2009年03月

笹沢左保「もしもお前が振り向いたら」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。笹沢左保の名所案内の第3弾です(笑)。「もしもお前が振り向いたら」(初単行本:「後ろ姿の聖像」)です。

出版社コピー
「バーのマダム殺しの犯人は8年前の作曲家殺しの犯人と同一人物なのか?幾重にも仕組まれた鉄壁のアリバイを、刑事が崩したとき、容疑者は鉄道自殺。事件はこれで解決したかに見えたが、それは新たな、より大きな謎の始まりだった。真犯人は全く別の所で成功者となっていた。都会派ミステリー長編傑作。」

というわけでこの作品、アリバイ崩しの傑作といって良いと思うのですが、出てから知名度は下がり続けネットで検索しても数十件という事になってしまいました。まあもともと話題には上った記憶はないので仕方のないことだとは思います(笑)。しかし、こんな作品をいくつも書けるならば天才じゃあるましかとすら思ってしまいます。この作品アリバイ崩し+・・・というところが作者の仕掛けであり、それが非常に上手く決まっている作品です。今までいくつかの笹沢作品を紹介いたしましたが、コンスタントに傑作をものしているという点ではずば抜けた才能だと思います。新本格という名称は故松本清張氏がはじめて使った言葉でしたが、その旗手が笹沢左保でした。意味合いにおいては今と昔では少し違うのでしょうが、現在、新本格と呼ばれる人たちの先輩格に当たるのが笹沢左保ではないかと密かに思っております。

パガニーニ「ヴァイオリン協奏曲第1&2番」

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パガニーニという作曲家&ヴァイオリニストがいますよね。この方、音楽は素晴らしいんですが、評伝などを読むと個人的にはお知り合いになりたくないNo1といっていいくらいやなヤツなんです(笑)。今日のお題のヴァイオリン協奏曲なんかもオーケストラパートは「付け足りで書いたんかい!!」っていうくらい簡単なのです。理由は「曲を盗まれるのが嫌だったから」・・ですな(笑)。演奏会当日に練習なしにぶっつけでいけるようにということらしく、楽譜はあとで完全に回収してたらしいです。また、パガニーニの演奏会というといまでいえばスーパースター並の高額チケットでそのモギリまで自分でやったというんですから、いかな守銭奴だったかよくわかりますね(笑)。因みにシューベルトが家財道具を売り払ってまで彼のコンサートのチケットを入手し大いに感激したという逸話もあります。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%BB%E3%83%91%E3%82%AC%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%8B

実をいうと大分前のお話ですが、パガニーニってやたら難しいヴァイオリンの曲というイメージが先行してあまり聴いてなかった時期があります。おいおい聴いていくとこれがポピュラー音楽の才能とでもいったらいいのでしょうか、わかりやすく説得力のある歌があるんですね。同時代のロマン派の作曲家達が口をそろえて絶賛した理由ではないかと密かに思っております。リストなんかと較べれば良くわかるのですが、この方は喩えていうとスタジオミュージシャン(笑)、アレンジが物凄く得意です。テクニックは素晴らしくあるんですがヒット曲を作る才能はあまりないんですね。後世、「パガニーニの主題による・・」といった曲がたくさんかかれた理由もこのあたりにあるのではないかと愚考するわけです。

ところで録音は誰のが良いか迷うんですが、アッカルド&デュトワくらいが綺麗でいいでしょうか?。録音は悪いですがちょっと変わったところでメニューイン&モントゥーあたりも面白くて良いです。

追記:パガニーニの肖像写真というのは残っているのでしょうか?。写真が実用化されるほんの少し前に死んだのでないんじゃないかと思うのですが・・。なんでも遺体のほうは1920年代後半まで残っていたというのですから驚きです。

D.H.ケラー「アンダーウッドの怪」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。アーカムハウス叢書よりホジスンを紹介いたしましたのでデイヴィッド・H・ケラー(David Henry Keller)を紹介いたします。本業は精神科医と申しますから、以前紹介したロバート・リンドナー(『宇宙を駆ける男』 )とよく似た経歴の持ち主です。本邦での纏った紹介はこの本のみですが、おしくも品切れですか・・。何とか文庫にならないものでしょうか・・。経歴の示すとおり、サイコものに独特の冴えを見せており、これがなかなかコワイです。収録されている短編は全部で18篇、SF、怪奇、ファンタジーとバランス良く採られています。SFほうで大変有名な「健脚族の反乱」というのが収録されています。収録作は以下の通り。


「地下室の怪異」 The Thing in the Cellar (Weird Tales 1932/3)
「馬勒」The Bridle (Weird Tales 1942/9)
「タイガー・キャット」 Tiger Cat (Weird Tales 1938/7)
「芳香の庭園」 The Perfumed Garden
「死んだ女」 The Dead Woman (Fantasy 1934/4)
「発想の刺激剤」 The Literary Corkscrew (Wonder Stories 1934/3)
「リノリウムの敷物」 A Piece of Linoleum (Ten Story Book 1933/12)
「阿片常用者」 The Opium Eater
「健脚族の反乱」 The Revolt of the Pedestrians (Amazing 1928/2)
「クラゲ」 The Jelly-Fish (Weird Tales 1929/1)
「ドアベル」 The Doorbell (Wonder Stories 1934/6)
「怪音」 The Worm (Amazing 1929/3)
「ロボット乳母」 The Psychophonic Nurse (Amazing 1928/11)
「許されざる創作」 Creation Unforgivable (Weird Tales 1930/4)
「神の車輪」 The God Wheel
「金色の枝」 The Golden Bough (Marvel Tales 1935/Winter)
「月明の狂画家」 The Moon Artist (Stirring Science Stories 1941/6)
「砂漠に立つドア」 The Door (Arkham Sampler 1949/Summer)

コルンゴルトとその時代

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三頌亭音楽館、今日のお題はコルンゴルトです。音楽ではなくて実は評伝の方なのですが、早くも品切れですか・・。日本では最初の纏った紹介です。驚くべきことは全くのアマチュアの人の手になる本であるということでした。この本の著者と同じく私のコルンゴルト初体験はFMから流れてきたヴァイオリン協奏曲でした。適度な現代性を兼ね備えた明るくて楽しい曲は長い間記憶に残っていたのですが、その録音を探すのは結構難しい時代でした。現在入手しやすい盤からコルンゴルト1947年の作品、ヴァイオリンはハイフェッツ、A. ウォーレンスタイン指揮ロサンジェルス・フィルの演奏を紹介しておきましょう。

第二次大戦はヨーロッパの多くの芸術家たちをアメリカへ送り込みましたが、音楽においても然りです。この本はシェーンベルグやストラヴィンスキーといった現代音楽の巨匠達のアメリカでの生活がどんなものであったかを教えてくれる珍しい本でもあります。シェーンベルグが映画音楽を依頼された時のことなどは話半分にしても傑作なものですね。

著者のことば
「今ここに明らかになる20世紀の天才作曲家の全貌!
コルンゴルトは20世紀前半に、ウィーンとハリウッドをまたにかけて活躍した作曲家です。前半生をウィーンの若き天才オペラ作曲家として過ごした彼は、ユダヤ系だったため、ナチス政権成立後はハリウッドで映画音楽を書いて生計を立てました。戦後クラシック界にカムバックしようとした彼は、「映画音楽作曲家」のレッテルを貼られて失敗し、寂しく死んでゆきました。しかし、その音楽は忘れ去るにはもったいないほど生き生きとし、甘美で魅力的です。コルンゴルトが聴かれないのは、「ハリウッドに魂を売り渡した人間にいい音楽が書けるわけがない」といった偏見に基づいているように思われるのです。そうした誤解を解きたいという願いから生まれたのが、『コルンゴルトとその時代』なのです。

この本では、単にコルンゴルトの生涯を追うのではなく、それを当時の音楽史や一般歴史の流れと対比することで、彼が音楽史上どのような位置を占め、そのキャリアが厳しい現代史の中でどのように軌道修正させられていったかを明らかにしようとつとめました。と同時に、映画音楽が一般に思われているよりもずっと深くクラシック音楽の伝統と結びついたものであり、すぐれた作品も多く、「映画音楽=低俗」という図式には修正が必要だということも書いたつもりです。どの程度の内容に仕上がっているかは読者の皆さんに判断して頂くしかありませんが、音楽、歴史、映画などに興味のある方は一度御覧になって下さい。特に、

20世紀における調性音楽のあり方
マーラーやリヒャルト・シュトラウス
ヒンデミット、ヴァイルらの「新音楽」
ナチズムと音楽の関係
映画音楽
前衛芸術と大衆との関わり方
現代史と芸術

などに興味をお持ちの方々には、ぜひ読んでみて頂きたいと思います。」

チャイコフスキー「くるみ割り人形」

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久しぶりの三頌亭音楽館です。カミさんが急に聞きたいから買えというので買ってみました。小生意気に「全曲盤じゃないと嫌だ!」だとかいうので、結局プレヴィン-ロンドン交響楽団という昔の盤にしてしまいました。大分聴いていなくて久しぶりですが、自分の持っていたレコードはたしかアンセルメ-スイスロマンドだったかと思います。たしか、プレヴィンの盤は出たとき友達に録音させてもらった憶えがあります。色彩感の豊かな素晴らしい演奏でよかったはずと思って買ってみました。他にスヴェトラーノフの全曲盤とかもあってこちらも聴いてみたいところですが・・。

チャイコフスキーの「くるみ割り人形」はホフマンの原作をバレエにしたものです。案外と翻訳が少ないので読んだ方もそう多くはないと思いますが、これも大変色彩感に溢れた楽しい作品です。お菓子の国にいってみたい方はぜひどうぞ(笑)。
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