2007年05月

瀬木慎一「真贋の世界」他

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日はノンフィクションを2冊ご紹介いたします。ヘンなお話ですが、贋作というと妙に心惹かれるものがあったりします(笑)。世界の贋作事件と贋作者列伝を読みたいものだとかなり昔から思っておりました。いまでこそ「ギャラリー・フェイク」とか「ゼロ」とか贋作を扱ったマンガすらありますが、以前はノンフィクションを含めて皆無に等しい状態でした。そんな中でやっと探してきたのが瀬木慎一「真贋の世界」とトム・キーティング&ノーマン、ジュラルディン&ノーマン、フランク「贋作者」でした。現在では少し探せばこのジャンルの作品はすぐいくつも見つかることでしょう。

ところで瀬木慎一の「真贋の世界」は著名な18の贋作事件を扱った、贋作事件通史といった内容の本です。それぞれに面白くて興味津々でした。特に雪舟の真筆を巡るルポタージュは虚々実々で迷宮の如き面白さがありました。またトム・キーティング「贋作者」は 贋作者自身による手記、ロンドンタイムズ紙のスクープ記事をまとめたものです。そのぬけぬけとした手口と天衣無縫ともいいたくなるような贋作技術にはびっくりでした。その他、この時期に読んだ贋作関係の本は種村季弘「贋作者列伝」やクリフォード・アーヴィング「贋作」などがあります。いずれもトリックスターたちの生態を活き活きと報告してくれる面白い読物でした。

最近では実際の事件に取材した久保三千雄「小説・春峰庵浮世絵贋作事件」などもあります。ただでさえ贋物の多い世の中なのでそんなお話はたくさんだという方もいるかもしれませんね。まあそういわずにどうぞ・・(笑)

追記:左の本のゴッホはどちらが本物でしょう?(笑)

マルグリット・ユルスナール「東方綺譚」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日は珍しく海外文学より1冊ご紹介いたします。ユルスナールの短編集「東方綺譚」です。少し前に「三島由紀夫あるいは空虚のヴィジョン」(澁澤龍彦訳)が河出文庫に入りましたので、お読みの方もいるかもしれません。この本を買ったころはユルスナールの翻訳は少なくて、「ハドリアヌス帝の回想」「黒の過程」「夢の貨幣」短編集「火」の4冊くらいでした。現在もそうたくさん出ているわけではありませんが、白水社のユルスナール・コレクションがあります。

邦訳のあるユルスナール作品の中では一番読みやすく彼女の特色がつかめる出版ではないかと思ってきました。収録作は下記の通りですが、「老絵師の行方」と「源氏の君の最後の恋」が最も印象に残っております。特に「老絵師の行方」はヴィジュアルなイメージが素晴らしくて好きな作品でした。博識をもってなるユルスナールですが、さすがに日本の古典文学となるといろいろ綻びも見えます。読者の皆様は少し見方を変えると2重のエキゾチズムを感じることが出来るのではないかと思っています(笑)。

「東方綺譚」収録作品
・老絵師の行方
・マルコの微笑
・死者の乳
・源氏の君の最後の恋
・ネーレイデスに恋した男
・燕の聖母
・寡婦アフロディシア
・斬首されたカーリ女神
・コルネリウス・ベルクの悲しみ

出版社・コピー
『古典的な雅致のある文体で知られるユルスナールの一風変ったオリエント素材の短篇集。古代中国の或る道教の寓話、中世バルカン半島のバラード、ヒンドゥ教の神話、かつてのギリシアの迷信・風俗・事件、さては源氏物語など、「東方」の物語を素材として、自由自在に、想像力を駆使した珠玉の9篇』

追記:白水Uブックスが現在はもっと入手しやすい版です。

細田守「時をかける少女」

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久々の三頌亭シネマ館です。今夜は細田守監督「時をかける少女」です。「ハウルの動く城」の細田守さんですね。「時をかける少女」というと今まで何度か映像化されておりますが、今回はその続編という設定でアニメ作品であります。なかなかに仕上がっておりまして、まあどこからも文句が出ないように配慮されております。どの年代でも鑑賞可能という部分が良かったのか、ロングランで色んなところから賞を貰ってます。どうでもいいですが、空の色が大変綺麗でした(笑)。

この作品、オリジナル・ストーリーは筒井康隆原作ではじめて映像化されたのはNHKの少年ドラマシリーズの第一作目(タイムトラベラー)でした。昔、見たことをよく記憶していますが「ラベンダー」という花の名前が印象的でした。このテレビドラマは現在残ってはおりません。当時高かったビデオテープは使いまわしだったらしく消去されてしまっているというお話です。2枚目は「タイムトラベラー」のスチール写真です。

さて余談ですが、萩尾さんの「11人いる!」って実写版があるのをご存知でしょうか?。ファンの方には酷評されている珍品です(笑)。写真3枚目がその時のスチール、少年ドラマシリーズの中の1作品でした(DVD化されてます)。このシリーズでは 「つぶやき岩の秘密」(新田次郎原作)というのが大変よく記憶に残っておりまして、石川セリさんの歌う主題歌「遠い海の記憶」が好きでした。話が脱線してしまいましたね・・(^^;)

追記:http://netdemoney0001.blog83.fc2.com/blog-entry-1584.html
よくないですが全部みられます・・(^^;)

ギルバート「空高く」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日はもうひとつ海外ミステリをご紹介いたします。マイケル・ギルバート「空高く」です。最近出た新訳ですね。マイケル・ギルバートというと本邦ではかなり知名度の薄い大御所といっていいでしょう。ひとつにはその翻訳が長らく絶版であったことも原因のひとつでしょう。フェラーズなどと並んで日本ではあまり取り上げられてこなかった大御所です(笑)。

最近では創元推理文庫の「捕虜収容所の死」が出ていて、これがなかなか出来がよかった作品です。今日紹介する「空高く」もなかなかの傑作です。いきなり家ごと大爆発という刺激的な幕開けから始まる本格ミステリーで、各章様々な趣向が凝らされています。またこの作品はミス・マープルなどの「ヴィレッジ・ミステリー」のパロディですね。

ところでマイケル・ギルバートまだ存命だそうで短編集なんかを出しているらしいです。凄いと言わざるをえません。できたらもう少し日本でも翻訳されて欲しい人の一人です。

生田蝶介「島原大秘録」

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こんにちは、皆様、三頌亭店長です。今日はまた伝奇小説の紹介です。ゾッキ本でおなじみ未知谷の出版です。ここのゾッキはなかなかありがたくていつも楽しみにしております(笑)。最近買ったのは結城信一全集(全3)ですがこれもよかったです。国枝史郎全集なども出てましてこれなどお買い得かと思います(私は定価で買いました(泣))。次は白井喬二傑作選や本田美禅などを予定しております

ところで生田蝶介の「島原大秘録」は島原の乱を扱ったものとしては嚆矢であります。特に後年の大衆文学に与えた影響は大きく、キリシタンものは生田蝶介の「島原大秘録」からといってもいいかもしれません。吉川英治や国枝史郎の諸作品、はては山田風太郎までキリシタンと伝奇小説は現在でも密接な関係にあるといえるでしょう。

「島原大秘録」は「聖火燃ゆ」「妖説天草丸」「原城天帝旗」の3部作でそれぞれ2段組で300頁以上という長編小説です。文章は意外と読みやすく、新かなで書いてあると現代の作家の文章とほとんど変わらない感じがします。今のところ第一部の「聖火燃ゆ」を読んでいますが、さすがに代表作と言われるだけあって面白いです。

生田蝶介は雑誌の編集者であり、また歌人でもありました。白井喬二や国枝史郎を世に送り出したのは彼の慧眼といってよいでしょう。つまり彼らの先輩格にあたるのですが、小説家としては少し遅く、「島原大秘録」は昭和初期にになってから書かれております。なんでも奥さんを亡くしたのがきっかけだそうですが・・。よく病床の奥さんに色んな本を読んであげていたそうです。

余談ですが、最近本が高いです。文庫で1000円オーバーがざらにあるご時世になってしまいました(泣)。
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