2008年10月

雀野日名子「あちん」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日はまた消化本ですね(笑)。雀野日名子さんの「あちん」です。始めて読む人です。最近出来たよく分からない「幽」怪談文学賞というのを受賞しています(笑)。主には東雅夫さんが主催なのでしょう。審査員のお歴々は帯をどうぞ。三頌亭の苦手な方(誰でしょうか(笑))が入っていますが、読み手としての才はまた別物ゆえ気にしないで行きましょう。

さて雀野日名子さんのこの作品ですが、あんまり恐くないので怪談が苦手な人もオッケーという作品集です。ロカールな心霊スポットネタを下敷きに人間関係の因果話を織り上げたものです。芯から恐がらせようとしていないのか、ややノスタルジックな癒し系の怪談ですね(笑)。収録作は以下の通り。お堀端の怪を描く表題作「あちん」と公衆電話ボックスにまつわる心霊譚「2時19分」が三頌亭の好みです。

「あちん」
「タブノキ」
「2時19分」
「迷走」
「もうすぐ私はいなくなる」

不思議な雑誌(表紙:秋吉巒)

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1960年代に出版されたモンド系の雑誌です。なかなか怪しさ爆発でしょ(笑)?。取り立てて集めているというわけではないのですが、見かけると時々買います。表紙を秋吉巒(らん)が描いていて面白い物が多いです。もっとシュールなのもあるのですが今回はおとなしめの2冊です(笑)

秋吉巒
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/35847889.html

宇能鴻一郎「鯨神」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。このあいだ宇能鴻一郎の短篇集を紹介いたしましたので、彼の出世作を紹介しておきましょう。大映で映画化されましたので特撮ファンの方には馴染みのある作品かもしれません。昭和36年に発表された「鯨神(くじらがみ)」です。芥川賞受賞作品でした。当時、彼が東大の大学院在学中に書いた作品です。70年代に入って官能小説家として有名になるまで純文学系の作品を沢山発表しているのですが、今調度スポットになってしまって新刊では読むことができないです。「鯨神」は中公文庫で復刻されましたが今はもう品切れでしょう。

さてこの作品ですが、和製「モビィデック」とでも言ったらいいのでしょうか?。魔神のような鯨と人間の死闘を迫力ある文体で描いた作品です。昔読んだのですが、個人的には好きな作品です。「モビィデック」よりはより鮮やかな描写に溢れていて、その部分がこの作品の独自性といえましょうか?。埋もれさすには惜しい作品だと思います。

追記:さすがにこの頃の芥川賞の審査員というのは錚々たるメンバーですね。井伏鱒二と佐藤春夫はこの作品を押してなかったようです。

大倉崇裕「生還」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日は大倉崇裕さんの「生還」です。「アイガーサンクション」の昔から山岳小説には目がなかったりする三頌亭です。先に出た「聖域」もあるのですが表紙のカッコよさに惹かれてこちらから読んでしまいました。自分で山に登るほど好きなわけではないのですが、友人によく山へ行くのがいまして身近に感じることが多いですね。

さて大倉崇裕さんの「生還」は山岳捜査官・釜谷亮二の活躍する連作短篇ミステリです。4篇の短篇を収録していますが、そのうち3篇は雑誌「山と渓谷」に掲載されただけあって登山シーンは本当に過不足がないです。ミステリとしてはやや薄味といったところですが、それでも私にとってはなかなか悪くないです。ただやはり山を舞台にしたミステリというのはなかなか難しくて今までこれというものに出会ったことがありません。全てサスペンス小説か中間小説のようなものばかりです。この「生還」にかんしても通常ミステリとすれば動機などの点で一般に理解し難いところがあったりといろいろ瑕はあります。ただ最近、山岳小説の書き手として新しい人が出てきてないので個人的には期待するところが大きいです。次は「聖域」を読んでみたいと思います。

ブラックバーン「刈りたての干草の香り」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日は積読本の消化をいたしましょう(笑)。ジョン・ブラックバーン「刈りたての干草の香り」です。邦訳は実にたった4冊でしたか・・、実力の割には陽の当たらないブラックバーンです。PBなどで未訳本を読もうと以前から思っているのですが、入手が思うようにはかどりません。「闇に葬れ」の書影がネットで拾えましたので載せておきます。

さて、この「刈りたての干草の香り」ですが、個人的には大変面白かった物のひとつです。ブラックバーンのデビュー作で発表が1958年といいますから、大分前の作品ですが、年代を考えると驚異としかいいようのない内容です。終戦末期、ナチスが極秘に開発した人間に寄生する菌類(生物兵器)をめぐるサスペンス小説です。帯の方にいい解説がついておりますがそのとおりです(笑)。この人間に寄生する菌類というのがB級感覚横溢する着想になっておりまして、その描写にシビレます。映画にしたらさぞ面白かろうと思うのですが、そのような企画はないようですね、残念です(笑)。

出版社・コピー
『ソ連のとある村が、軍隊によって焼は払われ、住人は収容所に入れられたという。英国情報局のカーク将軍が調査に乗り出す。その地でなにが起こっているのか…。卓越した筆致で描く異色エンターテインメント。既刊『闇に葬れ』で好評を得た、稀代のストーリーテラーによる本格ミステリ+モンスター・パニック。「B級怪奇映画ネタなのに仕上がりは名匠級」と評される著者のデビュー作、本邦初訳。』
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