2009年11月

ジェームズ・ハーバート「ザ・サバイバル」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。ついでといってはなんですが、ハーバート作品を紹介しておりますので、この本もお示ししておきます。ハーバート作品の中ではなかなか面白い着想でまあまあの出来だと思います。ストーリーはというと心霊モノといっていいでしょう。案外日本的な幽霊に近いところもあって面白かったと記憶しています。冒頭いきなりジャンボジェットが墜落して多数の死者がでるという、阿鼻叫喚の墜落現場から始まります。その後、事故の原因はわからず墜落現場には怪奇な噂が立ち始めるという、上々のお話の立ち上がりですね。ひとりだけ生き残った副操縦士が主人公ですが、マルチスクリーンのようにいろんなディテールが積み重なってラストになだれ込みます。がー・・・ですね。まあよしとしましょうか、後は皆さんでお確かめいただくとしましょう(笑)。

この作品は映画化されて『ジャンボ・墜落/ザ・サバイバー』という題になっています。ホラー映画ファンのあいだではカルト映画らしいですね。某有名映画のネタ元でよく知られるようになりました。私は未見ですが見てみたい映画の一つです。

追記:因みに帯にホラーという言葉がありませんね。この頃はまだホラー小説という言葉がありませんでした。SF長編などでは絶対無いです(笑)

エイブラム・メリット「黄金郷の蛇母神」他

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。さて、また今日も今日とて、絶滅作家図鑑をやってみたいと思います(笑)。エイブラム・メリット-今日の方はなかなかの大物で、この人の作品にインスパイアされた日本人作家の作品は結構あると思います。山田正紀、栗本薫、半村良あたりは間違いのないところでしょう。作品数はあまり多くない人なので大体邦訳があったのですが、いまはもう完全消滅です。

ところでメリットの作風ですが、基本的には秘境冒険ものと言っていいでしょう。問題はそのディテールで奇想炸裂と申しますか、まことにファンタジックなディテールで素晴らしいです。代表作は「ムーン・プール」で英米では現在に至るも再版が続けられている古典作と言っていいでしょう。写真の「黄金郷の蛇母神」は「ムーン・プール」の先立って書かれていたもので、こちらも異様な熱気を孕んだ奇想冒険小説であります。

ところで記事に載せるのに邦訳を捜したのですが整理が悪くて「黄金郷の蛇母神」しか出てきません(^^;)。現在、入手しやすいのは「黄金郷の蛇母神」と「イシュタルの船」で共にハヤカワ文庫です。代表作といわれる「ムーン・プール」は結構な古書価になりつつあって入手が難しくなってしまいました。新訳が欲しい所ですが、案外美文調のところもあるので古い翻訳があっているのかもと思う所もあります(笑)。英文はすでに版権が切れていますので、プロジェクト・グーテンベルグなどで閲覧が可能です。

著作リスト
1919 The Moon Pool(The Moon Pool & Conquest of the Moon Pool) 『ムーン・プール』
1924 The Ship of Ishtar 『イシュタルの船』
1928 Seven Footprints to Satan
1931 Snake Mother(The Face in the Abyss & The Snake Mother) 『黄金郷の蛇母神』
1932 Dwellers in the Mirage 『蜃気楼の戦士』
1932 Burn, Witch, Burn! 『魔女を焼き殺せ』
1934 Creep, Shadow!
1946 The Metal Monster(The Metal Emperor) 『金属モンスター』
1947 The Black Wheel (ハネス・ボク 加筆)
1949 The Fox Woman (半村良(Ryo Hanmura) 加筆小説現代1978/9-1979/8 未完)

パブリックドメイン
The Moon Pool
http://www.gutenberg.org/etext/765
The Metal Monster(『金属モンスター』:悪くない作品です)
http://www.gutenberg.org/etext/3479

追記:「黄金郷の蛇母神」の翻訳者・団精二(ダンセイニ)は荒俣宏氏の変名です。また、挿絵と表紙は秋吉巒(らん)が担当しています。

スティーヴン・キング「N.」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。この前からちびちびと読んでおりましたキングの短篇集「夕暮れをすぎて」ですがやっと読み終わりました。すでに前半は文春文庫から翻訳が出ておりましてお読みの方もいることでしょう。その部分で三頌亭の好みはやはり冒頭の「ウィラ」でしょうか?。一気読みのジェットコースターは「ジンジャーブレッド・ガール」にとどめを刺すでしょう。なんか酷く怖い話なんですが、妙にコミカルな所があって面白い中篇でした。

さて、まだ邦訳のない後半の収録部分からはやはり「N.」が最も興味深い中篇でした(50頁ぐらい)。冒頭のエピグラムでマッケンの「パンの大神」を引用しておりますが、どこでこれが効いてくるのか楽しみでした。もとよりマッケンの短篇に同名の「N.」というのがありますから、多分と思っていました。マッケンの「N.」はロンドンの街中に全く記憶にない路地が出てきて迷ってしまうという白昼の怪異を描いた作品です。しかし、キングとマッケンというのもなんかそぐわないような気がするんですよね(笑)。読んでることは間違いないんですが、「死の舞踏」とかでコメントがあったかどうか記憶にないんです。

ところでこの「N.」なんですが、マッケンの「パンの大神」とギルマンの「黄色い壁紙」をあわせたような作品です。ただ最後はスーパーナチュラルで終るので、純然たる怪奇小説です。非常に端正なつくりで無駄なく出来ておりますので、おそらくこれからアンソロジーピースとして残っていくと思われます。お話はある強迫神経症の患者症例「N.」から恐怖の体験に引きずり込まれる精神科医の物語です。実はこの作品デジタルコミックになっておりまして、発売前に短い25のエピソードになって公開されていたようです(紙芝居みたいです(^^;))。以下にさわりの部分がアップされています。youtubeなどでは全エピソードが視聴可能ですが、読む予定の方は控えた方がいいかもしれません。イラストレーターはアレックス・マリーヴ(Alex Maleev)が担当しています。

https://www.youtube.com/watch?v=i454o7ijabI

デニス・ホイートリー「海図にない海」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。新刊目録から消滅した方のお話ばかりいたしましたので、今日は最新入荷のものからデニス・ホイートリー「海図にない海(Uncharted Seas)」(1968)を紹介いたしましょう。まだ読んでないですね(^^;)。この本にはいささか事情がございまして・・・、映画の方を先見てしまっております。テレビで何度か、なんとDVDまででてるんですよ~。本の見開きとタイトルはなかなか渋い感じの作品かなと思いますでしょ?。ところがこの作品の映画の日本公開時のタイトルは「魔獣大陸-大怪獣タコヘドラの襲来」(爆)といいました。このあたりで「さあ切り上げようか・・。」という方もおられるのは当然のことと思います(笑)。内容はというと魔の海サルガッソーを題材とした海洋冒険映画で、海の「ロストワールド」みたいな感じのハマープロご自慢のB級映画です。魔の海サルガッソーの海の中心にかつてそこへたどり着いたスペイン王室直系の子孫が支配する島が存在している・・という設定になっております。これでもかというくらいてんこもりの冒険小説の要素を詰め込んであって個人的には期待するところが大きいです(笑)。興味のある方は映画の方もどうぞ。チープ感満載のBムービーで楽しめます(笑)。

映画「魔獣大陸」:紹介
「食人植物! 大ヤドカリ vs 大サソリ! 海の彼方には恐怖がいっぱい! 「悪魔の花嫁」の原作者でもあるデニス・ウィートリーの小説「海図にない国」を映画化した奇想冒険映画。ドイツ出身のヴァンプ女優、ヒルデガルド・ネフらB級女優の悲鳴とチラリズムがアクセントになっている。『悪魔の花嫁』の原作者D・ウィートリーの小説「海図にない国」を映画化した奇想冒険映画。水に触れるだけで爆発を起こす粉末と乗客たちを乗せた大型船が大嵐で難破してしまう。救命ボートに乗りこんだ乗客たちの精神は極限状態に置かれ…。」

エリザベス・フェラーズ

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。きょうも新刊目録から消滅しかかっている絶滅危惧種の作家に登場していただきましょう。エリザベス・フェラーズはイギリス新本格のしんがりを勤める代表的な作家です。ブランドなんかと同年代ですが、非常に多作で長編の数が70を越えます。一時期、ポケミスの『私が見たと蝿は言う』と『間にあった殺人』がミステリマニアのコレクションアイテムだったことを知っている方は相当年季のいったマニアの方でしょう。比較的、最近、セイヤーズなどと並んで創元推理文庫が中村有希さん翻訳の5タイトルをもって本格的な紹介に乗り出しましたが、あえなく失敗・・とまではいきませんが、現在全タイトル品切れらしいです。もっとも、セイヤーズよりはよく売れたからかもしれませんが・・(笑)。

ところでフェラーズの作風ですが、いかにもスマートなドメスティック・ミステリでミッチェルなんかに較べれば大変読みやすいです。大向こうを張るような所はないのですが、いかにもシンプルなサプライズをもって毎作楽しませてくれます。イギリス風味といってもあんまりコテコテでないところが三頌亭の好みといえましょうか?(笑)お薦めはというとあんまり作品数がないのですが、創元推理文庫では「猿来たりなば」と「自殺の殺人」、ハヤカワ文庫から新訳の「私が見たと蝿は言う」といったところでしょうか?。どれもまあまあ安定した内容になっています。邦訳のある中では『嘘は刻む』(長崎出版)以外は品切れらしいですが、bookoffにて絶賛発売中です(笑)。今が丁度いいころあいでしょう。興味のある方は早いめにどうぞ。
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