2008年02月

P・ディキンスン「毒の神託」&有栖川有栖「幽霊刑事」

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。今日は以前読んだ中でまだ記事にしていないストックから2冊紹介いたします。

ピーター・ディキンスン「毒の神託」
相変わらずのディキンスン節全開といいましょうか、飛び切り奇妙なシテュエーションから物語は始まります。砂漠の中の動物園、ピラミッドを逆さまにしたような形をした建物の中で殺人が起こります。架空の世界の異民族の生活史が徹底して描きこまれ、一体これはミステリなのかと思うことしばしばです(笑)。また、犯人を指摘し証言するのは人間の言葉を理解できるチンパン君というとんでもないお話でした。ちょっと凄いです(笑)。麻耶雄嵩さん絶賛のミステリー、皆様はいかがでしょうか?

有栖川有栖「幽霊刑事」
不純な動機なのですが、装丁が空色のマーブル紙を模してあって綺麗なのでつい買ってしまいました。題からおよその中身は想像がついてしまうのですが、なかなかお勧めです。幽霊が探偵役というのはカリンフォード「死後」をはじめいくつか先例がありますが、「幽霊刑事」は少しコミカルな感じのお話に作って他には無いタイプですね。最後の方は大変切ないラヴストーリーです。おそらく多くの読者にとって読みやすい内容だと思います。余談ですが、幽霊を題材にした映画は「天国から来たチャンピオン」などを始めいくつも思い浮かびますが、その大半がヒット作です。事実上、肉体がなくなってしまっていることなどを前提としているので、純愛の物語を作りやすいためなのかもしれませんね。ところで、ミステリー部分のお話が吹っ飛んでしまってますが・・(^^;)。

本楽大学ミステリ学部課題「私の好きなミステリ作家・小栗虫太郎」

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ミステリ学部の課題です。何で書くか色々考えましたが、変化球は大変上手な方がきっとおられるに違いありません(笑)。ここは初心にかえってもっとも好きなミステリ作家について書きたいと思います。過去の記事をひっくり返すとおよそ想像がつくかもしれませんが、私の最も印象的で好みの作家は小栗虫太郎です。初めて読んでからかれこれ30年が経ってしまいましたが、やっぱり一つの大衆作家のあり方として面白いのではないかと思っています。かつて、漫画とテレビアニメをおなかいっぱいに食べて育った私のアイドルは小栗虫太郎だったのです。いまでもきっとミステリ好きのスノッブたちのヒーローに違いないことでしょう(笑)。

では小栗虫太郎の作品の特徴を私なりに要約してみましょう。
1.悪文である
まずは皆様この文章をお読みください(序、騎西一家の流刑地から)。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000125/files/666.html
いかがでしょう、凄いですね(笑)。なんかわけがわからないけど何ともいえない怪奇な雰囲気に溢れていますね。何かと明晰な文章が要求される現代にあって、効率一辺倒ではなくこのような雰囲気を優先した装飾的な文章もあっていいと思います。勢いで読むことが大切です(爆)。

2.トリックが理解不能(笑)
小栗作品はミステリのみではなく伝奇小説、冒険小説などもたくさんありますので、ここでは典型的なミステリ作品について意見を述べます。はずかしながら、この方のトリックは理解し得た記憶がありません(爆)。実現性がどうのとかいう論議は小栗作品にはもはや不要です。奇想の論理と言い切ってよいでしょう。正確のいうと私にとっては奇想の論理らしい雰囲気を漂わせている理解不能のトリックです。

3.引用元の怪しいペダントリーがてんこもり
小栗虫太郎の作品を称して「小説以前」といったのは乱歩だったかどうか忘れてしまいました。1頁からいくつものミステリが書くことがで出来るくらい、この人の作品は探偵小説のガジェットを詰め込んであります。そこにはどこから引用してきたかわからない怪しいペダントリーがカタカナと旧字体で満載されています。これが小栗作品の中核をなします。彼の作品にあっては「神は外側に宿る」のです(笑)

さて以上3点が私なりに感じている小栗作品の特徴ですが、小栗虫太郎の代表作といえば何といっても「黒死館殺人事件」ですね。これがなかなかの落とし穴です。一応、ほとんどの小栗作品を走破した結果、初めて読む小栗作品としては適当でないのではないかという結論に至りました。簡単にいうと「黒死館殺人事件」は「短篇を数珠繋ぎ」したような作品で全頁を読んでしまう前に以上指摘した3点に中毒症状を呈してしまう方が後をたちません。結果、栄えある「挫折本No1」の地位を獲得してしまっているのが現状ではないでしょうか?

というわけでgoogleなどでヒット件数を調査してみました。2番手の小栗作品として人気があるのが「完全犯罪」「白蟻」「人外魔境」などです。「人外魔境」は短篇の冒険小説集なので、この3作品はすべて短篇ということになります。もともと「黒死館殺人事件」を除いて、小栗作品には長編小説がほとんどありません。この人はどちらかというと短篇小説の人なのです。したがって初めての小栗作品のお勧めは何が何でも短篇です(笑)。私の初体験は「完全犯罪」でした。

つらつらと書いてきましたが、70年代の後半、今のようにエンターテイメント作品がファンタジックでなかったころ、オーソドックスな文学作品が嫌なわたしのアイドルは小栗虫太郎でした。それはいまでは少し変わってしまいましたが、やはりその後の読書の嗜好によく反映されていると思ってます。

三雲岳斗「少女ノイズ」

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。昨日の続きです(笑)。財布に痛手を負ったまま新刊書店へやっとの思いでたどり着きました。で買った本は写真の本です。べるさんお薦めの三雲岳斗「少女ノイズ」ですね。他にももう一冊買ったのですがそれは後日紹介いたしましょう。ところでこの作品ですが一読いろんなことが浮かびますが、それはまあいいといたしましょう。粗筋等は帯の方を読んでいただくとして、この作品は一言で言うと白皙の美少女キャラ、女性版神津恭介・斎宮瞑の活躍する連作推理です(笑)。シリーズ化すると意外と売れるのではないかと思われます。一番印象に残ったのは最後の一編「静かな密室」です。実行性の問題はともかくとしてなんか面白かったです(笑)。何分、主人公のキャラがべるさんの言葉どおりオヤジ向きに出来ておりますのでその方面に弱い方は要チェックですね(^^;)、表紙もそれ向きですし(^^;)。

原作完全版・鉄人28号

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。今日は少し時間があったので、最近できたリサイクルショップへ行ってまいりました。三頌亭は田舎にあるのでちょっと部数の出ない本を探すのには車で1時間ほど走らないといけません。実はべるさん紹介の三雲岳斗「少女ノイズ」とクェンティンの新訳をと思って出かけたのですが、その手前で引っかかってしまいました(^^;)。理由は写真のマンガ、潮出版の「完全版・鉄人28号」(全24巻)です。光文社版をすでに持っていたのでどうしようかと思いながら2年が経っていました。しかし、一冊単価200円以下という値段に負けてしまいました。この作品はあまりに有名なのですが、光文社版のものがでるまで全部読むことが出来ませんでした。私の年齢ではアニメはともかくもマンガ版は昔のカッパブックスのものくらいしか、リアルタイムでは読んだことがありません。今回の潮出版のものはトレースしたり、ノイズを消したりと復元した版なので大変綺麗です。ところで大体のストリーを読んで思うのですが、アニメのエピソードがそのマンガ版の大部分を使っていることに驚きました。

クリスチアナ・ブランド「猫と鼠」

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。古書系のブログを標榜しておきながらほぼ蒐集意欲も枯れつつある状態なのですが、ときどき集めてみようかと思うものがあります。ミステリーの洋書で写真のようなダストジャケットのついたものです。ジャケットのデザインが面白くて時々やってみたいと悪い虫が騒ぎ出します(笑)。大抵著者のポートレイトや紹介が付いているのですが、このあたりもまま面白いです。戦後から1960年代くらいまでならなおのこと良いですね。少しレトロな雰囲気が好みに合うのですが、こと蒐集となると思うに任せません。写真はブランドの「猫とねずみ」(1950年)です。ブランド作品の中では一番お気に入りのダストジャケットです。
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