2008年05月

東野圭吾「あの頃ぼくらはアホでした」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日は東野さんのエッセイ集「あの頃ぼくらはアホでした」を紹介いたしましょう。これが今の時点でベストワンといったらまたファンの方にしかられてしまいそうです(笑)。意外とエンターテナーに徹してくれて、男の子のバカ話全開で面白いです。ただ、少し年齢制限つきなのと、女性の方は興味のある話題が少ないかもしれません。ちょっと前に古書で買ったのですが、これを読まなかったら他の東野作品を読もうという気にならなかったかもしれません。

作家のエッセイ集というのを今までたくさん読んできましたが、この人のエッセイにはまず他の人ではほとんど無いことが一つあります。最近の「たぶん最後の御挨拶」他にも目を通したのですが、好きな作品もしくは作家についてかいたものがありません。最近の方なら、恩田さんや桜庭さんのものを読めば分かるとおり、他の作家や作品への連綿とした「ラヴレター」がかならずひとつやふたつあるものですが、東野さんのエッセイには皆無です。まあ際立った特徴です。最近出た「たぶん最後の御挨拶」では文学賞のお話が頻繁に出てきて、これがまたほとんどスポーツ感覚ですね(笑)。

渡辺淳一のモデル小説

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。このところ東野圭吾さんの作品をいくつか出してますので、渡辺淳一御大の物をいくつか紹介いたしましょう(笑)。何で渡辺淳一の作品を読んでるか、自分でも良くわからないのですが結構な数を読んでいました。ほぼ70年前後の作品に限られるようです。多分、妹が良く買ってきていたせいでしょうね。

「光と影」
総理大臣寺内正毅をモデルとした作品。西南戦争で一人は腕を切断されて軍籍を去り一人は切断されずに栄光の道を歩むという人生の明暗を描いた歴史小説。史実とフィクションの継ぎ目がわかりません(笑)。淡々と書いていたように思います。

「阿寒に果つ」
作者にとってはもっとも特別なモデル小説。天才少女画家といわれた加清純子がモデルです。作者の恋人だった人ですね。6人の視点から自殺するまでの短い生涯を書いてます。加清純子について詳しくは山下武「夭折の天才群像」をどうぞ。

「冬の花火」
中井英夫が見出した夭折した歌人中城ふみ子の評伝。モデル小説ですがノンフィクションに近いです。興味のある方は「中井英夫・中城ふみ子往復書簡」(『黒衣の短歌史』)もどうぞ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9F%8E%E3%81%B5%E3%81%BF%E5%AD%90

なんとなくゴシップめいたものが勝ってしまうのは三頌亭の育ちの悪さです(笑)。思えば「ダブルハート」とか「無影燈」といったものも読みましたか・・。最近は全く忘れていた作品群ですね。

追記:荒巻義雄は渡辺淳一と札幌南高同窓です。彼もまた加清純子をモデルとして「白き日旅立てば不死」を書いています。

東野圭吾「天空の蜂」&「秘密」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。お役所の仕事が予定より早く終ったので、羽田で写真の本を読んでました。よく男運の無い女性などということを言いますが、失敗したコンプレックスをどこかで解消したいという無意識の欲求からまた同じタイプの男性にとらわれてしまう・・といった感じに近いでしょうか?、東野作品(爆)。というわけではございませんで、あるきっかけから読んでます。また、そのうち説明いたしましょう。で今日の2作品です。

「天空の蜂」
作者いわく「最も思い入れが深く、さりげなく宣伝するのだが、あまり売れない作品」なのだそうです(笑)。東野さん唯一のクライシス・サスペンスです。作者の言葉どおり大変苦労して取材してあります。テクニカルな部分は一旦自分で咀嚼して分かりやすく記述してあってよろしいです。軍事機密スレスレの部分もあって取材の苦労が偲ばれます。お話は簡単で自動操縦のヘリで高速増殖炉を爆破しようとするテロリズムを描いてある非常にリアルなサスペンス小説です。今回はテロリストのキャラクターも無理なく決まって、お得意の子役のエピソードが効果的です。破綻の無い秀作といってよいですね。皆様、買ってあげてください(笑)。

「秘密」
始めのアイディアは「大事故で恋人の魂が幼い女の子の体に宿った場合、セックスはどうするのかということが最初の疑問だった」ということだそうです。この作品は粗筋を聞いた時にほぼ最後まで想像がついた作品です。よってサプライズはほとんどありませんが、細かい演出の部分はベタだけど良く考えてあるな~と感心いたします。世のお父さん方のハートをがっちり鷲掴み・・といった作品です(笑)。事故が元で娘の体に自分の魂が乗り移ってしまった奥さんが、長い間かかって夫のために娘の役を演じてあげるという超献身的ストーリーになってます。男性の方はこのお話嫌いという方はほとんどいないでしょう。なにげに女性の方に人気が無かったりするのは当然であります(笑)。

以上、2作品で個人的好みは「天空の蜂」ですね。

東野圭吾「白夜行」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。こんなベストセラーを読むのは久しぶりです。東野圭吾さんの「白夜行」です。ドラマにもなったせいもあるのでしょうか、ものすごい数の方に読まれているのでしょう。評価も優れて高く、東野作品中の代表作、ベスト作品との呼び声があります。これだけで少しタジタジしてしまうのですが・・とりあえず読んでみました。以下ネタバレ感想です。また水上勉「飢餓海峡」、宮部みゆき「火車」をお読みで無い方はご注意ください。







えー、何をかいわんやの傑作ということになっておりまして、ややプレッシャーが・・(^^;)。まずですね、こんなこといってなんですが、ちょっと本が厚すぎるのではないかと・・。東野さんの手腕を持ってすれば1/2に圧縮することはわけないのではと思ったりします。エッセイ(「たぶん最後のご挨拶」)などを参照すると連作短篇みたいな形で雑誌連載されたらしいので仕方が無かったのかもしれません。本音を言いますと残り150頁くらいになるまできつかったです。

内容ですが、一言で言うと犯罪小説、悪女ものといってよいでしょう。また、一読して分かることですが、この作品は宮部さんの「火車」と同じ手法を使って、周りから主人公たちの犯罪をあぶりだす記述となっております(映画などでもよく使われます)。犯罪小説として見た場合、よく似たイメージのものには水上勉「飢餓海峡」があります。後半の笹垣刑事なんかは伴淳三郎あたりを髣髴とさせてます(笑)。また、他にはアイリッシュなんかの諸作品も浮かんできておもしろいですね。

恐怖の道行きといいますか、主人公2人が犯罪裏街道まっしぐらとなっていくきっかけにはペドフィリアという飛び切り鬱な事件を作者は用意しておりました。なるほど~とその着想に感心させられます(笑)。そのあとのダブルの親殺しはまあ勢いというか、あまり収まりが良くないように思うのですがこれでもよいのでしょう。ところで手法上の要請から、ヒロインの「悪の独白」というものを欠いている為、悪の化身の如き様を読者はつぶさに堪能することができないという恨みはあります(隔靴掻痒(笑))。

また、オイルショックあたりからの20年間を背景にして主人公達の成長過程が描かれております。作者の実年齢より4,5歳若く設定しているところがミソといったところでしょう(時代が調度シンクロする方もいらっしゃると思います)。と、解説めいたことばかり書いておりますが・・「感想はどうよ??」といわれそうですね(^^;)。ぶちゃけいうと少し欲求不満です(笑)。主人公達にしゃべらせる事をやらないわけで、「飢餓海峡」の犯人ような「悪の哲学」といったものも窺い知ることは出来ません。また宮部さんの「火車」のように直接犯人だけを追いかけた記述でないため、徐々に明らかになる「悪の相貌」といった面白さの効果としても限りがあるような気がします。ただ、読者に考えさせるという意味では効果的なのかもしれません。

ファンの方ごめんなさい。また辛口の感想になってしまいました(^^;)。主人公達のキャラクター造形の曖昧さが少し気になるのかもしれません。ただし、一般的に見ればよく当たる作品でしょうし、現にベストセラーですね。おそらくテレビドラマも作りやすくてエピソードも盛りだくさんです。でも・・んん~です(笑)。

「放課後」の思い出

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。三頌亭はミステリー専門のブログというには力不足ですが、今まで記事にしたもののうちかなりの数がミステリー作品の話題です。その中で大変有名なミステリー作家であるにもかかわらず一言の言及もないという方が実は数人います(ミステリー好きのリンク先の皆様は一度は記事にしています)。作家の好き嫌いというのはまあ男女の間みたいなもので、ちょっとした行き違いからそれっきりという場合も少なくありません。今回はトラウマ・ミステリー(笑)の記事と申しますか、そんな作品についてお話いたします。でその作品は東野圭吾さんの「放課後」です。以下の記事には東野圭吾「放課後」、「容疑者Xの献身」、「小さな故意の物語」と松本清張「天城越え」のネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。






実はこの記事以前に書こうと思ったときは「容疑者Xの献身」が直木賞だとかで沸いてたときなのでいかにも書きづらくてお蔵入りしてました(笑)。思えば東野さんの作品もデビュー以来のお付き合いとなるはずでしたが・・そうはならなかったのでした(笑)。私が現在まで読んだ東野作品は「放課後」、「卒業」「容疑者Xの献身」、「小さな故意の物語」の4作品です(一つは短篇です)。

まだ乱歩賞作品を毎年読んでいたころのお話、今年の受賞作はと心躍らせて読んだのが「放課後」でした。ついに同世代のひとが受賞するようになったのかと感無量でしたね。で読んだのですが・・、犯行動機が「オ○ニー見られたから」(爆)というのがある意味衝撃で目が点になってしまいました。「堪忍して欲しい・・(笑)」。

なんとか2作目の「卒業」は読んだのですが思わしくなく2度とこの人の作品は読むまいと固く誓う日々でありました(笑)。あれから20年余、ブログを始めてみるとたいへん東野さんの評判のいい事がわかりました。おりしも「容疑者Xの献身」が直木賞受賞で盛り上がっている頃でした。もうそろそろトラウマもとれた頃で解消が可能かもしれないということで、「容疑者Xの献身」を買ったのはちょっと前のことでした。

「容疑者Xの献身」は珍しくカミさんにせかされて読んだ記憶があります(笑)。実はこの作品以前、「秘密」あたりで読んでみようかとも思ったのですが、まだ完全にはデビュー作のトラウマから脱しきれていないのかお流れとなってしまいました。ところで、「容疑者Xの献身」ですが、相変わらず犯人キャラクターの造形と動機の部分でもう一つ説得力が無いというかそんな感じです。純愛路線の主人公が浮浪者を身代わりに殺して・・というのがもう一つしっくりこないのでした(モラルに反するとか言う問題ではなく)。

さて、東野圭吾さんですが同世代ということもあり、この方のミステリーの読書歴は私などと大変よく似たものです。小峰元の「アルキメデスは手を汚さない」がミステリー初体験だとか、松本清張を一生懸命読んだだとかまあそんなに大きくは変わりません。最近、見つけた「マイ・ベスト・ミステリー后廚任呂發辰塙イな短篇として松本清張「天城越え」をあげ、自分の作品の中では「小さな故意の物語」をあげておられます。

この2作品はどちらも少年少女が犯人である推理短篇なのですが、比較すると動機の説得力という点で大きな違いがあります。東野圭吾さんの短篇の少女の動機がいかにも説得力が無いのですね。「雀百まで」というか、この人の癖なのでしょうか(笑)。とはいうものの幾分解消されたトラウマのおかげでもう少し置けば次の東野作品を手に取ることも遠くは無いことと思います。次は「秘密」か「同級生」あたりで・・
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