!」とツッコミのある方もおられるでしょうが・・・(笑)。

作者あとがきより
「『虚構推理 鋼人七瀬』という作品は私にとって約七年ぶりの小説作品です。そして内容は「ミステリ」の範疇にどうにかおさまるものと考えて書いたのですが、出版後の評や感想に「これはミステリではない」という意見を多々見ることとなりました。「不可解な事件が起こり、それに対して読者に提示した情報をもとに、合理的解決を披露する物語なのだからミステリと言ってもいいではありませんか」と思いつつも、「妖怪や幽霊が当たり前に実在し、まごうことなき事件の真相をすっかり明らかにした後で、四種類の『嘘の解決』をあらかじめ嘘とことわった上で並べる小説はミステリと違う方向性のものかなあ」と反省もしております。

 怪異の実在するミステリは珍しくありませんし、虚構の解決を扱ったミステリ、多重解決ミステリも珍しくはなく、いくつかの特殊設定も既存の妖怪研究に基づくものですし、個人的にはこの作品でミステリとして特段変わったことはしていないと認識しているのですが、いやはや、うまくいかないものです。きっと日頃の行いが悪いせいか、前世での行いが悪かったせいでしょう。もっと功徳を積まねばなりません。そうすれば来世では折り目正しい本格ミステリを書けるようになっていることでしょう。今世では無理そうです。

 というわけでこの作品を胸を張って「ミステリ」と呼ぶのはいささか問題があるようですが、「ミステリと同じものでできた」作品ではあるかと思います。『虚構』がテーマですが、読者に対しては何が嘘で何が真実か早い段階で明示し、虚実のあやふやな所はありません。これはこれでフェアで明朗な内容と思っていたりします。

 またこの作品は一応シリーズ化を視野に作っておりまして、どうやら続編を出してもよい気配になっております。ですので次は「ギロチン三四郎」とか「魔人ピノキオ」とかいうサブタイトルで何か書けないかと考えているのですが、サブタイトルしか考えていないのでまた七年後になるかもしれません。そして懲りずに正統ミステリから外れていそうです。ちなみに「ギロチン三四郎」というサブタイトルは、担当編集者さんに笑いながらダメと言われました。

 では、できればまたの機会に。」
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