2009年06月

W.W.ジェイコブス「失われた船」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。この時期になりますと、こちらの懐事情をよくご存知なのかどうかは知りませんが、いろんな古書店からカタログをたくさん送ってきます。勢い仕入れにと行きたいのですが、そこはそれ、ない袖は振れないと申しますか、指をくわえて見てるだけというのが最近の三頌亭です(笑)。

このところ英米怪談づいていて、安めのものをすこしづつ仕入れております。まだ到着してないのですが、ハリファックス卿の幽霊実話のシリーズ、ヴァイオレット・ハントの短篇集、オリヴァー・オニオンズやエイクマンの短篇集などなど・・。発注しようかとネットで書誌を調べていたら、案外とpdfファイルなどで読めたりするものが多いです。もちろん本自体の面白みもあるのですが、とりあえず読める状態にあるというのには驚いています。ここ何ヶ月か色々調べてみると、でるわでるわであっさりと読んでいない英米怪談が50冊分ぐらいあつまってしまいました。比較的古いせいもあるのでしょうが、本当に驚きです。

さて、W.W.ジェイコブスというと超有名作の「猿の手」の作者ですね。他の作品は2,3篇しか読んだことがないので短篇集を買って少しずつ読んでいます。なんでもユーモア小説の書き手として知られているようで、以前、傑作選を買ったらユーモア小説ばかりで苦笑した憶えがあります。というわけで怪奇掌編のなかからひとつ「失われた船」というのを紹介いたします。途中まで読んで、邦訳があったことに気がつく体たらくで、記憶のわるいこと夥しいですね(笑)。このひとの有名な「猿の手」という作品はそんなにこわくない作品で、すこしもの悲しい作品です。それと対をなすように「失われた船」も帰ってこない息子を思う母親のお話です。行方不明になった船に乗っていた息子を待ち続ける母親の所へ、ひょっこり息子が帰ってくるのですが・・・というお話です。以前紹介した「怪奇小説の世紀」に収録されています。英文は下記で閲覧可能、数頁足らずの英文です。
http://www.horrormasters.com/Text/a0890.pdf

ブラックウッド傑作集

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日のお題は写真の本です。今更ブラックウッドでもなかろうにという声も聞こえてきそうですね(笑)。非常に多くのファンタジーと怪奇小説を書いておりまして、この方面ではよく知られた人です。私の読んだ中でアルジャノン・ブラックウッドの傑作をあげなさいといわれると、さあどれになるでしょうか?。やはりあの猫町、「いにしえの魔術」と「柳」ということになるでしょうか?。幾分、東洋思想を勉強していた時期があったとかで、「柳」などは非常に日本人にはわかりやすいものになっていると思います。かつては創元推理文庫をはじめ講談社文庫とソノラマ文庫などいくつかの傑作選があったのですが全部新切れか絶版になってしまいました。出来ればどこかの文庫でブラックウッドの傑作選を出してくれるとありがたいなと思っています。写真はいままで出た傑作選の中では一番充実した創土社のものです。創元推理文庫のものとほとんど同じですが少し収録作品が多いです。

収録作品
「いにしえの魔術」 Ancient Sorceries
「黄金の蝿」 The Golden Fly
「ウェンディゴ」 Wendigo
「移植」 The Transfer
「邪悪なる祈り」 Secret Worship
「牧神の祝福」 A Touch of Pan
「囮」 The Decoy
「雪女」 The Glamour of the Snow
「屋根裏」 The Attic
「ホーラスの翼」 The Wings of Horus
「炎の舌」 Tongues of Fire
「犬のキャンプ」 The Camp of the Dog

追記:「柳」はポケミスの「幻想と怪奇(全2)」の方に収録されています。英語の達者な方は下記にて閲覧可能です。
http://www.horrormasters.com/Text/a0200.pdf

クリストファー・モーリー「幽霊書店」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日は少し珍しい本(?)をお持ちいたしました。何分幽霊続きですのでこのような書目もよろしいかと思います。といってもなにも幽霊がでてくるわけではありません(笑)。クリストファー・モーリーの「幽霊書店」は青空文庫オリジナルです。かってこの翻訳がある雑誌で企画されたことがあり、ごく一部が翻訳されましたが全訳はこの青空文庫のみです。古書でも新刊でも紙媒体のものは存在いたしません。海の向こうでは本好きの間でよく知られており、傑作という評価の作品です。

物語はロジャー・ミフリンというブルックリンの裏通りの古本屋の店主を中心に描かれています。大詩人にとりつかれているということで自分の店を「幽霊書店」というふうに名づけています。奥さんと老犬、常連客に見習いの友人の娘さんなど当時の古書店の様子が生きいきと描かれていて、本好きの方にはたまらない内容となっています。また全編に挟まれる本を題材にしたユーモアはほかの読物にはないこの作品の特徴となっております。後半はミステリ仕立てになっていて、トンデモな展開が待ち受けています。大戦間の文学・・物語がまだ幸福な時代に書かれた傑作だと思います。ダウンロードは下記にて可能です。本という物体を背景とした作品をオススメするのにテキストファイルというのは少し皮肉なことかもしれませんが・・(笑)。

青空文庫:クリストファー・モーリー「幽霊書店」
http://www.aozora.gr.jp/cards/001302/card47352.html

青空文庫(クリストファー・モーリー解説)
「ペンシルベニアのハバフォードの生まれ。父親は大学の数学教授、母親は音楽家で詩人だった。モーレーはイギリス留学から戻ってくると雑誌の編集者として活躍を始める。1917年に最初の小説「移動書店パルナッソス」を出版、1919年には続編「幽霊書店」を出す。この作品はアート・バーゴー「ミステリ愛好者の手引き」のなかで五つ星をつけられている。ニューヨーク・イヴニング・ポスト紙にコラムを書き、サタデー・リヴュー・オブ・リトリチャーを創刊、十六年にわたって編集した。シャーロック・ホームズの熱烈なファンで、Baker Street Irregularsというクラブの設立に加わり、1944年には「シャーロック・ホームズとワトソン博士」を著している。堕胎をテーマにした1939年の「キティ・フォイル」はベストセラーとなり、映画化もされた。」

追記:翻訳は大変よく出来ております。原文はグーテンベルグ・プロジェクトなどで閲覧可能です。ご奇特な翻訳家の方に感謝したいと思います。

最新入荷事情(オニオンズ作品集「Widdershins」他)

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。黄金期の英米怪談の作者は非常に多岐に渡っていて、作家なら誰でも少しはそういった作品を残しているといった性格のものらしいです。いくつかの邦訳のみで本邦にはまだほとんど知られない作家と言うのも数多く残っています。そういった作家の作品集をぼつぼつと読んでいくのが三頌亭の趣味であります。

というわけで、最近の入荷事情でもお話しましょう。オリヴァー・オニオンズは「手招く美女」や「ローウムの狂気」などわずか4,5編の短篇しか本邦で知られておりません。しかし、かなりの数のゴースト・ストーリーを書いていて英米怪談の作者としては向こうでは知られた存在です。彼の怪談方面の第一作品集が「Widdershins(逆廻し)」です。全部で9篇の短篇が収められていますが、そのうち「手招く美女」、「ローウムの狂気」、「事故」と3作品の邦訳があります。ためしに「The Rocker」というのを読んでみました・・ジプシーの女とおばあちゃんのお話ですが、見える人には見えるという幽霊で、なんとも見えてない人との対比が怖い作品でした。

収録作品
「The Beckoning Fair One」(手招く美女)
「Phantas」
「Rooum」(ローウムの狂気)
「Benlian」
「IO" ("The Lost Thrysus")」
「The Accident」(事故)
「The Cigarette Case」
「Hic Jacet」
「The Rocker」

因みに下記のサイトで英文ですが全て読めます。珍しい怪談版青空文庫ですね。
http://www.horrormasters.com/Themes/horror_classics.htm
余談ですが、最近、W・W・ジェイコブスの傑作選を買ったら、ユーモア小説ばかりでした。この方面では知られた作者のようです(笑)。オニオンズは元はイラストレーターだったそうで、歴史小説やSFがよく知られているそうです。怪奇小説は「盆栽文学」だと翻訳家の西崎憲氏がいっていましたが、そのとおりだと思う三頌亭です(笑)

追記:好事家のために
タルタロス・プレスの怪奇小説作家データベース
http://freepages.pavilion.net/tartarus/database.htm

「ざくろの実―アメリカ女流作家怪奇小説選」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。この前、イギリス編『鼻のない男』を紹介いたしましたが、それのアメリカ編です。アメリカと言えばモダンホラーのお国柄なのですが、キングやストラウブを生んだ土壌はこんな所にあったのかと納得させられる短篇集です。最近読んだ中ではもっとも強力な短篇を満載した本です。のっけから「黄色い壁紙」のギルマンによるサイコな「揺り椅子」で鳥肌のプレゼント、そのあとフリーマン『壁にうつる影』とゲイル『新婚の池』でもうおなかいっぱいです(笑)。しかし、輯中のクライマックスは心理小説の極致ともいえるグラスゴーの『幻覚のような』で、これにはうならされてしまいました。デザートは技巧の極をつくしたウォートンの『ざくろの実』で〆ていただきましょう(笑)。イギリス編とどちらが好きかで怪談の好みがわかる2冊の作品集といえますね。

出版社コピー
「ピューリッツァー賞作家の表題作、O・ヘンリー賞受賞作など、英米文学「怪奇小説の世紀」に輝いた女流作家8人の傑作選。イギリス編『鼻のない男』に続く、アメリカ編。

シャーロット・パーキンズ・ギルマン『揺り椅子』
メアリー・ウィルキンズ・フリーマン『壁にうつる影』
ゾナ・ゲイル『新婚の池』
ウィラ・キャザー『成り行き』
イーリア・ウィルキンソン・ピーティー『なかった家』
エレン・グラスゴー『幻覚のような』
メアリー・ハートウェル・キャザーウッド『青い男』」
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