2008年01月

パトリック・クェンティン「二人の妻をもつ男」他

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。パトリック・クェンティンは日本ではサスペンス小説の書き手として紹介されてきました。主には戦後の作品が多く翻訳されていたものです。この人、デビューは案外と古くヴァン・ダインが活躍していたころと言えば大体分かるでしょう。初期のパズルシリーズと呼ばれる本格推理のひとつ「悪女パズル」が扶桑社より新しく出版されています。なんでも訳者・森泉玲子さん熱意の翻訳らしいです。

現在まで代表作とされ、植草甚一氏絶賛の「二人の妻をもつ男」は現在新刊では入手が不可能になってしまいました。この作品、一時期はモダンクラッシックスとされていました。現在読み直した感触だと、文学派推理小説といったイメージでしょうか?。非常にていねいな人物描写が特徴ですね。現在の日本のミステリーの傾向からすればやや地味な印象を受けがちですが、小説としてはよくできたものだと思います。

より本格推理が好きな方には「悪女パズル」をサスペンス小説が好きな方には「二人の妻をもつ男」をおすすめしておきましょう(笑)。現在、クェンティン作品のほとんどが絶版となってしまいましたが、今後の出版に期待したいと思います。「悪女パズル」の訳者・森泉玲子さんの次の翻訳は「女郎ぐも」だったそうですが、亡くなってしまったため9割がた出来ていた原稿はどこへ行ったか分からないそうです。写真のペーパーバックは「女郎ぐも」と「俳優パズル」です。かって創元推理文庫に収められていましたが、現在は極度に入手困難です。

小泉喜美子「血の季節」

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。今日は以前少し紹介いたしましたが、小泉喜美子「血の季節」を取り上げます。「弁護側の証人」、「ダイナマイト円舞曲」に続く3部作のおしまいは吸血鬼がテーマです。ミステリーというよりは幻想小説に近いかもしれません。舞台を戦中から戦後に取ることにより、無理のない和製ゴシックホラーに仕上がっています。なんとなくしっとりとした感じの吸血鬼ものですね(笑)。本人の言葉によれば「八年間悩みぬいた東京のドラキュラ」なのだそうです。文秋文庫に以前は入っていたのですがあまり見る機会がなくなってしまいました。古書か図書館などでどうぞ。

ヘレン・マクロイ「殺す者と殺される者」

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。今日以前紹介いたしました、ヘレン・マクロイの「殺す者と殺される者」と最近映画化されて話題の雫井脩介「犯人に告ぐ」を紹介いたしましょう。

ヘレン・マクロイの「殺す者と殺される者」
まずはマクロイからですが大体の翻訳書を今まで紹介してきましたが、現在邦訳の入手が難しいために読んだ人が少ないですね。でその実体はというわけなのですが・・。書きっぷりは非常にサスペンスフルで悪くないです。大学を辞職した主人公の心理学者ハリー・ディーンが故郷に帰り、静かな生活を送るところからこの物語は始まります。しかしその生活は見知らぬ脅迫者のために段々と圧迫され、破局に向かって転がり落ちて行きます。というようなお話なのですが、冒頭のエマーソンのエピグラムからしてかなり意味深で、初めの部分をよく読むとマニアの方には「はは~ん」という方も少なくはないでしょう。前にも書きましたがあんまり説明していると完全なネタバレになります(笑)。初めて読んだ方はさぞや驚いただろうと思われますが・・。小説としては出来はいいようなので復刊して欲しいものの一つです。写真は初版のダストジャケットです。余談ですがもっとましなポートレイトなかったのでしょうか?(笑)。

雫井脩介「犯人に告ぐ」
派手な帯ですね。映画のほうは見てないのですが、以前読んだものです。これがなんと帯の通りです(爆)。始め2章くらいまでは素晴らしくいいです。この調子で最後まで引張られたらベストテン級の作品なのですが・・。中盤少し中だるみが見えてラスト付近はまあいいかという感じになります(笑)。はじめのほうが良かっただけに食い足りなさが残ります。なによりもラスト付近で明らかになる犯人の実体に存在感が希薄だったのが残念です。

マニアの方たちへの追記:海外ミステリの翻訳書で入手困難と折り紙をつけられているものの多くは英文でなら廉価に読むことが可能です。ヘレン・マクロイの「殺す者と殺される者」は残念ながら創元推理文庫(白帯)の実物を見たことがありません。オークションなどで極稀に見ますがとんでもないことになっています(笑)

新井素子・コバルト文庫カバー集

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。なぜこんなものがあるかということはさておき(^^;)、この方あたりからでしょうか?。所謂ライトノベルというのが出てきたのは・・。案外たくさん読んだりしているところが面白いですね。「あたしの中の」の解説を星新一が書いていました。父上は星新一と同級生なのだそうです。

山口雅也「ミステリー倶楽部へ行こう」

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こんばんは皆様、三頌亭店長です。山口雅也さんというと89年に大作「生ける屍の死 」をひっさげて登場し、現在では大変有名なミステリー作家になってしまいました。しかし、今日紹介する「ミステリー倶楽部へ行こう」はそれ以前のミステリマガジンなどに寄稿したり、海外ミステリの解説を書いていた時代の雑文集です。わけても70年代後半にミステリマガジンに連載した「プレイバック」が面白いです。ちょうど私が一番一生懸命に海外ミステリを読んでいた時期とシンクロするのでひときわ懐かしいものですね。この雑文集で取り上げられた映画やミステリは当時の出版状況そのままですので私と同じ年齢層にはひとしおのものがあるのではと思ってます(笑)。マナリングの「殺人混成曲」なんかはほんとうに「ひょえ~!!」(笑)っていうくらい懐かしかったです。また、ブランドと一緒に撮った著者の若いときの写真も一興です。なかなかカワイイ(爆)ですよこれが。。

ところで皆様、山口雅也さんのミステリーっていかがですか?私は嫌いではないのですが、これでは人気が少しないのでは・・などと思うことが多いです。よく書けたミステリーが多いのですが、イギリスでデッキンソンの人気が今ひとつなのとおなじ状況ではないかと思うのです。

追記:どうでもいいですがこの本の表紙のデザインがポール・モーラン「世界選手」というのがカッコいいです(笑)
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