あの偏屈じいさん、永井荷風について書かれた本は山のようにあります。元来、私は文芸評論なんかはあまり読まないのですが、例外的に非常に面白かった荷風本を二冊紹介いたします。
まずは川本三郎「荷風と東京-『断腸亭日乗』私註」(都市出版:1996)です。「東京人」に連載された川本三郎さんのライフワークだそうです。「断腸亭日乗」は荷風の作品中最もユニークな地位を占めておりまして、日記文学の傑作です。田園の散歩者-荷風の足跡をくまなく辿った快作で近年出た荷風本の中では出色の出来でしょう。風景の詩人-荷風にに捧ぐオマージュ集とも言えます。
余談ですが、川本三郎さんはこの連載中、相当資料を漁っておられたようで、古書店のカタログで珍しい荷風の資料が出るとよく買っておられたようです。何度か、「川本さんが買われました」ということを古書店主から言われたことがあります。
もう1冊は日夏耿之介の「荷風文学」(三笠書房:昭和25)です。荷風の本質を「モラリスト」と喝破した人はこの日夏耿之介が初めてではないかと思います。非常に単純なことなのですが、日本には少ないタイプの人なのでこんな簡単なことを言ってのける人がなかったのはそのためかもしれません。徹頭徹尾、自分の良しと考えるモラルに正直な人・・・なのですが、そのため晩年は多くの友人を無くし偏屈じいさん呼ばわりされることになります。この本はいろんな点でユニークな荷風論です。
写真は偏奇館で得意満面の荷風です(笑)。「断腸亭日乗」中の白眉、空襲により偏奇館が炎上するシーンは圧巻です。
まずは川本三郎「荷風と東京-『断腸亭日乗』私註」(都市出版:1996)です。「東京人」に連載された川本三郎さんのライフワークだそうです。「断腸亭日乗」は荷風の作品中最もユニークな地位を占めておりまして、日記文学の傑作です。田園の散歩者-荷風の足跡をくまなく辿った快作で近年出た荷風本の中では出色の出来でしょう。風景の詩人-荷風にに捧ぐオマージュ集とも言えます。
余談ですが、川本三郎さんはこの連載中、相当資料を漁っておられたようで、古書店のカタログで珍しい荷風の資料が出るとよく買っておられたようです。何度か、「川本さんが買われました」ということを古書店主から言われたことがあります。
もう1冊は日夏耿之介の「荷風文学」(三笠書房:昭和25)です。荷風の本質を「モラリスト」と喝破した人はこの日夏耿之介が初めてではないかと思います。非常に単純なことなのですが、日本には少ないタイプの人なのでこんな簡単なことを言ってのける人がなかったのはそのためかもしれません。徹頭徹尾、自分の良しと考えるモラルに正直な人・・・なのですが、そのため晩年は多くの友人を無くし偏屈じいさん呼ばわりされることになります。この本はいろんな点でユニークな荷風論です。
写真は偏奇館で得意満面の荷風です(笑)。「断腸亭日乗」中の白眉、空襲により偏奇館が炎上するシーンは圧巻です。