2007年04月

吾妻ひでお「アズマニア」他

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。なんだかんだいってもブログの記事を仔細にお読みいただければ、マンガにどっぷり漬かって出来た代物だということがよく分かる三頌亭店長です(笑)。というわけで適当に店長の好みのものから2つほどご紹介いたしましょう。

吾妻ひでお「アズマニア」
最近出た「失踪日記」が好評だったせいか徐々に復調の兆しが見える吾妻ひでおです(笑)。「アズマニア」は1980年前後の絶好調の時に描かれた作品の詰め合わせです。吾妻ひでおの不思議ワールドを存分に堪能できる短編集となっております。SFファンの方いかがでしょうか?

横山光輝「魔界衆」
以前、SF作家の光瀬龍がどこかで書いておりましたが、「横山光輝のマンガは奇抜な題材では決してないが、その盛り上げ方の上手さには舌を巻く」と。その通りで古典的な題材を名人芸の上手さで組み立ててみせる技術は漫画界随一ではないかと常々思っております。今日は70年代の佳作から「魔界衆」を選んでみました。少し山田風太郎を思わせる題名ですが、その実はSF時代劇です。適当な長さで面白いと思います。70年代の代表作としては「バビル2世」がありますが、少し知名度の少ないものを選びました。

「魔界衆」コピーより
『SF・ミステリー・歴史ドラマが融合した、奇想天外アクション!!「真田幸村VS天海・服部半蔵コンビという歴史ドラマを軸に、(中略)ワクワクさせる読み物の面白さにあふれている。」奥飛騨山中に隠れ住む“魔界衆”を探り当てた真田幸村は、豊臣家再興のため、彼ら一族の助勢を頼み込むが聞き入れられず、結局、一族の中から選ばれた者たちが、外界を探るという名目で行動を共にすることになった。そこへ、怪僧・天海と忍び・九鬼族、さらに家康の軍勢が押し寄せてきた。妖かしの術VS御神器、血で血を洗う策略が展開する超絶バトル!!』

辰野隆随想全集

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。ここのところ最近の作品が続きましたので、今日は写真の本を紹介いたしましょう。辰野隆(たつのゆたか)の随筆集です。福武書店から昭和58年ごろ出ていますが、現在絶版なので図書館などでご覧ください(古書店で買っても安いです)。この方も新刊で読むことのできるものが現在出ておりません。

辰野隆といえば「フランス文学村」の開祖にして村長さんみたいな人ですね(笑)。弟子や教え子には三好達治・渡辺一夫・伊吹武彦・小林秀雄などの所謂「四天王」をはじめとして錚々たるメンバーが並びます。河盛好蔵・杉捷夫・中村光夫・今日出海といった方たちも辰野隆の門下です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%B0%E9%87%8E%E9%9A%86

ところでこの随想全集ですが、見所は「忘れ得ぬ人々」などの作家に関するエッセイや対談集です。特に別巻の対談集はこの希代のプロフェッサーの面目躍如で大変面白いです。辰野隆の講義は大変面白かったらしく、太宰治がそのことを書いていたと思います。

余談ですが、小林秀雄の逸話が面白くてよく知られています。「小林は、借りて行つた本を、實に早くに返却に來た。それで、本當に讀んだのか何うか、辰野は最初、疑つた。しかし、小林が返した本を窓邊で逆さにして振ると、どの本のページの間からも、髮の毛やふけ等が、ばらばらと落ちた。」(爆)。

もうひとつ、文壇ワイドショーみたいですが・・。森茉莉さんがその著作で辰野隆をボロクソに書いているのをご存知でしょうか?。二人の名前で検索すればいろいろなゴシップが目にとまることでしょう。山田珠樹(森茉莉の元旦那)は辰野隆の教え子(同僚)です。

ところでこの全集の編集委員のひとり、山田爵(ジャク:漢字が出ません)は森茉莉さんと山田珠樹の実子で東大仏文の教授でした。もっとも森茉莉さんに似ているといわれ、戦後の彼女の出版活動を助けています。戦前、森茉莉さんをこきおろした辰野隆は現在出版されず、森茉莉さんの著作は売れ続けていることは時代がもたらした皮肉といえましょう。

なにやら、ゴシップの方に力が入ってしまってますが・・(^^;)。辰野隆の文庫本は最近まで講談社文芸文庫に2冊入っておりまして(「忘れ得ぬ人々」、「ふらんす人」)、これが最も手に入れやすい版だと思います。興味があればおひとついかがでしょうか?

追記:評伝が出てます。出口裕弘『辰野隆 日仏の円形広場』(新潮社)

桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。今日はこのところ行く先のブロガーの皆様に評判のよかった出来立てほやほやの本を取り上げてみましょう。桜庭一樹さんの「赤朽葉家の伝説」です。ちょっと前に買ったのですが、別のことがけっこう驚いたりしております。

所謂、署名&落款というのが定番のサインでよく古書などでは見かけます。この方は落款の代わりにシールを貼ってあるんですね。これがいろいろあるらしくて集めてる方もネットではいるようです。ライトノベルの作者らしい思い付きで、少し笑ってしまいました。これもまたいいかもしれません(笑)。

ところで内容のほうですがあらすじは下記のコピーを読んでいただくとして・・うう~ん、おそらく著者渾身の作品ではあるのでしょうが・・・(^^;)。私が年を食ってしまったのでしょうか?。頭が固いのか、物語に乗り切れません。作品の狙いとか、組み立てはよく分かるのですが・・。戦後昭和から平成にかけての現代史や世相をなぞってあるのも少し冗漫に感じてしまいました。しかし佳作には近い作品なので興味のある方はお読みください。私個人の感想はべつにしてウェブでの評判はかなりいいようです(^^;)。

出版社 / 著者からの内容紹介
『「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。2006年を締め括る著者の新たなる代表作、桜庭一樹はここまで凄かった! 』

追記:この作品をお気に召した方はガルシア=マルケスの「百年の孤独」をお読みになられるといいかもしれません。

続・その他いろいろ

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。続いて、適当にそのあたりに積んである本の中からご紹介いたしましょう(笑)。一応、絶版文庫ですが探すのは簡単だと思います。

リチャード・マーシュ「黄金虫」(創元推理文庫)
世紀末に出版された怪奇探偵小説とでも言ったらいいのでしょうか?。大衆小説のベストセラーです。怪奇版「月長石」といった趣の読み物となっております。ヴィクトリア朝のロンドンを舞台に探偵、政治家、令嬢、怪盗たちが渾然一体となって繰り広げられる怪奇・時代絵巻が楽しいです。怪奇小説がお好きな方は押さえておきましょう(笑)。作者・リチャード・マーシュは現代イギリスの怪奇小説作家・ロバート・エイクマンの祖父にあたります。

アラン・ウイリアムズ「ベリヤを売った男たち」(ハヤカワ・ミステリ文庫)
皆様はベリヤという人物をご存知でしょうか?。ロシア裏面史に曰く「スターリンの死刑執行人」と・・。ソ連の秘密警察(GPU、KGB)の長官を務め、スターリンの大粛清に加担した謎の人物ですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%A4
ベリヤの秘密日記を偽造してこれをネタに世界をペテンにかけようというスリラーがこの「ベリヤを売った男たち」という作品です。ロシアの現代史なんかよく知らないよという方も楽しめます。それにしてもこのベリヤというひとは極悪非道の人物ですね。

金井美恵子「アカシア騎士団」(集英社文庫)
最近では偉くなってしまって読む気力がなくなってしまってますが、金井美恵子さんの作品をある時期までほとんど読んでました。初期の短編集「アカシア騎士団」はマンディアルグなどの影響が顕著な幻想小説となっております。これまた絶版ですが、古書店などでお探しください。因みにカバーデザインは実姉の金井久美子さんです。

その他いろいろ

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。翻訳ミステリーの最近の話題です。新訳が出て陽の当たるようになった作家と当たらなくなった作家のお話です(笑)。まずは 陽の当たるようになった作家から・・。

エリザベス・フェラーズ
黄金期末期に登場したイギリス女流本格の巨匠でありながら、最近まで翻訳がほとんどありませんでした。ポケミスに収められた「私が見たと蠅は言う」と「間に合った殺人」は長い間、マニア御用達の品切れアイテムでありました。最近になって東京創元社が次々と新訳を出して簡単に読むことができるようになりました。大変うれしいことですね。ところで「間に合った殺人」は怪奇趣味溢れた傑作で、新訳で出たユーモアいっぱいの作品とは少し毛色が違います。古書店などで見かけましたらいかがでしょう。

ウイリアム・P・マッギヴァーン
最近ほとんど見なくなった人です。昔々、ハードボイルドを食わず嫌いしていたころ写真の「ファイル7」を読んで考えを改めたという思い出があります。ロス・マクドナルドやハメットを読んだのもその頃でした。スタイルはどうあれ筆力があるものは大変面白いです。「囁く死体」「殺人のためのバッジ」「ビッグ・ヒート(復讐は俺にまかせろ)」「緊急深夜版」などなどスピード感のある展開でそれぞれに楽しませてくれます。残念なことに最近見事になくなってしまいましたが、消え去るには惜しいと思い取り上げてみました。余談ですがフリッツ・ラング監督の「ビッグ・ヒート」は傑作です。

氷川瓏
翻訳ではありませんが、最近はじめて1冊の本に纏められたミステリー作家です。気の利いた幻想ミステリーの短編集で文章も悪くないです。キャリアは長いのですが作品数が少なかったためいままでアンソロジーくらいでしか読むことが出来ませんでした。因みに渡辺剣次は実弟、ひかわ玲子は姪に当たります。

その他色々の紹介でした(笑)
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