2010年11月

四方山話03

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こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は今年、がんばって捜索しました実話怪談本の成果をひとつ紹介いたします。高田寅彦「心に残った幽霊供養」(学研:2006)です。著者は所謂怪談プロパーではございませんので、このルポタージュ1冊きりという方です。いくつかの怪談専門サイトではベスト本として挙げられておりますが、あとが全くないため他のテキストが出ておりません。この本自体も絶版らしいです。

ところで内容ですが、これが題や装丁からは想像がつかないくらい強烈なもので、怪談ベスト本として挙げるのも頷ける内容となっています。作品は僧職にある人達からの聞き書きでルポという形式をとっております。この手の本の中では破格のディテールとリアリティで実話怪談の中の出色と言っていいでしょう。また、エピソードの多くが多人数の体験に基づいているものが多く、まさに「あなたの知らない世界」へ読者をいざなってくれること請け合いです。特に掌中、冒頭の「魂が宿った人形」と「丑の刻参りの女」は驚くべきエピソードで、しかも大変怖いです。

内容は下記の通り13篇、ボーナストラックを1篇(旧車のパンク)を追加してコンビニ本として再版されまた品切れです。従って、完全版はコンビニ本(「実録・お寺の怪談」)となります。
高田寅彦「心に残った幽霊供養」目次
魂が宿った人形
貸金庫から出る白い腕
納骨堂の来訪者
本堂に封印された怨霊
憑依された青年
沢の古民家
大阪、一心寺にて
死を刻む腕時計
遍路装束で這う女
葬儀ビデオ鑑賞
首吊り松の祟り
丑の刻参りの女
霊が棲む寺での対話

追記;写真の「ツンデレ・相対性理論」はおまけ(笑)。コミック本ですが意外にちゃんとした内容です。興味のあり方はどうぞ値段も安いです。

トランブル「サイレント・ランニング」&ニコルズ「イルカの日」

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こんばんは三頌亭シネマ館です。その時代に起こった事件を直接的に描いているわけではないのですが、その時代の社会背景というのを色濃く反映した映画というのがあります。そういった映画を今日は2本紹介いたします。「サイレント・ランニング」は『2001年宇宙の旅』や『アンドロメダ病原体』の特撮を手がけたダグラス・トランブルが監督を務めた映画でした。低予算で作られ、上映期間もアメリカでは短かったため、日本では公開されませんでした。幻のSF映画と言われた時期もありましたが、70年代後半に初めてテレビ放映されました。ただこの後、VTRになるまで自由には見られない時期が続きました。三頌亭も見たのはVTRになってからで80年も後半に入った時期でした。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0

この映画を初めて見たときの感想は「なんちゅうさびしい映画だろう~」と・・・傑作には違いないのですが、これはアメリカでうけなかったのもわかる気がしました。しかし、案外とご覧になった方が少ないようなのでご紹介いたします。ラストで歌われるジョーン・バエズ曲の声が心なしか物悲しいのは作られた年代のせいなのかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=6B2pfSelIKo

次は「イルカの日」です。マイク・ニコルズ監督作品。これも一応SF映画に分類されるのでしょうか?。この映画もラストが物悲しい映画でした。大悲劇っていうじゃないんですねこれが、くすんだ色の悲劇・・とでも言ったらいいのでしょうか?。こういう感じでは欧米では大うけはしないのでしょうが、どういう風に受け取るのかと思っていたら、YOUTUBEのコメント欄に次のように書かれていました。
「This was a great movie...the ending will have most humans in tears.」
また、少しけだるい感じの挿入曲が最高の出来でこちらでご記憶の方も多いでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=bqcoEEQgwGw&feature=related

以上2本、三頌亭お薦めのエコSF映画です。

イルカの日:あらすじ
「海洋動物学者として世界的に著名なジェイク・テリル博士(ジョージ・C・スコット)は、フロリダの沖合い遠くの小島にイルカを研究するための研究所を持っていた。現代科学の粋を集めて建設された施設で、6人の助手たちと共に、1頭のイルカに簡単な英語を教えていたが聡明なテリルは自分の研究が、政治の力によって悪用される危険性を充分知っており、スポンサーである財団にも報告していなかった。だが、政府の調査機関では早くもそのことをかぎつけて、テリルの研究に対する調査を開始していた。テリルが母親代わりになって育てたイルカはファー(アルファー)と名づけられ、彼を「パー(パパ)」と、呼吸孔から出す可愛い声で呼ぶほどに成長していた。いってみれば、ファーはテリルと彼の妻マギー(トリシュ・ヴァン・デベール)の1人息子のような存在だったのだ。テリルはそんなファーに花嫁を与えることにした。この牝イルカはビー(ベータ)と名づけられた。プールで楽しそうに遊び廻る2頭のイルカは幸福そうだった。ファーがビーにイルカの言葉を教わったため、一時テリルとの英語による会話に応じなくなるという問題が起こったが、それが解決すると学習はどんどん進むようになり単語をいうだけだったファーが構文も覚えるようになった。ビーもファーから教わって、人間との会話ができるようにまで成長した。財団がテリルの研究に介入し始めたのは、その頃だった。水上飛行機で島にやってきた財団管理官デマイロ(フリッツ・ウェーバー)は、研究の具体的成果をこれ以上秘密にするなら、援助を打ち切ると通告してきた。やむなくテリルは彼に研究所の中を案内し、そして政府の調査機関員マホニー(ポール・ソルビノ)の訪問を許してしまった・・・」

小野 不由美「ゴースト・ハン」・リライト版他

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こんばんは皆様、三頌亭です。たまには新刊を紹介いたします(笑)。以前話題にしたことがあったと思いますが、小野不由美さんの「悪霊シリーズ」(講談社X文庫ティーンズハート)が復刊いたしまいた。大幅にリライトしたらしく、一応完全版ということで隔月間で全7巻で出るそうです。日本版のゴーストハンターとしては大変良くできていると思います。そのディテールにおいてもかなり正確な知識で以て描写ができているのに感心していました。実を言うと小野不由美さん、いやに梵字に詳しいと思っていたら、京都の某仏教大学の出身だということらしいです。実話怪談系のエピソードもふんだんに盛り込んであってこのジャンルでは出色の出来だと思います。因みにアニメ方がかなりの出来で、本作を読まなくてもいいくらいです。作者にとっては痛し痒しというところではないでしょうか?

次は最近買った本、小池壮彦「怪談 FINAL EDITION」です。以前紹介した「幽霊物件案内1,2」の総集編です。読み逃した方はこちらをどうぞ。適当に内容には異同があるようですが、おおむね旧著と同じ内容です。でもまあなんとなく前の本の方がおもしろかったような印象を受けるのは何のせいなのでしょうか?。しかしどちらも圧巻はあるホテルの旧館のお話でしょう。何度読んでも、これはなかなかコワイです。

ハーク・ハーヴェイ「恐怖の足跡」&セラドール「象牙色のアイドル」

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こんばんは皆様、三頌亭シネマ館です。今日は古いホラー映画を2本お持ちいたしました。どちらもマニアの間ではよく知られておりますが、改めてということで・・。まずは「恐怖の足跡」です。ゾンビで有名なロメロ監督が非常に影響を受けた作品と言われています。最近廉価版のDVDが出てますのでご覧になってみてください。案外これが日本の方には違和感がないホラーです。つまり悪魔が出てこない映画です。この前「シェラ・デ・コブレの幽霊」というのを紹介いたしましたが、たぶんああいったものは欧米の思考にはない角度からのホラー映画なので記憶に残っているのではないかと思っております。因みにキング・オブ・カルトらしいですよ(笑)。

次は「象牙色のアイドル」です。この映画はこういうと身も蓋もないのですが、「サスペリア」と「サイコ」を合わせたような映画です。三頌亭より少し上の年代の方にはアイドル映画でしょう。主演のジョン・モルダー=ブラウンという英国少年がなかなかもてそうなルックスですねえ(笑)。男性の方にはこれまた主演女優のクリスティーン・ガルボが非常な美人であることをお知らせしておきましょう。因みに殺人部分の演出などは大変怖いです。

恐怖の足跡:あらすじ他
「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」「シックス・センス」へ影響を与えたのは、あまりにも有名。カルト・ホラー映画の元祖としてキング・オブ・カルトと称えられる、永遠の傑作。
エンジンを吹かす2台の車。それぞれ男女の若者たちが乗った車は、勢いよくスタートを切って小道を驀走する。かなりのスピードで走りまくる2台の車だったが、メリー(キャンディス・ヒリゴス)らを乗せた車があやまって川へ転落。警察たちの必死の捜査も空しく、車や遺体は発見されなかった。しかししばらくしてからメリーだけが自力で川から生還。応急処置を受け、あの悲惨な事故を忘れるためにメリーは別の町へ移り住むことにする。一人車に乗り込み、新たなる居住地へ向かう途中、彼女は通り過ぎた荒れ果てた遊園地で不気味な男を目にする。男に生気は感じられず、不可思議な視線でメリーを見つめた。奇妙に思いながらもその場を後にしたメリーは新たな居住地でオルガン奏者としての職を得ることもでき、順風満帆な生活を送れるかのように思えた。だがそんな彼女の身に次々と不可解な出来事が起こり始める。次第にあの男の幻影に悩まされ始め、悪夢は徐々にひどくなっていく…。」

象牙色のアイドル:あらすじ他
『ザ・チャイルド』のナルシソ・イパニエス・セラドール監督が、ジョン・モルダー=ブラウンを初主演に迎えて贈るラブサスペンス。厳格な女院長が仕切る寄宿学校にやってきた転校生の前で連続殺人事件が発生。彼女が屋根裏部屋で見たものとは? 人里離れた寄宿舎で繰り広げられる殺人劇と、屋根裏部屋の恐ろしい秘密を描いた恐怖映画。出演はジョン・モルダー=ブラウン、リリー・パルマー、クリスティーナ・ガルボほか。

ヘレン・ユースティス「水平線の男」

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こんばんは皆様、三頌亭です。いわれて気が着いたのですが、ブログ開設5周年になってました(^^;)。お越しになっていただいている皆様ありがとうございます。大分話題も出尽くした感がありますが、なんとなく更新ができているのも皆様のおかげであります。あまり変わり映えのしないブログなんですがこれからもよろしくお願いいたします。

というところで以前買ったのだけれどやっと読んだという本を改めてご紹介いたします。ヘレン・ユースティス「水平線の男」です。この著者は一発屋ですが、その一発がモダンクラッシックスになってしまったという例です。なんせヘイクラフトもシモンズもべた褒めです(笑)。日本では絶版も重なって知名度はかなり低くなってますし、邦訳の方が古書のレアアイテムで有名ですね。

冒頭、ハンサムな大学教授ケルヴィン・ボイルが殺されるシーンから始まって、それぞれ登場人物の女性関係や生い立ちが丁寧に書き込まれてゆきます。殺される直前に会っていた女学生モーリー・モリスンはケルヴィンを殺したことを認めてしまいますが・・・。というストーリで登場人物のキャラクターは変化に富んで面白い作品でした。しかしこの作品をモダンクラッシックスたらしめているのは大技のトリックでしょう。これはクリスティの超有名作の変種なのですが、素晴らしいと思います。戦後すぐ発表された作品だということも驚嘆に値します。

もちろん現在では日本にも同種のトリックを据えた作品もありまして、途中で気がつく方も多いでしょう。しかしだからといってクラッシックスとしての価値が揺るぐわけではないと思います。できれば新しい翻訳でこの作品を残してほしいものだと思います。以前も申しましたが、欧米ではペンギンブックスをはじめ何種かのPB版が存在してまして、大変廉価に入手できます。写真の版はポケットブック版のPBです。
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