2006年02月

鷽(うそ)

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戦前の古書には総木版装の本が時々あって、私の目を楽しませてくれます。日本の伝統色には多数の中間色があって、これらは現代の装丁工芸ではあまり使われない色が多く、いろいろな発見があります。現代は原色のポスターカラーの時代、これでは書店で目立たず売れないのでしょう(笑)。

北原白秋の有名な歌に「城ヶ島の雨」というのがあって、学校の音楽の時間に習います。こんな歌詞ですね。

「雨はふるふる 城ヶ島の磯に 利休鼠の 雨がふる

雨は真珠か 夜明けの霧か それともわたしの 忍び泣・・・」

私は小学生のころ習ったのですが、長い間、憶え違いをしていました。「利休鼠の忍び泣」と憶えてしまい「離宮」で「鼠」が雨の日にチューチュー泣いているのだと、高校生くらいまでそう信じていました(爆)。「離宮鼠」ってどんな鼠だろうとか・・(笑)。

抹茶の色を千利休にちなんで「利休色」といいますが、「利休色」のかかったねずみ色を「利休鼠」といいます。日本の伝統色のひとつです。写真は籾山書店の胡蝶本のひとつ小山内薫「鷽(うそ)」(大正2)です。これは何色でしょうか?鶯色(うぐいすいろ)、鶸色(ひわいろ)、淡萌黄(うすもえぎ)あたりでしょうか?。装丁は橋口五葉のデザインによります。胡蝶本は取り立てて言う事はないのですが、比較的軽く、持ちやすくて読みやすい本です。

「水の本」

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高橋睦郎と金子國義による瀟洒な本です。1989年にペリエジャポンが販促用の配布本として出版いたしました。しかし、好事魔多し。当時、ペリエのミネラルウォーターに防腐剤のプロピレングリコールを混入して販売していることが批判されたため回収本となってしまいました。グリコール類は実は医薬品をはじめ、食品添加物など結構いろんなものに入っているのですが、ミネラルウォーターというのが良くなかったのかもしれません。

金子國義の装丁になる本の中では傑作の部類なのですが、今後出版される見込みのないことは残念なことです。ところで、一昨年の台風が良くなかったのかシミが浮いてきています(泣)。

店長のお買い物

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こんばんは、三頌亭店長です。今日は子供がプラモデルを買うと言うので、少し遠出をしました。たまには家庭サービスも大事です(笑)。というわけで、その帰りに黄色い本屋さんに寄ってきました。どうも一冊100円、200円となるとすぐバカバカ買ってしまいます。最近新刊はよほどのことがないと買う気になれません(笑)。久しぶりに行くと大挙して100均の方へ移動した本がたくさんありまして面白かったです。獲物は写真のとおりでした。

若竹七海「古書店アゼリアの死体」
これは読もう読もうと思っていたのですが、いつも買いそびれていた本です。ロマンス小説専門「古書店アゼリア」の店主、紅子ばあちゃんが最高です(笑)。あまりマニアックにならない程度の古書と映画のアクセサリーがいいです。適度なユーモアがあって楽しい作品のようです。巻末にロマンス小説の紅子ばあちゃんの注釈がついてきますが、これが傑作でした。

島田荘司「龍臥亭事件」
島田荘司をはじめて読んだのは「占星術殺人事件」でした。正直なところバカ作だと思いました(笑)。はじめから1/3程度でメイントリックが分かってしまったという、私にとっては珍しい作品です。私は昔、チョキチョキして遊んだことがあったからです(笑)。しかし、デビュー作特有の熱気で読ませるミステリーでした。その後、出版されるたびに読んでいたのですがデビュー作に比べてもうひとつ低調な作品が多く、愛想を尽かしてしまいました(笑)。さて今度は大作なのですが、首尾はどうでしょうか?ろくでもない大技を期待しておりますが・・。余談ですが「占星術殺人事件」がなぜ袋とじしてあったか最近わかりました。文庫版でペラペラめくると例の図が目に入ってしまうからです。

河出文庫「本格ミステリコレクション」1巻~5巻
日下さんは私と同い年です。雑誌「幻影城」をよく読んだことは想像に難くありません。「幻影城」が戦後の忘れられた作家たちとして紹介したものを根気よく集めて纏めたものがこのコレクションです。読んだものが半分くらいありますが、お買い得なシリーズです。玉石混合なのですが、私としては岡田鯱彦と島久平くらいがオススメでしょうか?まあやはりこの方面のコレクターには雑誌「宝石」の揃いは必帯だと思います、資料価値は計り知れませんから(笑)。

最後のおまけは津雲むつみさんの初期作品集、4篇が収録されていますが再版は諸事情により不可能じゃないかと思われます。

東京繁盛記

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私は東京に住んだことはないのですが、木村荘八の「東京繁盛記」は市井の風俗を活写して大変面白い随筆です。文章と絵の両方に優れた人というのは少なくて、私の知っている限りでは鏑木清方くらいしかおりません。よくよく考えれば得難い人材だったのです。

木村荘八には挿絵の仕事が多く、永井荷風の「墨東綺譚」や大仏次郎の「霧笛」などは彼の代表作です。この手の時代物の挿絵というのは最近いたく注目度は悪いので、これから残っていくのかどうか、私には良くわかりません。写真を見ていただければよくわかるのですが、女性の着物姿や体型など、もうこのように描く人はいないでしょう。

友人の画家、中川一政などは「荘八は妙に考証に凝ってしまって、こじんまりとした絵しか描かなくなってしまった」と言って、大成しなかった彼を残念そうに評しております。絵描きとすればそのような見方もあると思いますが、「東京繁盛記」のような作品は木村荘八以外に出来た人を私は知りません。

写真の2,3つ目が「墨東綺譚」の挿絵です。奥様の木村富子さんは随筆家で「随筆浅草富士」(双雅房:昭和18)などの作品があります(写真一つ目)。「墨東綺譚」の挿絵の時は男性が取材しにくいところを奥様に取材してもらったそうです。写真は「東京繁盛記」(演劇出版社:昭和33)より撮りました。現在この本は岩波文庫に収められております。

三頌亭在庫管理

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皆様、三頌亭店長です。仕入れ担当から「移転したとき運搬した在庫はもう10年以上も経つのにどうなっているのか?」ときつい叱責をくらってます(笑)。恐る恐る山積みのダンボール箱をひとつ開けてみました。

相変わらず訳のわからない本が多いのですが、一冊づつ手にとってみますと・・・「げっ!、表面がカビてるぞ~(泣)」。13年くらいそのままでしたので仕方がないのですが、やっぱり硫酸紙はつけておくべきでした。泣く泣く、少し水で湿らせたちり紙で拭いて、乾かすと何とか綺麗になったので何とかひと安心。でも布製のものとかは拭けないのでそのままです(泣)。

皆様、本の保存のためには硫酸紙で完全にカバーしておきましょう。後の在庫が思いやられます(泣)。
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