2008年07月

トルーマン・カポーティ「遠い声、遠い部屋」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日はカミさんと子供が近くへ旅行に行っているのでひとり羽を伸ばしております。まあ、子供の家庭教師がないだけでもストレスが減るというものですね(笑)。ところで今日のお題はどこにでも置いてる本です。珍しく邦訳と英文両方で読んだ本で大変よかったと思うものの一つです。トルーマン・カポーティ「遠い声、遠い部屋」ですね。

ゴシック仕立ての南部もの・・まるでカレイドスコープを見るが如き絢爛たる文章・・素晴らしいと思いました。ランダムハウスのベネット・サーフが「完璧で筆を入れる余地がない」とまで絶賛したカポーティの出世作です。南部を舞台にしたエキセントリックな人物ばかりが出てくる異色作です。少年の目からみた歪曲した視点がなんでもないものに宝石箱を撒き散らした如き背景を与えます。余計ですが「冷血」や「ティファニーで朝食を」を読んであまり気が進まなかった人もぜひお試しください。きっと別の印象を持つと思います。

出版社・コピー
「父親を探してアメリカ南部の小さな町を訪れたジョエルを主人公に、近づきつつある大人の世界を予感して怯えるひとりの少年の、屈折した心理と移ろいやすい感情を見事に捉えた半自伝的な処女長編。戦後アメリカ文学界に彗星のごとく登場したカポーティにより、新鮮な言語感覚と幻想に満ちた文体で構成されたこの小説は、発表当時から大きな波紋を呼び起した記念碑的作品である。」

追記:「遠い声、遠い部屋」の翻訳はロレンス・ダレルなどの翻訳をしていた河野一郎氏のものがあります。悪くない日本語訳でした。また、O・ヘンリー賞を貰った処女短篇「ミリアム」も大変面白い作品でした。

人工衛星の撮影

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地上から人工衛星が撮影できるらしい・・以前この話を聞いたときは「えっ!」と思ったのですが、よくよく考えて少し計算してみると確かにできるはずなんですね。写真の画像は国際宇宙ステーションを地上から口径30cmくらいのシュミットカセグレンで撮影したものです。コンポジット画像で何枚かの画像を重ねてノイズレベルを下げています。上空400kmで全長は50mくらいはあるでしょうから、400倍くらいが使えれば約1km先にあるのと同じです。当然写るわけですね。よく軍事用のスパイ衛星なんかの解像度は地上で約10cmとか言いますけど、どのくらいの口径の望遠鏡を積んでいるのでしょうか?。デジタル処理で結構いけるのかもしれませんが・・。このあたりよく知らないですね。因みに人工衛星の撮影は追尾が大変で専用の追尾装置が必要になります。ISS(国際宇宙ステーション)などは90分で地球を1周するそうです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3

ジョイス・マンスール詩抄

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たまにはこちらも更新しておきましょう。「奇怪な令嬢」ことフランスの女流詩人、ジョイス・マンスールの訳詩集。写真2枚目はアルフォンス・イノウエの銅版画(扉絵)です。出版データは以下の通り。

ジョイス・マンスール詩抄「女十態」
生田耕作訳 奢覇都館発行
1991年6月刊 限定130部記番
アルフォンス・イノウエ銅版画3葉入。函完本。

荻原浩「噂」&エドガール・ モラン「オルレアンのうわさ」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日は抱き合わせ商法です(笑)。お題は写真の2冊です。

荻原浩「噂」
皆様の評判がよろしいようなので読んでみました。広告業界の出身らしいので、自分のフィールドの話題です。なかなか端々にブラックな内容を含んでいて、それが最後の大技に収束します。中年刑事と女性刑事という取り合わせが面白くて、途中で出てくるいろんな登場人物も感じが出ていて秀逸でした。謎を徐々に追いつめていく過程というか、明らかになっていくところが意外に良く書けていて面白い作品でした。噂を背景にしたミステリーというのはあんまりなかったのでその点でも大きく三頌亭の興味をひいた作品でした。最後の大技はどうでしょうか?ブラックに終ってしまいますが・・。

出版社コピー
「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。」

エドガール・ モラン「オルレアンのうわさ」
荻原浩「噂」にも一部が引かれていますが、社会学の著作です。噂や流言蜚語を扱った著作の嚆矢といっていいでしょう。「都市伝説」(神話という言葉を使ってます)などという言葉がまだなかった時代に書かれました。一見おもしろくなさそうですがこれがなかなかスリリングな読物になっています。詳細な調査と怜悧な分析によりその実像を追いつめてゆく様はちょっとした推理小説さながらです。もともと大衆世論を操作しようという考え方にはなにかしら剣呑なものがありますし、これを最も効率的かつ大規模に用いたのはナチスでしたし、その後よく研究したのはアメリカでしょう。比喩的な言い方ですが「ハメルーン」の笛の研究といってもいいと思います。残念ながらこの本今品切れでしたか・・図書館か古書でどうぞ。

追記:あるメーカーの双眼鏡のインプレを双眼鏡関連の掲示板に書いたことがあります。まだ買った人が少なかった頃なのでネットには記事がありまませんでした。ところが今になっても私の書いたその機種の少しだけの欠点が一人歩きしていて、たまに目にするとぞっとすることがあります。

出版社紹介
「1969年5月の初め、ひとつのうわさがオルレアンで広まった。幾人かの女性が行方不明になっているという。ユダヤ人の商人たちが、ブティックの試着室のなかで薬物をかがせるか注射するかして、地下の通路を経て、外国の売春街へ攫っていったというのだ。この月の末に至る間にうわさは尾ひれをつけられ、この「犯人」たちを威嚇するような性格をもつ。ユダヤ商人の多くは、ある狂気が彼らを包囲するのを知る。じっさいには、何ごとも生じていなかった。だれ一人として、オルレアンで行方不明の女性などいなかった。すべては口から耳へと伝えられ生じたのである。モランとその調査グループは、この事件の解明を試みる。なぜオルレアンで?なぜユダヤ人が名ざしで?いかにうわさは増殖し、神話化したか。」

ルーファス・キング「不変の神の事件」他

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日も適当にそのあたりにあった本から紹介していきましょう。このところたいしたものがないので、こんな感じばっかりですね(笑)。あんまり関係ないのですが広瀬正「マイナス・ゼロ」が復刊いたしました(集英社文庫)。ご興味のおありの方はこの機会にぜひどうぞ。

里見弴「善心悪心」
有島三兄弟の末弟です。折に触れて単行本を買ったりして読んできたのですが、全集が読みたいといつも思います。70年代に筑摩書房が限定で里見弴全集(全10巻)を出したことがありますが、名前だけでこれが傑作選なんですね。多分きちんと収録すれば最低でも2倍くらいには膨れ上がるでしょう。今もう全集を出そうという出版社はないでしょう。もう少し取り上げられてもいいと思うのですが冷遇されているように思います。随筆なども面白いので興味のある方はお読みになってみてください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8C%E8%A6%8B%E5%BC%B4

吉屋信子「生霊」
ちくま文庫の文豪怪談傑作選のうちの1冊です。この方のは怪談というよりは不思議な話といった方がいいのかもしれません。日本の女流作家の連綿と続く怨みの伝統からは一線を劃した作品が多いです。変なお話ですがある意味極めてモダンな怪談でしょう(笑)。小泉八雲の「破約」を例にとって、呪い殺すなら、再婚相手でなくて旦那のほうでしょ・・とのたまうあたり只者ではないですね。この方の怪談というと「鬼火」があまりにも有名なのでこの作品集からは外しているようです。「鬼火・底のぬけた柄杓―吉屋信子作品集 」(講談社文芸文庫)のほうもよろしくお願いいたします。

デ・ラ・メア「恋のお守り」
ハートリーとデ・ラ・メアは三頌亭の好みです。最近、国書刊行会がデ・ラ・メアの短篇集を新しく出しました。最近、イギリスの出版社がデ・ラ・メアの短篇全集を出していますがまだ手に入れていません。暇が出来たらゆっくり読んでみようと思っている作家の一人です。旺文社文庫も面白いのが入っていたのですが、いまはもうありません。

ルーファス・キング「不変の神の事件」
黄金期の傑作、クイーン絶賛・・というので以前読んだものです。途中のサスペンス小説のような展開は面白いのですが・・・、結末は・・うーん・・こんなものでしょうか?。いささか、あっさりしすぎというか、そりゃそうだよなとかいろんなことを考えてしまいます。一応有名作ではあるらしいので興味のある方は早いうちにどうぞ。今品切れですか?
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