2009年08月

死霊解脱物語聞書

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。きょうは江戸期の仮名草子から「死霊解脱物語聞書」を紹介いたしましょう。三遊亭円朝の「真景累ヶ淵」は大変有名で後年いくつもの作品の種になっておりますが、その「累伝説」の源流に位置するのが「死霊解脱物語聞書」です。この作品は仏教説話といったものに近いのかもしれませんが、これが妙にリアルで実話系の怪談の趣があります。
http://www.ffortune.net/symbol/rei/kasane.htm

円朝の「真景累ヶ淵」などとは異なり、お菊に憑依した累が村人の旧悪を暴いて村をパニックに陥れるところが極めて現代的です。憑依した人格の行動が恐喝犯罪に近いものがあって興味深いです。テキストは叢書江戸文庫26「近世奇談集成1」(国書刊行会)で読むことが出来ます。現代語訳は志村有弘訳のものが志村有弘編「怪談累ケ淵」(勉誠出版)に収録されています。

スティーヴン・キング「DUMA KEY」

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。今日は今読んでるところの本のお話です。スティーヴン・キングといえばもうかれこれ20年近く読んでない人で、最後に読んだのは「ザ・スタンド」でした。これはキングの初期作品で翻訳が長いことでなかったので、完全なエディションが出た時に読んだ記憶があります。多分年代的には「ペットセメタリー」あたりで止まってますね(笑)。たまたまちょっと前に安く売ってたので買ったのが「DUMA KEY」です。ベックさんが書いてられるようにまもなく翻訳(「悪霊の島」)が出ますので気になる方はそちらでお願いいたします。実は以前から少し評判を聞いて気になってたので買ってあった本です。

ハードカバーで約600頁という分厚さですね(笑)。文章は大変読みやすくてこの分だと1週間位で何とか読めそうな気もします。相変わらずのキング節満載の作品です。主人公は建設業者ですが事故により片腕をなくし、脳に損傷を負って言語障害が残ってしまいます。性格も変わってしまってため離婚してこの「DUMA KEY」というフロリダの島にやってきますが、リハビリにとはじめた絵が意外な反響を呼んで・・というところまで読んでいます。ぜんたいの1/3くらいでしょうか?。なんとなくサイコロジカル・ホラーという気がしないでもないのですが、最後はスーパーナチュラルなホラー小説だということで期待しております。事故によりある潜在能力が目覚めるという設定は「デッドゾーン」なんかでも使われていますが、今度はどうなのでしょう?

追記:やっと読了いたしましたので感想を・・。前半2/3までは主人公が事故によリ失ったものを徐々に取り戻してゆくサクセスストーリーですが、最後から200頁、後半1/3が「吸血鬼ドラキュラ」のヘルシング教授もかくやとばかりの悪霊バスターズ物語となっております。主人公・エドガー・フリーマントルが描いた絵は意外にも世間の話題となりますが、それらを見たり買ったりした人々が謎の呪いにより次々と不審な死を遂げてゆきます。その呪いの根源を封じ込めるためにエドガーら3人は島の南端にある廃墟へと足を踏み入れます。・・・といった感じで最後までノンストップのスリルが続きますが、ラストに至って対峙する最後の悪霊との対決は大変哀しい結末となります。作者キングはもう60を越えているでしょう。老境にさしかかる前の落魄の冒険譚と考えるのは三頌亭のうがちすぎでしょうか?。割合楽しめる1冊となっているように思います、翻訳のほうの出版はもうすぐです。ところで読後に見るとわかるのですがダストジャケットがモロにネタバレでキイとなる小物がすべて描かれています。

安原伸「安原製作所回顧録」

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。今日もいつもとは少し毛色の違う本を紹介いたします。今から10数年前、「安原一式」という機械式のカメラを開発して話題になった安原製作所というメーカーがありました。このメーカーは実質、一人のメーカーでした。その創業者・安原伸の回顧録です。一人で作った趣味のカメラのお話です。この手の本には珍しくメーカ側からユーザーに対する本音をバンバン書いてあって気持ちがいいです。思えばこのあたりが銀塩カメラ終焉の時代だったかと思います。日本のカメラ工業は10数社のいわばギルドでこのメンバーが世界のカメラ産業を牛耳ってきました。そのためいい時代を長く過ごし、その製品も他の国が及ばないような値段と性能、品質を誇ってきましたが、現在のデジタルカメラの出現でそれはもうなくなってしまいました。この回顧録はある種の冒険の物語です。単独のカメラ開発が事実上はいかに難しいか、日本以外の国での品質管理がどれくらい難しいかを具体的に教えてくれます。

出版社紹介
「安原製作所は、京セラでカメラを設計していた安原伸が独立して1997年にひとりで作ったカメラメーカー。第1号機「安原一式」は数十年前のカメラが蘇ったようなクラシカルなスタイルを持つ。当時のクラシックカメラブームにも乗り、マスコミ取材が200を超えるなど大変な評判となった。本書では安原自らが当時を振り返り、同時にフィルムカメラやカメラ業界は何だったのかを語る。」

追記:写真のカメラはNikon New FM2です。写真学校生の定番モデルといわれました。シャッター最高速1/4000、シンクロ同調速度を1/250。私は史上最強の機械式カメラだと思っています。恐ろしいことに買ってから17年間、電池を変えていません(笑)。

二階堂黎人「稀覯人の不思議」&森真沙子「快楽殿」

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。今日は古書マニア向きの読物を少しご紹介いたします。のっけからなんですが、古書とミステリーを絡めたものというのが微妙に不得手です(笑)。なぜかというと少し説明しずらいのですが、ただでさえ物欲むきだしのマニアの世界に殺人事件というのが余りにも殺伐としているように感じるからでしょう。ミステリのーの余り絡まない愛書家小説というものが意外と少ないからかもしれません。とまあ余計な説明はいいとして関係のないミステリファンの方はなんかヘンな世界のミステリとしてお楽しみになればよいわけですね。

まずは二階堂さんの「稀覯人の不思議」です。元手塚ファンクラブの会長さんだけあって随所に手塚本のトリヴィアがちりばめられています。わたしはマンガ本のほうはそんなによく知っているわけではないので、結構面白かったです。また絶版マンガマニアの擬化のぐあいが程よくて笑えます。殺人事件は起こるのですがそれほど殺伐とはしていないのでまずまずに面白く読めるとは思いますが、やっぱり古書マニア向きでしょうね。

つぎは意外な珍品、森真沙子さんの「快楽殿」です。澁澤・生田ファンは読めば面白いと思います。作品中にはあからさまにわかるモデルがたくさんあってこれが傑作です。とくに生田耕作をモデルにしたと思しき、フランス文学の大学教授というのが傑作で、いいのかこんなの書いて・・とか思ってしまいました(笑)。他にアス○○テ書房の主人とか実物を知っている方には結構笑える傑作な作品だと思います。残念ながら完全マニア向きです。

出版社紹介など

森真沙子「快楽殿」
「昭和三十年代初め、あらゆるタブーに挑戦し耽美と贅のかぎりを尽くした限定版豪華雑誌が話題となった。しかし、創刊から6号を数えて、雑誌『快楽殿』はあっさりと姿を消した。“幻の”といわれるゆえんである。盛岡でオンライン書店を営む矢城は、東北財界の重鎮・漆原より、『快楽殿』の6号を入手するよう依頼を受けた。数少ない手がかりを追う矢城を待ち受けていたのは、悪徳ブックハンターなど稀覯本を取り巻く闇の世界。そしてなによりも、『快楽殿』そのものが大いなるミステリーなのであった!傑作長編サスペンス。」

二階堂黎人「稀覯人の不思議」
「手塚治虫愛好会の会長が自宅の離れで殺され、貴重な手塚マンガの古書が盗まれた。しかも、その部屋は完璧なる密室に仕立てられていた。犯人は、やはり手塚マニアなのか?また、どんな方法で密室を創り出したのか?愛好会の一員である大学生・水乃サトルは、持ち前の頭脳と博識で、真犯人を追いつめてゆく、鮮やかな論理とトリック!スリリングな傑作長編。」

TVドキュメント「フェルマーの最終定理」

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こんばんは、きょうはいつもとは毛色の違う話題を。。フェルマー予想がアンドリュー・ワイルズによって解決されてからいろんなノンフィクションが出ましたが、あらためて思うのはいかにも総力戦といえる問題解決だったのだなあということです。数学上の難問は数あれど、中学生にも説明できてこれほど解決の難しい問題はもう2度とでないでしょう。最近解決されたポアンカレ予想とか、あるいはリーマン予想とかになりますとどういう問題かを説明するだけでわからなくなってしまう人がほとんどでしょう。そういう意味では稀有の問題でした。

フェルマー予想というのは最終的にアンドリュー・ワイルズが証明したのですが、それに至る道には数多くの数学者の理論やアイディアがあってのことでそれらの道具を自在に使い切ってはじめて可能になった証明です。もちろんそのなかには日本人の上げた業績も重要な役割をしています。谷山・志村予想というのがワイルズの証明では最重要な問題だったのですがこれをワイルズが証明してしまい、その副産物としてフェルマー予想が証明されるという少しややこしいことになっているそうです。このあたりは素人には計りがたいことでありまして、そうなんだということしかわからないのではありますが・・(笑)。そのほかフェルマー予想が解かれるまでのお話には普段あまり縁のない数学者達の人間模様がありまして興味は色々と尽きません。

また余り騒がれなかったのでありますが、ポアンカレ予想を解決したグリゴリー・ペレルマンというロシアのの数学者も大変ミステリアスな人物です。人知れず見晴かす高峰を踏破して平然としている様はなんともいえない人物ですね。

フェルマーの最終定理
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%9C%80%E7%B5%82%E5%AE%9A%E7%90%86
TVドキュメント「フェルマーの最終定理」
http://www.youtube.com/watch?v=9hMDquJ9UrQ
http://www.youtube.com/watch?v=kNbrbpT8Fqs
http://www.youtube.com/watch?v=8eqKcXBF1WE
http://www.youtube.com/watch?v=a3TDjEpqjGU
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