2006年05月

荷風本二冊

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あの偏屈じいさん、永井荷風について書かれた本は山のようにあります。元来、私は文芸評論なんかはあまり読まないのですが、例外的に非常に面白かった荷風本を二冊紹介いたします。

まずは川本三郎「荷風と東京-『断腸亭日乗』私註」(都市出版:1996)です。「東京人」に連載された川本三郎さんのライフワークだそうです。「断腸亭日乗」は荷風の作品中最もユニークな地位を占めておりまして、日記文学の傑作です。田園の散歩者-荷風の足跡をくまなく辿った快作で近年出た荷風本の中では出色の出来でしょう。風景の詩人-荷風にに捧ぐオマージュ集とも言えます。

余談ですが、川本三郎さんはこの連載中、相当資料を漁っておられたようで、古書店のカタログで珍しい荷風の資料が出るとよく買っておられたようです。何度か、「川本さんが買われました」ということを古書店主から言われたことがあります。

もう1冊は日夏耿之介の「荷風文学」(三笠書房:昭和25)です。荷風の本質を「モラリスト」と喝破した人はこの日夏耿之介が初めてではないかと思います。非常に単純なことなのですが、日本には少ないタイプの人なのでこんな簡単なことを言ってのける人がなかったのはそのためかもしれません。徹頭徹尾、自分の良しと考えるモラルに正直な人・・・なのですが、そのため晩年は多くの友人を無くし偏屈じいさん呼ばわりされることになります。この本はいろんな点でユニークな荷風論です。

写真は偏奇館で得意満面の荷風です(笑)。「断腸亭日乗」中の白眉、空襲により偏奇館が炎上するシーンは圧巻です。

ティム・ディンスデール

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皆様はディンスデール・フィルムというのをご存知でしょうか?。「ネス湖の怪獣」を捉えたフィルムの中では最も有名なものです。最近はテレビでこのフィルムが流れることが少なくなったので、見たことの無い方が多くなってしまいました。

ディンスデール・フィルムは1959年に撮影されましたが、日本ではじめて放映されたのは1972年になってからでした。写真の上から2,3枚目はそのフィルムからのスチールです。翌年の1973年に撮影者のティム・ディンスデールの「ネス湖の怪獣」(大陸書房)が初めて翻訳されました。ネッシーについての纏った著作としては、初めて日本に紹介された本です。

ディンスデールはその後、もう一度ネッシーの撮影に成功しますが、生涯を通じて目撃した回数は数度しかないと語っています。今一度は友人達と船の上から真近で目撃したそうで、初めてネッシーの存在についてゆるぎない確信をもったと回想しておりました。

現在、航空技師ディンスデールの撮影したフィルムは漁船を撮影したものではないかといわれています。彼が撮影したすぐ近くから同じ時間に漁船を出した人まで特定されています。フィルム解析からはどちらとも言えないそうですが、ディンスデールもすでにこの世には無く、真偽は藪の中といったところです。

BOLEXの16mmシネカメラをかまえたディンスデールはいつも楽しそうです。真偽はどうあれ、自らを「現代のドンキホーテ」と呼んだとおり、ネッシーの存在を信じ、その撮影に本当に夢中だった人なのでしょう。

かわのいちろう「隠密剣士」

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。実は最近、あるコミカライズ作品を読みまして・・、これがいたく面白かったのでとりあげてみましょう。写真の漫画かわのいちろうの「隠密剣士」です。実は映画も見てるんですが・・・漫画が割合ダイナミックに描けていて年齢層がすこし大人向きなのでよかったです。

テレビ版の大瀬康一主演の「隠密剣士」は本当に記憶の最下層で飛び飛びにしか見てなかったのでストーリーをよく憶えていなかったのでした。でも歌だけ憶えていてこんな感じです(笑)。

「江戸の隠密、渡り鳥
雲と流れて、西東
白刃の刃を夕日が染めりゃ
またもにじむか、血しぶきか
あああ~正義に、燃えるは
隠密剣士 」
http://days.maxs.jp/days123/onmitsukenshiS.html

ほとんど今は無いような演歌ですね(笑)。牧冬吉さんの「霧の遁兵衛」役をよく憶えています。最近忍者物もカンフーアクションみたいなものばかりでもうひとつ何か物足りないものを感じていたところなので、よかったのかもしれません。時代劇自体はやらないものになっていってはいるようですが・・。

「隠密剣士」は色んなシリーズで長く続きまして、70年代前半まで続きました。でも初期のシリーズのものがもっとも印象に残っております。漫画のほうは6巻まで出ております。シリーズ中の白眉、甲賀忍者との戦いの部分のコピーを下記に書いておきます

「江戸の隠密剣士・秋草新太郎が、将軍職にある幼い弟を守り、老中に味方して、将軍家転覆を謀る大名や忍者たちと戦う。TBS系で放送され、長きに渡って高視聴率を博した人気番組「隠密剣士」。老中・松平定信の配下の公儀隠密、伊賀忍者は、不穏な動きをみせる尾張藩の内情を探りに出ていたところ殺された。尾張藩は他の大名と組んで将軍家転覆を企んでいた。世が世なら公方様の兄君・信千代となるはずの新太郎は、侍を嫌い浪人生活を楽しんでいたが、将軍の座にある弟君にまつわる陰謀とあって、新太郎は自ら嵐の中に飛び込む。証拠の連判状を手に尾張へ向かう新太郎と伊賀忍者の行く手に尾張方の甲賀十三忍が立ちはだかる。」

安くて綺麗な・・

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こんばんは、皆様、三頌亭店長です。安くてというのにどうも弱いのです(笑)。やっぱりコストには限りがあるので致し方ないです。そうじゃない人は羨ましいのですが・・。というわけで、装本面でしっかりしていて安い本というのをご紹介いたします。

写真は三島由紀夫の「豊饒の海」4部作(「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「 天人五衰」)です。ご覧のとおり、カバーに箱、綺麗なシルク装で統一されています。別に初版でなくとも結構、第何版でもこのとおりです。ノーベル賞の帯がどうのという細かいお話はどうでもいいことです。古書市場にまだこの本は安い値でたんとあります。見かけられたときはいかがでしょうか?。内容は大変有名な作品ですのでご存知かと思います。

大変立派な本で三島という人は戦後の文壇では本当にスタアだったのだということをよく分からせてくれる本です

鳴海風「算聖伝」

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自然観察室の内容からは少し外れますが、和算家の評伝について紹介したいと思います。鳴海風「算聖伝」(新人物往来社:2000)です。関孝和の一般に読みやすい評伝というのが実はあまりありません。そういう意味でこの本は一般向きの唯一の本ではないでしょうか?

数学の業績というのは一般向きに凄さを分かりやすく書くというのが難しくて、どうしてもその人の業績ではなく生活の周辺の事を書かざるを得ません。それはそれで興味深いことは多いのですが、画家や作家の作品を読まずにその人を判断するようなものではありますまいか?。といつも思うことがあります。

この「算聖伝」についても同じではあるのですが、関孝和の数学的な業績以外のことについて詳述された本はほとんどは無かったので読んでみるのも面白いかもしれません。ただ、この本はフィクションとノンフィクションの綯い交ぜで、関孝和がキリシタンとのハーフだったというのはよく確認された事実ではないことを申し添えておきましょう。

参考情報としてNHK人間講座、数学者列伝「天才の栄光と挫折」(藤原正彦)をあげておきましょう。実はこの特集は本放送よりテキストのほうがおもしろいという変り種です(笑)。ニュートンから始まって現代のワイルズまで全8回の放送でした。余談ですがもう20年以上前に藤原正彦さんの「若き数学者のアメリカ」を読んだことを思い出しました。
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