2007年03月

北森鴻「暁の密使」

イメージ 1

こんばんは、皆様、三頌亭店長です。リンク先の皆様のところで評判がいいようなのでちょっと前に買った本です。昔、河口慧海の「チベット旅行記」を読んだことがあります。これがなかなかすごくて、ラサの町の汚い描写に卒倒しそうになりました(笑)。この本を読んだのは久生十蘭の「新西遊記」を読んだからで、チベットが鎖国政策をしていた頃、どのように進入者を発見したかを詳しく書いておりました。またこれにはチベットの身の毛もよだつ処刑の数々が整然と描写されていて、秘境チベットの知られざる一面が大変興味深く感じられたものでした。

そんなこんなで北森鴻の「暁の密使」を見たときはとりあえず買っておこうというわけだったのです(笑)。さて内容ですが大変よく考えて、歴史の虚実をつなぎ合わせているののには感心いたしました。文章も最近の作家としては大変上手な方ではないでしょうか?。最後にいたって河口慧海と主人公・能海寛との関係も明らかになります。虚々実々の歴史ミステリー、なかなかよく出来ております。難をいえば、派手さにかけるきらいがありますのですこし一般受けが悪いかもしれませんね(笑)

出版社のコピー
「チベット潜入行に隠された策謀を描く歴史ミステリー:"不惜身命"仏道のために命を賭して西蔵(チベット)の聖地・拉薩(ラッサ)を目指した仏教者がいた。その名は能海寛(のうみゆたか)。時は明治、近代国家形成に向け必死に背伸びする日本を取り巻く情勢は、その苛烈さを増していた。そんな歴史のうねりの中、仏教の原典「チベット大蔵経」を求めて中国大陸に渡った東本願寺派僧侶・能海寛を主人公に、鎖国下のチベットへの難渋を極める潜入行を描く秘史発掘ミステリーである。チベット潜入で歴史上有名な河口慧海の名にかくれて、能海寛の"日本人として初めてチベットの地を踏んだ"という壮挙は歴史の闇に埋れていた。近年、その潜入行が明らかにされている能海の足跡を辿りながら"歴史のif"に挑む著者会心の歴史ミステリー長編。」

古雑誌を読む

イメージ 1

イメージ 2

こんばんは、皆様、三頌亭店長です。取り立てて話題がないので、古い雑誌のお話をいたします。古書の中でも雑誌はやってはいけないもの・・という頭があったりします(笑)。なぜかというとコストもさることながら、きりがないからです。読むのは本当に楽しいのですが、集めるのはいけません(^^;)。その一例ではありませんが雑誌「宝石」を紹介いたしましょう。学生の頃はやすかったのでよく買って帰っては読んだものでした。

いちど完コレしようかなどと思ったこともあるのですが、あまりの冊数の多さに挫折しました。当時は揃いで結構出ていたのですが、貧乏人(笑)にはちと値がはりました。ただ面白さは抜群でいくらでも読めてしまいます。単行本未収録作品が普通にごろごろしていますのでこれまた楽しいです。本当に古書の好きな方はこれらにあたるのでしょうが、なかなか全部というわけには行きません。

写真は昭和28年・2、3月号の「宝石」です。目玉は木々高太郎「美の悲劇」でしょうか?。木々高太郎畢生の大作?になるはずでしたが・・、惜しくも未完に終わりました。物凄い力入りまくり(爆)ではじめは密室殺人という力作です。しかし探偵小説芸術論もこの作品半ばにして力尽きてしまいました。後を書きつぐ人はさすがに無く、打ち捨てられたままとなっています。

文芸関連目次5

戸板康二「夜ふけのカルタ」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48127379.html
古雑誌を読む(木々高太郎「美の悲劇」)
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48147908.html
連城三紀彦「変調二人羽織」、「戻り川心中」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48169637.html
プリンス・ザレスキー(M・P・シール)
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48260980.html
星川清司「小伝抄」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48473086.html
大仏次郎「ふらんす人形」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48498885.html
横山秀夫「ルパンの消息」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48556433.html
泡坂妻夫「蔭桔梗」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48633997.html
恩田陸「月の裏側」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48660970.html
リラダン「未来のイヴ」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48667996.html
二階堂黎人「僕らが愛した手塚治虫」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48689133.html
天藤真「炎の背景」他(筑波孔一郎)
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48736241.html
その他いろいろ(フェラーズ、マッギヴァーン、氷川瓏)
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48824616.html
続・その他いろいろ(リチャード・マーシュ、アラン・ウイリアムズ、金井美恵子)
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48852000.html 
桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48875265.html
ピーター・ディキンスン「ガラス箱の蟻」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48971242.html
南條範夫「駿河城御前試合」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/48994992.html
南條範夫「燈台鬼」他
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49074739.html
南條範夫「三百年のベール」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49095770.html
ジャン・レイ「マルペルチュイ」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49175955.html
島久平「硝子の家」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49205181.html
司修・挿絵「宮沢賢治童話集」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49258834.html
夏樹静子「訃報は午後二時に届く」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49259464.html
春陽堂「怪奇・伝奇時代小説選集」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49284049.html
南條範夫「わが恋せし淀君」他(マンデリシュターム「時のざわめき」)
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49312412.html
プラトン「ティマイオス」「クリティアス」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49339063.html
白井喬二「富士に立つ影」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49384611.html
ロバート・ネイサン「ジェニーの肖像」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49410423.html
カノッサの屈辱(フジテレビ出版)
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49435843.html
南條範夫「古城物語」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49456356.html
下村悦夫「人語鳥大秘記」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49514971.html
ヤン・ポトツキ「サラゴサ手稿」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49560866.html
曲亭馬琴「南総里見八犬伝」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49590289.html
ロスコー「死の相続」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49607418.html
生田蝶介「島原大秘録」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49623196.html
ギルバート「空高く」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49630026.html
マルグリット・ユルスナール「東方綺譚」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49680780.html
瀬木慎一「真贋の世界」他
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49706045.html
鹿島茂「稀書探訪」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49772629.html
横田順彌「押川春浪回想譚」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49794790.html
日夏耿之介全集
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49797169.html
異色作家短篇集(早川書房)
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49818914.html
マーヴィン・ピーク「ゴーメンガースト三部作」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49850881.html
ウォルター・デ・ラ・メア
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49872830.html
モーパッサン「オルラ」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49898877.html
石沢英太郎「視線」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49922110.html
小林英樹「ゴッホの遺言」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49939385.html
司修「影について」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49945380.html
石川淳「狂風記」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/49957649.html
澁澤龍彦「唐草物語」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50016196.html
ロバート・ネイサン「夢の国をゆく帆船」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50037114.html
P・D・ジェイムズ「ナイチンゲールの屍衣」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50084015.html
ジャン・カスー「ウィーンの調べ」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50106810.html
ヘレン・マクロイ「割れたひづめ」他
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50119881.html
ビル・S・バリンジャー「歯と爪」&「消された時間」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50155234.html
ランドル・ギャレット「魔術師が多すぎる」他
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50174794.html
カーター・ディクスン「魔女が笑う夜」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50197803.html
ヘレン・マクロイ「歌うダイアモンド」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50227436.html
マージェリー・アリンガム「幽霊の死」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50250883.html
フィリップ・マクドナルド「Xに対する逮捕状」他
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50262811.html
マイクル・イネス「ハムレット復讐せよ」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50287315.html
ジャンク本(マージェリー・アリンガム)
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50292956.html
泉鏡花「雨談集」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50344510.html
カーター・ディクスン「殺人者と恐喝者」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50359555.html
ウェイクフィールド「They return at evening」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50385544.html
ヘレン・マクロイ「ひとりで歩く女」他
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50405908.html
余話「歌うダイヤモンド」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50428562.html
ナイオ・マーシュ
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50436665.html
ミニヨン・G・エバーハート
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50496610.html
加納一朗「白い残像」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50513192.html
堀晃「太陽風交点」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50585289.html
鷲尾三郎名作選
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50596291.html
小山内薫「蝶」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50630204.html
津島誠司「A先生の名推理」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50652339.html
新刊より(四方田犬彦「先生とわたし」)
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50713688.html
ドロシー・L・セイヤーズ
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50734231.html
広瀬正「エロス」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50779848.html
ジャック・ロンドン「海の狼」
http://blogs.yahoo.co.jp/kms130/50827777.html

戸板康二「夜ふけのカルタ」

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

こんばんは、皆様、三頌亭店長です。このところリアルが忙しく、更新&お返事が飛び飛びになっております。申し訳ございません。さて今日は便乗記事というわけではありませんが、戸板康二「夜ふけのカルタ」をご紹介いたします。三月書房(昭和46)の刊行で戸板康二の三番目のエッセイ集です。小さな本ですがこのシリーズは安い限定版で綺麗なのでお気に入りでした。割合さらりと書き流しているのがかえってよくて楽しい本です。

ついでといっては何ですが雅楽探偵譚1&2(立風書房:昭和52)も出しておきましょう。学生時代に読んだ本です。最近でた東京創元社版「中村雅楽探偵全集第1巻」とほとんど変わらない内容になっています。当時は歌舞伎の世界の記述がたくさんあってオタクなミステリーだと思ったものです(笑)

ルイス・ブニュエル「小間使の日記」

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

今日はブニュエルじいさんの傑作「小間使の日記」を紹介いたします。ルイス・ブニュエルというとこの作品を撮った時期、「ビリディアナ」「皆殺しの天使」「昼顔」「哀しみのトリスターナ」と傑作目白押しの時期にあたります。

この作品は題が示すとおり、ある小間使いの目を通してブルジョアジーの密かな退廃を描く傑作です。ジャンヌ・モローがぴったりの役なのですが、その脚線美を見てブニュエルじいさんはモローをすぐ主役に抜擢したそうです(靴フェチのシーンがあります(笑))。

原作はオクターヴ・ミルボー、翻訳はいくつかありますが、岡野馨訳(小山書店:昭和25)を挙げておきます。小間使のセレスティーヌが歯切れのいい、粋な年増に仕上がっているのがなんとも時代を感じる翻訳です。もうそろそろ新訳を出してもいいと思う名作だと思うのですが・・・。

現在、ブニュエルの映画の多くが現在DVDとして入手し難くなっている状況です。巨匠としてはあまりに寂しい状況が残念でなりません。機会があればTVなどでどうぞ。
最新コメント
ギャラリー
  • 萩尾望都「11人いる!」&「スター・レッド」
  • 萩尾望都「11人いる!」&「スター・レッド」
  • 萩尾望都「11人いる!」&「スター・レッド」
  • 萩尾望都「11人いる!」&「スター・レッド」
  • 和田慎二傑作選「砂時計は血の匂い」他
  • 和田慎二傑作選「砂時計は血の匂い」他
  • 和田慎二傑作選「砂時計は血の匂い」他
  • 和田慎二傑作選「砂時計は血の匂い」他
  • 花とゆめ・1975年5月5日号
アーカイブ
  • ライブドアブログ