「ジョイス・マンスール。クレオパトラの美貌とサッフォの詩才に生まれながらにめぐまれ、かててくわえて「走高跳と短距離の選手」という超弩級のスピードと翼をも具えた恐るべき近代女性。この奇々怪々なエジプトの令嬢の小説集は、これまで私の読んだどんな女流作家のそれにもまして官能的であり、とりわけ冒頭の「マリー」の一篇は、その包含する世界のスケールの大きさにおいて、男女をとわず古今のあらゆる文学者たちを鼻白ませるていの代物と思われる。」矢川澄子「ジョイス・マンスール讃」より
ジョイス・マンスールの描く世界は女性原理の獰猛な無秩序に満ちています。それは昔とりあげた文庫本の頁から「みだれ髪」の歌がわらわらとあふれだしたときに似ているかもしれません。同じ女性原理の横暴といっても岡本かの子のそれとはやや趣を異にしています。
薔薇十字社版「充ち足りた死者」でジョイス・マンスールを知ってからもう大分の時間が経ちますが、その間、邦訳された本は僅かに二冊(「有害な物語」、「女十態-ジョイス・マンスール詩抄」)でした。彼女の本は私にとって独特の秘密めいた響きを持っています。ベルメールの見事なエッチングのはいった「ジュール・セザール」がいつまでたっても入手の機会に恵まれないのはそのせいかもしれません(笑)。
ジョイス・マンスールの描く世界は女性原理の獰猛な無秩序に満ちています。それは昔とりあげた文庫本の頁から「みだれ髪」の歌がわらわらとあふれだしたときに似ているかもしれません。同じ女性原理の横暴といっても岡本かの子のそれとはやや趣を異にしています。
薔薇十字社版「充ち足りた死者」でジョイス・マンスールを知ってからもう大分の時間が経ちますが、その間、邦訳された本は僅かに二冊(「有害な物語」、「女十態-ジョイス・マンスール詩抄」)でした。彼女の本は私にとって独特の秘密めいた響きを持っています。ベルメールの見事なエッチングのはいった「ジュール・セザール」がいつまでたっても入手の機会に恵まれないのはそのせいかもしれません(笑)。